舗装は点検結果に応じて打ち替え
床版防水はアスファルト系やグースを採用
――市管理橋梁の床版防水の敷設状況は
尾崎 床版防水は橋梁新設時に基本的に敷設されています。床版防水はアスファルト防水やグースアスファルトなどを採用してきました。舗装の打ち替えに併せて、防水工も実施しています。
――支承取替や伸縮装置の取替え状況は
尾崎 今年度は、支承取替の予定はありません。伸縮装置は2017年度に管内補修工事において7橋で取替を行なっています。主にゴムジョイントの劣化が多く、損傷した場合に管内補修工事にて対応しています。
――塩害やASRを主因とした損傷はありますか
尾崎 塩害はありません。ASRは過去に数橋ありましたが、補修済みで現在は経過観察を行っている状況です。
今年度は3橋塗り替え
塗膜除去 塗膜剥離剤を使用も新工法を模索
――鋼橋の塗り替え予定と既存塗膜の剥離方法、新しい材料の採用は
尾崎 昨年度は3橋,約13,000㎡施工しました。今年度は豊里大橋など3橋を施工する予定です。鉛等有害物質を含む橋梁については、剥離剤やパワーツールなど飛散しない手法で除去していかなくてはならないと考えています。
豊里大橋などで塗り替え進める
塗膜剥離剤は昨年度初めて使いました。塗膜との相性がありますので、現場に応じて採用していこうと考えています。
塗膜剥離剤の使用後状況(1回目)
――大阪市の塗り替えはどのような方法でやってきましたか
尾崎 これまでは、基本的にⅢ種ケレンです。
――ということは相当膜厚があるということになりますね
尾崎 活膜部分については、その可能性は高いですね。
今後は有害物質への対応もあるため、Ⅱ種ケレン相当での塗装塗替も検討しています。
2種ケレンも
――膜厚や既設塗膜の種類によっては剥離剤では厳しい箇所もあると思います。既往の塗装履歴は成分も含めてしっかりしていますか
尾崎 塗装履歴については、ほとんど残っています。コスト縮減観点から剥離剤以外の工法についても調査しています。
――耐候性鋼材を採用している橋は
尾崎 1橋だけです。損傷は特に出ていません。
ロープ高所作業を本格導入
長大橋の点検時の足場コストを縮減
――保全分野における新技術やコスト縮減策は
尾崎 点検に際して足場コストの低減のためロープ高所作業を昨年度から本格的に導入しています。また平成29年度には、当市と大阪商工会議所が締結した「実証事業都市・大阪実現に向けた包括提携協定」、の枠組みの中で、常吉大橋(大阪北港マリーナと北港緑地を結ぶ鋼斜張橋)をフィールドとして、ドローンによる点検の実証実験が行われました。結果としては、いまだ改善の余地がありそうです。
特殊高所技術の活用①(読者提供)
特殊高所技術の採用②(読者提供)
――最後に橋梁の架け替えについて
尾崎 下高野橋は平成14年度から架け替えに着手していましたが、昨年度完成しました。彩林橋や幸木橋、駒川9号橋、東交橋も昨年度に架け替えを完了しています。
現在は堂島大橋の大規模更新に注力しています。
堂島大橋の大規模更新に注力
堂島大橋 床版を更新すると同時に桁高を抑制
観光周遊船の安全に必要なクリアランスを確保
――具体的には
尾崎 同橋は昭和2年に供用した橋長76.14mの下路式2ヒンジソリッドリブ鋼アーチ橋です。床組部材や床版の経年劣化が進行しており、対策の必要があります。もう一つは大阪ならではの要因ですが、観光船が非常に増えている状況下で、周遊観光の活性化という観点からも床組を取り換えて、鋼床版化することにより桁高を約60㎝低くして、船が衝突しないような桁下クリアランスを確保しようという二つの要因から工事を進めています。
橋面舗装の亀甲状のひび割れ/RC床版下面の被りコンクリート剥落・鉄筋露出
床版からの漏水による桁の腐食・破断/船舶の接触による桁の損傷
構造的には床組とアーチは構造上分離しており、そのため床組のみを取り換えることが可能となっています。現状の床組みを撤去し、そこに橋軸方向には8本の縦桁、吊材のラインには横桁、吊材間には横リブを入れた鋼床版を配置することで、上部工を軽量化(RC+床組の既存重量を約4割まで削減)し、桁高は732~618mmに変化させています。
アーチと下部工を残し床組を取替
――RC床版および床組を除いて荷重を一時的に開放した時のアーチへのケアが大事ですね
尾崎 そうですね。アーチ橋台が微妙に地盤沈下した影響で、アーチクラウンは約20㎝ほど下がっており、アーチ支間が約15㎝程拡がっている状況になっています。そのためあらかじめアーチ橋台とアーチ桁にジャッキアップ支点用のブラケットを構築します。そして床版をはずし、軽い状態になった際にジャッキを用いてアーチ桁をアーチ軸線方向にジャッキアップし、約7.5㎝程度支間を縮めてクラウンの位置も戻すとともに、アーチのピン支承も現状の丸型から長丸型に変更する予定です。
――施工ステップは
尾崎 まず上流側の歩道部RC床版をコンクリートカッターおよびワイヤーソーで切断し、クレーンで撤去します。次いで車道部のRC床版を同様に切断しクレーンで撤去します。次に仮歩道を設置して歩道を上流側に切り替えて、残りのRC床版を撤去します。
堂島大橋の施工状況(RC床版や床組の撤去)
床版を撤去したのち床組が残っている状態で形状計測し、アーチ部の付加応力を除去します。事前に構築しておいたブラケットとジャッキを使って既設のピン支承を交換し、先ほど話したようにアーチの形状を完成時に近づけます。
次に橋梁端部を120t吊クレーンにより床組鋼桁を撤去します。既設床組部材の撤去にはガス切断を用います。撤去した箇所には新設の鋼床版桁を同様に、120t吊クレーンを用いて架設します。クレーンが届かない中央部は門型架設設備を用いて撤去および架設を行う予定です。
車道部の鋼床版施工後、歩道部を施工し、既設アーチ部の塗り替え、高欄の復旧や橋面舗装を行い、完成となります。
施工に際しては事前のシミュレートを念入りに行うとともに、施工ステップに応じて現場で実測し、詳細に対応していくことが重要となります。そのため設計・施工一括方式で発注しました。
完成後の桁下高さ
阪堺大橋は鋼部材の亀裂が顕在化
補修補強方法の検討を進める
――阪堺大橋はどんな損傷状況ですか
尾崎 同橋は1986年に供用された橋長242mの3径間連続鋼床版箱桁橋で、鋼床版Uリブなどに亀裂が発見されている状況です。交通量は約5万台です。
鋼床版上の舗装を剥がし、桁下にも足場を作って補修を進めている。(井手迫瑞樹撮影)
現在は調査及び補修を、学識経験者にも相談しながら進めています。
――ありがとうございました
(2018年6月28日掲載)