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「コッター床版工法」を初採用

NEXCO東日本東北支社 東北道・小坂川橋で床版取替工事

公開日:2020.08.27

 東日本高速道路(NEXCO東日本)東北支社は、東北自動車道の十和田IC~小坂IC間に位置する小坂川橋(上り線)の床版取替工事を実施した。同工事は「東北自動車道十和田管内高速道路リニューアル工事」のひとつで、同橋下り線の床版取替は昨年秋に完了している。上り線の工事では、コッター式継手を用いた「コッター床版工法」が高速道路リニューアルプロジェクトとして初採用された。その現場を取材した。

鉄筋近傍の塩化物イオン量は最大10.93kg/m3
 床版下面に損傷が発生、床版全面約1,100m2を取替え

橋梁概要と損傷状況
 小坂川橋(上り線)は、一級河川小坂川渡河部に架かる橋長117.5m、幅員11.15m(有効幅員9.75m)の鋼2径間連続非合成鈑桁橋。平面線形はR=2,000mで、橋軸勾配0.3%、橋軸直角勾配2%、斜角はA1側(十和田IC側)約49度、A2側(小坂IC側)約50度を有している。十和田IC~小坂IC間上り線の2017年度平均交通量は、約3,400台/日で、大型車混入率は約32%だ。


位置図(NEXCO東日本提供。注釈なき場合は同)

小坂川橋全景。手前が上り線

小坂川橋(上り線)橋梁一般図

 同橋は1986年の供用から34年が経過し、2017年11月には床版上面の鉄筋露出などの損傷発生箇所で部分打替えを実施したが、防水層は設置されていない。「東北支社管内でも降雪量が多い区間」(NEXCO東日本)で、安代IC~碇ヶ関IC間の凍結防止剤の散布量は平均約7,000t/年に達し、同橋では鉄筋近傍の塩化物イオン量が、健全部で平均0.25kg/m3、損傷部で最大10.93kg/m3となっていた。その凍結防止剤散布の影響による塩害により、厚さ210mmの既設RC床版下面にひび割れやエフロレッセンス、鉄筋露出などの損傷が確認されていることから、抜本的な対策として床版全面約1,100m2をプレキャストPC床版に取り替えることにした。


床版下面の損傷状況

間詰幅20mmで現場でのコンクリート打設が不要
 約50%の工期短縮と約60%の施工人員低減を実現

コッター床版工法の特徴
 本工事の最大の特徴は、熊谷組とガイアート、オリエンタル白石、ジオスターが共同で開発した「コッター床版工法」を高速道路の床版取替工事で初採用したことだ。
 同工法では、プレキャストPC床版に埋設されているC型金物にクサビ状のH型金物を挿入し、固定用ボルトで締め込むことで床版接合を行うコッター式継手を用いる。床版側面に鉄筋の突出がないことから間詰幅を20mmとすることができ、現場でのコンクリート打設が不要となる。そのため、取替床版部分のほぼすべてをプレキャスト化することが可能だ。接合作業はボルトを締め付けるだけなので、熟練工でなくても施工できる。
 現場打設が不要で鉄筋組立や型枠組立などの工程も省けるため、従来工法のループ継手と比較して床版架設から接合までの作業日数を約50%短縮、施工人員を約60%低減することを実現した。
 鉄筋突出がないことから、プレキャストPC床版パネルの橋軸方向幅をトレーラーに搭載可能な最大幅2.5mとすることができ、パネル数を少なくできることも特徴である。また、コッター床版は接合部のH型金物を切断しても、周囲の床版の強度に影響しないため、1枚のみといった部分的な取替えが可能となっている。


コッター床版工法 概要図(熊谷組提供)

コッター式継手(左写真:熊谷組提供)

コッター床版

 熊谷組では、2017年に中国自動車道で実施された床版取替工事で4枚のパネルを同工法で取替える試験施工を行い、2年間のモニタリングを実施した。その結果、従来工法と同等の力学性能が確認されている。2019年の灰作橋床版取替工事(福島県双葉郡広野町発注)で初施工し、本工事に至っている。


従来工法との変位量比較(熊谷組提供)

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