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追越車線規制期間も撤去 壁高欄一体で撤去および架設

NEXCO中日本 北陸道常願寺川橋 橋長400m超の床版を取替え

公開日:2020.09.10

縦締めPCの採用、シースの仕口合わせ
 常願寺川橋の現場でも、他の金沢支社の大規模リニューアル現場同様、床版パネル同士の接続は縦締めPC鋼材を採用している。「当初の設計はループ継ぎ手であったが、設計打ち合わせの段階で2方向PC(縦締めPC)で進めることとなった」(同社)。縦締めの本数は通常部は22~32本、定着部は48本を配置。全て1S21.8mmのスープロストランドを採用した。シース径はφ41.5mm。橋軸直角方向は全ての床版にプレストレスを導入している。架設の時のシースの仕口合わせは、他現場同様、接続ジョイントを介している。ループ継手と違って、全部をシースにキレイに挿し込まなればいけないので施工の難易度は高い。


縦締めPC配置図

縦締めPCの仕口が分かる状況(井手迫瑞樹撮影)

継手シース詳細図

 接続ジョイントは軟らかめにできていて、多少変形する。素材は塩ビのような硬いものではなく、蛇腹構造の透明のサクションホースを間にかませて、両側をプラスチックの接続の継手にした構造だ。10~20mmの変位であればしなりながら動くため、仕口が合った時点で少し曲がっていても追従でき、引き込めば真っすぐに戻る。「パネルによってはシースのセンターの位置はあっているが、工場製作時に口が左右に向くこともあり、固いもので継ごうとすると難しい。今回採用した接続ジョイントは、追従性に富むため、口さえ合わせて引き込めば多少の変形は吸収することができる。シースは雌側がラッパになっておりはめ込みやすくかつ引き込み易くしている」(同社)。
 現場では、差し込み口がどの方向を向いているか個別に確認しながら、手動チェーンブロックで微調整しながら差し込みを調整していた。施工はなるべく同じ作業員でやらないとシンクロし辛く、逆に作業者間で手法を共有できるようになることで大きく効率が上がっていった。


手動チェーンブロックで微調整しながら差し込みを調整
 昨秋に日置橋(下り線P2~A3、58.873m)の床版取替を行っており、その際に2種類の継手シースを使ってみて、栗本鐵工所製のハンドリング性の良いものを選んだ。「ただ、作業の手によっては、別のシースの方が良いと思うこともあるかもしれない。栗本鐵工所は現場に張り付いてもらい、積極的に改善してくれた。硬くても柔らく外れやすくてもダメで、これは元請とメーカーの共同開発が必要だと思う」(同社)。

延長床版
 延長床版についても底版も含めて全てプレキャスト部材を使用する。パネル数は4枚、長い辺でも10m弱。延長床版は、新設床版パネルと同様並行配置するが、底版は橋軸方向に置く。


延長床版配置図

 延長床版・底版をプレキャスト化したのは、現場での人工が減り効率的な施工ができるためだ。「作業員の熟練度を考えても、プレキャスト部材を設置していく方がよい。現場打ちでは熟練した鉄筋工や型枠工が必要であるが、現状は、様々な職工を一時期にたくさん集めることは困難だ。プレキャスト施工であれば、施工する人を選ばず、職員を付けて管理をすれば施工できるため採用した。現場が進んでいる間に工場で物は作っているので、時間も省略できる」(同社)。
 現場打ちと異なる点は、位置と高さの管理が重要であるということだ。既設の桁がまずあり、それに新設のプレキャスト床版を載せていくわけだが。延長床版部は伸縮装置を取ってしまって、土工部の方に向かってやっていくので、高さをシビアに合わせながら底版を配置していかなくてはならない。そのため底版を設置するための橋台背面の土を掘削する時から位置関係をしっかり測量などで把握して、ずれや段差を生じさせない管理をする必要がある。底版の高さ合わせは、均しコンクリートは50mmという設定であり、レベルが低ければコンクリートを増し打ちすることで調整できるが高ければ調整が難しい。そのため若干低めに見積もり、微調整する。



