道路構造物ジャーナルNET

UFCとコンクリートの複合構造床版

NEXCO東日本 宮城白石川橋 防水性能を有するプレキャストPC床版を初採用

公開日:2021.01.20

床版撤去・架設は360t吊クレーン2台を用いて両開きで施工
 新設床版132枚を1日あたり12枚架設

既設床版撤去・新設床版架設
 10月2日から5日までの車線規制時に、追越車線側の路面切削と一部コア削孔などを行い、終日対面通行規制後の6日からは走行車線側の路面切削、コア削孔、既設床版の切断などを行った。中央分離帯側と路肩側はともにガードレールが設置されており、ビームを事前に撤去し、支柱は重機での床版小割り時に撤去・回収している。
 既設床版はスラブカッター、地覆部はワイヤーソーを用いて、橋軸方向は標準2.2m、橋軸直角方向は全断面(10.9m)を2分割する形で切断していった(1ブロックあたりの重量は約8t)。


路面削孔後/コア削孔/既設床版切断

 床版の撤去・架設は10日から、施工区間のほぼ中央のP4橋脚からPA1橋脚およびA2橋台に向かって、360t吊オールテレーンクレーン2台を用いて両開きで施工していき、23日に完了させた。両開き施工としたのは、「限られた規制期間内で約3,000m2の床版取替を完了するにはこの方法しかなかった」(大林組・横河ブリッジJV)ためだ。


施工イメージ

 施工は24時間体制で、基本的に夕方から夜にかけて新設床版架設およびプレキャスト壁高欄設置と床版下の無収縮モルタル打設を行い、クレーン移動後の夜12時ごろから既設床版を撤去、昼間に桁上フランジの研掃と塗装、スリムクリート打設という作業を繰り返した。
 既設床版の剥離はH鋼架台と油圧ジャッキ、PC鋼棒からなる通常の剥離機で行ったが、「図面よりも鉄筋被りが深いものがかなりあり、スラブカッターで切断されていなかった。そのため、剥離をしながら切断をしなければならなかったので時間がかかった」(同)ものの、1日あたり片側6枚、両側で12枚(橋軸直角方向2分割の場合は24ブロック)を計画どおりに撤去していった(撤去総枚数は135枚)。


床版剥離

床版撤去

 新設床版は橋軸方向2.2m×橋軸直角方向10.7m、重量約14tの標準版92枚、台形の端部調整版20枚、端部標準版4枚、打下標準版4枚、中間支点調整版12枚の合計132枚となり、撤去枚数と同数の1日あたり両側で12枚を架設していった。


床版割付図(※拡大してご覧ください)

床版架設

床版取替完了

 運搬と架設にあたってはスリムクリート同士の継手が鋸歯状になっていることから、その部分を傷つけない配慮を行っている。運搬時にはワイヤーがあたらないように台木を上にかませ、吊上げ時には板を敷いてチェーンや吊り具が万一あたっても表面を傷つけないように保護したという。

1時間で約24mのケレン作業が可能な「フランジブラスター」を採用

 桁上フランジのケレン作業では、下り線と同様に大林組が開発した「フランジブラスター」を用いている。自動でスイングするブラスト噴射装置とケレンくずやブラスト材を自動回収するバキューム装置からなり、桁フランジの上を手押しで移動することにより、ケレン作業と清掃作業を同時に行うことができるものだ。1時間で約24mのケレン作業を行うことが可能で、従来の人力での作業と比較して約50%の省力化を実現している。


フランジブラスターでのケレン作業(大柴功治撮影)

継手方法はUFCを間詰材とする「スリムファスナー」
 壁高欄は「EMC壁高欄」

 継手箇所はPA1橋脚~P4橋脚、P4橋脚~A2橋台ともに65箇所で合計130箇所となり、継手方法には「スリムファスナー」を採用した。間詰材にスリムクリートを用いることにより、間詰幅を従来(ループ継手)の約50%となる210mmとし、橋軸直角方向鉄筋も不要とした。また型枠はインサートで固定して支保工をなくし、更なる工程短縮を図った。


スリムファスナー 橋軸直角方向鉄筋が不要だ(大柴功治撮影)

間詰部 スリムクリートの打設(大柴功治撮影)

 壁高欄はプレキャスト壁高欄のEMC壁高欄を採用し、新設床版の架設が完了した箇所から追いかけるようにして設置をしていった。壁高欄同士の連結は曲がりボルト、床版と壁高欄はアンカーボルトを用いて行い、切り欠き部は無収縮モルタルを充填している。
 床版と壁高欄をプレキャスト製とすることで、場所打ちコンクリートは伸縮装置周辺のみとした。


壁高欄の施工

 舗装は、基層が橋梁レベリング層用混合物(FB13)、表層は高機能舗装Ⅱ型で、各1日で全施工延長を舗設した。


舗装工

施工完了

中・上段足場は「クロスリンクステージ」を採用

 吊り足場にはスパイダーパネル(PA1~P4)とVMAX(P4~A2)を採用、中・上段足場には大林組とタカミヤが共同開発した「クロスリンクステージ」を採用した。従来の足場材と桁間の足場に特化した専用の部材を組み合わせることでシステム化したクロスリンクステージにより、組立てと解体時の作業時間と人員の削減、安全性の確保を実現した。


中・上段足場には「クロスリンクステージ」を採用した

 元請は、大林組横河ブリッジJV。一次下請は、第一カッター興業(カッター工)、日本通運(床版取替工/PA1~P4)、坂上・松居JV(床版取替工および研掃・塗装工、床版間詰工/P4~A2)、松浦重機東北、新北上重機(クレーン工)、松本建設(研掃・塗装工、床版間詰工/PA1~P4)、ダイヘンスタッド(スタッド工)、ケミカル工事(無収縮モルタル工)、タカミヤ(吊り足場工)、大林道路(中分改良工、渡り線、舗装工)、日本高圧コンクリート(プレキャスト床版製作)、ケイコン・ゼニス羽田JV(プレキャスト壁高欄製作)。
(2021年1月20日掲載 大柴功治)

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