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新設は3橋、改築は3橋(事業)、技術は1件

土木学会 2020年度土木学会賞発表 「田中賞」作品部門は別埜谷橋、新阿蘇大橋などが受賞

公開日:2021.05.22

 土木学会は17日、2020年度土木学会賞を発表した。応募件数268件のうち、功績賞、技術賞など133件を選定した。
「田中賞」作品部門では新設3橋、改築3橋(事業)、技術1件が受賞した。新設は「別埜谷橋」「新阿蘇大橋」「中橋」、改築は「森村橋」「堂島大橋の長寿命化対策」「常磐橋修復事業」、技術は「水性塗料を用いた鋼橋の塗装」だ。
 表彰式は、6月11日午前10時から、東京・千代田区のホテルメトロポリタンエドモントで行われる。

「田中賞」作品部門【新設】

別埜谷橋

 同橋は、西日本高速道路の徳島道に架かる橋長26.5mの単径間非鉄製バタフライウェブ箱桁橋。緊張材および鉄筋に鋼材を使わず、アラミドFRPロッドを用いた「超高耐久橋梁(Dura-Bridge)」である。コンクリートには設計基準強度80N/mm2の高強度繊維補強コンクリートを採用している。箱桁のウェブには蝶形の薄パネルを用いる「バタフライウェブ構造」を採用し、自重の低減とコスト縮減などを実現している。耐久性の向上、維持管理の負荷低減、コンクリート片はく落などによる第三者被害の抑制のため、鉄筋やPC鋼材などの腐食する部材を一切排除した世界初のPC橋として、今後の橋梁建設にも貢献することが受賞理由となった。

新阿蘇大橋

 熊本地震で落橋した阿蘇大橋の架替事業として架設された同橋は、アプローチ部が鋼3径間連続非合成鈑桁橋(115m)+鋼単純非合成箱桁橋(65m)、黒川渡河部がPC3径間連続ラーメン箱桁橋(345m)。PC3径間連続ラーメン箱桁橋は、最大橋脚高97m、中央支間長165mを有し、本構造形式としては国内最大規模となる。大型インクライン、ACSセルフクライミングシステム工法や超大型移動作業車などの高度な施工技術の導入と24時間体制の施工により、標準工期に比べ約1年半の工期短縮を実現した。

中橋

 東日本大震災により甚大な被害を受けた宮城県南三陸町志津川地内に復興の象徴として架けられた橋長80.6mの鋼単純パイプトラス橋(ダブルデッキ)。利用者にとって柔らかな印象や暖かみを感じやすい円形部材であるパイプを集合させた橋体となっている。側面形状はレンズ型をしたダブルデッキ構造で、平面形状もX字形となっていることから、トラス格点部は一カ所ずつパイプ部材の交角が異なる複雑な構造であるため、原寸作業では最先端BIMソフトが活用された。床版などには南三陸産の杉材が使用されている。

「田中賞」作品部門【改築】

森村橋

 1906(明治39)年に静岡県小山町に建設された、橋長40.4mのピン構造の格点を持つ鋼単純下路式曲弦プラットトラス橋で、国の登録有形文化財にも登録されている。著しい老朽化により、通行止めとされていたが、歩道橋として再び供用可能な橋梁に復原した。現地条件から、仮設橋を構築し本体構造を支持させることで、支保工を用いない解体および架設工法としたほか、部材の再利用では各種試験を行ったうえで溶接継手を採用することで、再利用率を重量比で61%まで向上させた。

堂島大橋の長寿命化対策

 1927(昭和2)年完成のラーメン橋台付きの非タイド下路アーチ橋(現存する唯一の形式)で、橋長は55.3m。床版、床組の老朽化に加え、地盤沈下にともないアーチ支間が拡がっており、アーチリブへの付加応力の作用が懸念されるとともに、桁下高が下がり、舟運の支障にもなっていた。そこで、比較的な健全なラーメン橋台とアーチリブは再利用し、床版・床組を鋼床版とすることで軽量化と構造高の抑制を図った。アーチリブへの付加応力の軽減対策では、アーチ形状を元に戻すようにジャッキアップ(アーチ支承ピンを交換)することで、外観を大きく変更することなく、負荷応力の解消を図った。