延長床版の施工状況(橋台背面の土砂掘削状況)

 工期の関係上、7月28日までには延長床版まで施工することができないため、延長床版は1枚だけ架設した状態で施工を一度止める。2枚目の延長床版が架設される部分はちょうどA1のパラペットの上の部分になってしまうため、開口部になってしまった箇所を鋼製の覆工板を置くことで仮に閉じて、仮舗装をかけて3週間交通を流す。8月下旬からの秋施工で仮舗装を剥がして、覆工板を除き、同じ形の延長床版を入れていく。この4枚も縦締めを施し、通常部と定着できる定着治具を使って、一体化させる。

施工上の工夫
①専用屋根の設置
 作業時に熱中症や風雨による影響を小さくするため現場では専用屋根を設置した。高さ3.733m×幅13m、奥行き5.05m。クレーンなどを使って簡易に設置可能で重さは2 t程度である。専用屋根は端部を地覆・高欄部に設置するのではなく、既設床版を撤去した箇所については橋軸方向に設置していることが特徴だ。これを2列配置することで、床版撤去後の上フランジ上面の鉄筋溶断やケレン、再塗装などにおける施工に関し、環境による阻害を最小限にして施工することができた。新設床版設置後の間詰やスタッド部への無収縮モルタル設置の際にも活用した。


専用屋根の設置状況および屋根下での施工状況

②鋼製ハンチ型枠の採用
 桁と床版を一体化するための無収縮モルタル打設時は通常、スポンジシールで施工する。しかし、常願寺川橋では桁と床版との高さが100~150mmと通常より高くなるところもあるため、スポンジシールが倒れてしまうことや、かかりが甘くなってしまうこともある。また、床版架設の性質上、シースを合わせる際にスライドが必要であるため、スポンジシールでは引っ張られて倒れてしまう可能性があった。「継手構造のように決められた箇所に置くのであれば、スポンジシールで良いが、シースに引き込まなければいけないため、スポンジシールを押しつぶしながらスライドして新設床版が降りてくるため、形状がいびつになってしまう」(同社)。
 そのため今回は、鋼製のハンチ付き型枠(最大20㎏)を床版の外面に設置して、なおかつ上下にマスキングテープを張り付けて養生しノロ漏れを防止した。またゴム材を張り付けて、不陸の発生を防いだ。


鋼製ハンチ型枠の設置
 鋼製型枠は剥がして転用する。トラブルがあっても被害を最小限に抑えるため無収縮モルタルの打設は径間ごと行い、仕切りは通常のスポンジシール材を版ごとに橋軸直角方向に配置する。鋼製型枠を使うもう一つのメリットはゴミを少なくできることだ。型枠の設置は、新設床版の製作段階で設けておいた孔に固定用のネジで固定する。施工後はセラミックのインサート部を専用のキャップで閉めた。


鋼製型枠は剥がして転用/施工前はスポンジ材を噛ませておく

無収縮モルタルの打設は径間ごと行い、仕切りは通常のスポンジシール材を版ごとに橋軸直角方向に配置

今後の施工、床版防水・舗装、塗装
 8月下旬から始まった秋施工は、まず延長床版工を施工した後、床版防水はHQハイブレンAUを採用する予定。面積は約5,000㎡。日施工量は300~400㎡。舗装は基層にFB13、表層に高機能舗装Ⅱ型を用いる。日施工量は約1,000㎡。防水工は10日ぐらいかかる。防水工は2班体制で施工する予定。

 鋼桁塗替えは14,100㎡で施工する予定。鋼桁補修の必要な個所は調査・検討中。最も塗膜劣化や腐食が懸念されるのは添接部であるが、常願寺川橋はリベット接合であるが損傷は見受けられない。塗膜除去および素地調整は、塗膜剥離剤+ブラストで施工する予定だ。但し、東名高速道路の火災事故を受けて塗替え工事は一時中止している。

足場
足場はSKパネルを採用した。

 一次下請は、トラスト工業(床版取替工事)、米原商事(クレーン)、NIPPO(防水・舗装)、主要二次下請はダイヤモンド工業(カッター)

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