道路構造物ジャーナルNET

福岡高速2,5号線の鋼床版・RC床版部

福北高速 改質グース、特殊樹脂防水基層を試験施工

公開日:2021.09.29

樹脂防水一体舗装 耐流動性は3,000回/mmと従来グースの10倍の性能
 専用機器がいらず、環境負荷も少ない

 次に樹脂防水一体舗装である。同工法は福岡高速5号線の板付入口付近~月隈JCT分岐箇所におけるV2-36鋼床版箱桁部第1走行車線の300㎡で試験施工した。片側3車線のうち、最も左側の第1走行車線を終日固定規制にて施工した。

 樹脂防水一体舗装は、熱可塑性を有する植物性特殊樹脂を基層舗設時の熱で融解させ、基層のアスファルト混合物の底部に浸透させることで、床版、防水層、アスファルト混合物を一体化させるとともに、水密性を確保(不透水性)する工法である。アスファルト混合物は一般的な混合物を適用でき、バインダーに改質アスファルトを用いることで耐流動性も向上させることができる。その場合、耐流動性は3,000回/mm以上で、TLAと比較すれば約10倍の性能向上となる。一般的なアスファルト混合物の施工機械で施工可能なため、専用機械を必要としないことが大きな特徴だ。また、特殊樹脂成分の8割以上がバイオマス成分であり、環境負荷が少ない。


特殊な釜を必要としない

 ペレット状の特殊樹脂を現場において溶融釜で融かして刷毛やレーキで床版上に塗布していくものだが、融点(軟化点)が80℃と低いため、特殊な釜を必要としない。塗布して一度硬化した樹脂は基層舗設時の熱によって再度軟化し、基層アスファルト混合物の底部に浸透し充填、舗設温度の低下によって固化する。土木研究所との共同研究の施工試験では塗布量1㎏/㎡の場合、基層下部に10mm、同2㎏/㎡の場合15mm、同3㎏/㎡の場合21mmの厚さで隙間なく充填されることが確認されている。

 本現場は既設舗装が基層(SMA(5mmTOP))40mm、表層(ポーラスAs)40mmという構成であったが、舗装が流動化していてずれている状態であった。それを樹脂防水一体舗装を基層として、その上にポーラスAs混合物(ポリマー改質AsH型)を敷設する構造に打ち替えるもの。基層には密粒度As混合物(ポリマー改質AsⅢ型-WF)を採用した。

 施工には改質グースのような専用のフィニッシャを必要としない。特殊樹脂は鋼床版の一般部で使用想定最大量の3㎏/㎡、添接部には基層が薄くなることを想定して2㎏/㎡をそれぞれ塗布した。共同研究での面積当たり使用量のうち最大値としたのは、「より防水性を高めるため」(東亜道路工業)ということだ。
 樹脂が基層内にムラなく浸透するように転圧によるニーディング作用を繰り返しながら施工していった。

樹脂防水一体舗装① 着手前・損傷個所/既設舗装剥ぎ取り状況/ショットブラスト施工状況

樹脂防水一体舗装② プライマー塗布状況/珪砂散布状況

課題 冬期施工に向けた樹脂塗布施工の作業効率向上

 課題は樹脂の鋼床版への塗り付けだ。樹脂はペレットを釜で炊き、液体化したものをレーキや刷毛で塗り付けていくが、施工時の温度が低いと樹脂を伸ばすのが困難で、逆に温度が高いと所定の厚みで伸ばすのが難しくなる。外気温が35℃を超える炎天下での施工で、温度の調整に想定以上に時間を要していた。また、施工後は一部の箇所で基層上面に樹脂の噴出が確認されていた。これは主に添接部周辺で生じており、舗装厚に比して塗布量が多かったと思われる。なお、噴出した樹脂が表層との間で付着性能を落とすということはないとのことだ。

樹脂防水一体舗装③ 植物性樹脂塗布状況

 施工管理方法と鋼床版上の冬季施工でも検討課題がある。塗布量の管理は基本的に面積当たりの空缶管理であり、膜厚を管理する類のものではないため、精度向上のためにもう一工夫欲しいところだ。ただし、「今回は面積に対して1割以上多めに使用しているため、塗布のムラによる基層への浸透不足は起きにくいと考えている」(同)。

樹脂防水一体舗装④ 基層及び表層の施工状況

 こうした課題に対して、東亜道路工業では、使用材料に色を付けて塗りむらを施工中に識別しやすくすることや、樹脂の塗り付けの施工精度向上に向けて、温度管理が可能な溶融釜を搭載して均一な膜厚で塗布できる専用の施工機械を開発中とのことだ。

 改質グースの試験施工は元請にガイアート、一次下請に日本道路。ショットブラスト工は友翔。
 樹脂防水一体舗装の試験施工は元請に山九ロードエンジニアリング、一次下請に東亜道路工業。ショットブラスト工はフタミ。

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