常磐橋修復事業

 本事業は、東日本大震災により大きく変形し、崩落の危機にあった常磐橋(国指定史跡)の解体修理を中心に、橋台周辺の親水空間整備を含む総合的な歴史的区間の蘇生を目指して行われた。同橋は、1877(明治10)年に架設された橋長31.5mの高欄付空石積石造二連アーチ橋。昭和初期の修理でセメントグラウトにより一体化されていたアーチは、可逆性を担保する和紙と超高強度モルタルを組み合わせた手法により、元来の空積みの構造システムを回復しながら耐震性を向上させた。また、左・右橋台の非対称性を解消して地震時挙動の偏りを減らし、新たな親水空間を創出している。

「田中賞」作品部門【技術】

水性塗料を用いた鋼橋の塗装

 首都高速道路では、2017年から防食下地以外の現場塗料について、水性塗料の本格的採用を開始している。防食下地である有機ジンクリッチペイントについては、フラッシュラストを抑制できる水性有機ジンクリッチペイントの採用に向けて、評価試験を考案。規格に適合する防食下地塗料を採用することで、2019年からは防食下地を含むすべての現場塗料に水性塗料を採用している。水性塗料は厚幕塗布ができず、塗り重ね回数が多いこと、塗料の価格が高いなどの課題はあるが、揮発性有機化合物(VOC)の排出量が低減し、環境への影響低減に寄与するとともに、塗装塗替工事における火災への安全性を飛躍的に向上させることが評価された。

功績賞・技術賞

 功績賞は下記の10名が受賞した(敬称略)。
・宇野 護(東海旅客鉄道(株)代表取締役副社長 中央新幹線推進本部担当)
・大熊 孝(新潟市潟環境研究所所長,水の駅「ビュー福島潟」名誉館長)
・川谷 充郎(神戸大学名誉教授,高田機工(株)社外取締役)
・武若 耕司(志學館大学教授)
・戸田 圭一(京都大学経営管理大学院教授(院長)(併任 工学研究科教授))
・中尾 成邦(国際港湾協会協力財団会長)
・中川 一(京都大学防災研究所流域災害研究センター教授)
・西村 昭彦((株) ジェイアール総研エンジニアリング顧問)
・林 康雄(鉄建建設(株)代表取締役会長)
・林 良嗣(中部大学卓越教授)

 技術賞(Ⅰグループ)は下記の業績を含む17件が受賞している。
・夜間のみの交通規制で床版を取り替える「DAYFREE」の開発と施工(中央自動車道 弓振川橋床版取替工事における実証)(中日本高速道路(株)八王子支社、(株)大林組本社)
・二重峠トンネル工事へのECI方式適用による災害復旧道路早期開通の実現(国土交通省九州地方整備局熊本河川国道事務所、(株)エイト日本技術開発九州支社、清水・福田・松下地域維持型建設共同企業体、安藤ハザマ・丸昭地域維持型建設共同企業体)
・準天頂衛星システムを活用した除雪車運転支援システムの開発(熟練オペレータを必要としない作業ガイダンスモニター)(東日本高速道路(株)北海道支社、(株)ネクスコ・エンジニアリング北海道)

 技術賞(Ⅱグループ)は下記のプロジェクトを含む18件が受賞している。
・高速神奈川7号横浜北西線の建設(東名高速と横浜港が直結)(首都高速道路(株)、横浜市)
・豪雨災害により流出した高速道路本線橋の早期復旧(高知自動車道立川橋他災害復旧工事)(西日本高速道路(株)四国支社、鹿島建設(株))

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