道路構造物ジャーナルNET

河積阻害率を抑制し、景観性を確保

兵庫県 城崎大橋架替事業は下部工・上部工が今後最盛期へ

公開日:2020.07.06

上部工も現場打を選択
 上部工でも引き続き厳しい圧送距離

上部工
 上部工は、移動作業車を使った現場打ちの張出し施工を行う。プレキャストセグメントを使用することも考えたが、製作ヤードを設けることが必要なことや、下部工と同様、起重機船は上下流の橋を潜れず、水上クレーンを設置するのは大変な作業が想定されることから、現場打ちを選択している。
 次は使用するコンクリートの性状と圧送である。基本的にコンクリートは、スランプフロー50cmの普通および早強コンクリートを採用している(普通コンクリートは柱頭部、早強コンクリートは張出し部に用いる)。問題は圧送距離で、両岸からの距離はP1、P2、P4、P5はいずれも150m以下である。但しP2、P4は下部工の施工順から張出し施工順が最後になる。また、出水期の施工を計画している。そのため、発注時には台船上に配管を設置する圧送設備ではなく、架設桁を完成済みの両側径間に載せて渡すことで、台船からコンクリートを送ることなしに橋面で全て施工できるように計画している。<
 課題はP3である。当初、P3の張出し施工は出水期に行う予定であり、A1からP1の仮設道路が設置できないため、A2側から台船で送るか、台船伝いに配管し250mの距離を圧送するしかなかった。しかし、「夏場での250mの圧送は非常に難しいし、この圧送距離でスランプフロー50cmでは打設できないと判断したことから、打設時期をずらして渇水期施工を検討している。また、P1近傍に圧送の起点を設けることで圧送距離を約150mと半分程度にすることや、生コンの配合を再検討し、課題を解決する予定である。
 配筋作業で特に過密になるのは各柱頭部である。そのためヘッドバーVSLジャパン)を用いている。また打設時のマスコン対策としては、温度測定とパイプクーリングを採用している。事前にFEM解析し、ひび割れ指数1.0を目安にして必要な個所に補強鉄筋を配置する。
 張出し施工に用いる移動作業車は、拡幅部分を有するP1で大型移動作業車(350t・m)を2基、P2~P5で中型移動作業車(200t・m)を2基ずつ計8基使用する。張出しブロック長は、橋脚近傍で最短2.5m~中間部で4.5mに達する。施工に際してはコンクリート打設時に高アルカリ水が出てしまうため、移動作業車内部で受けて循環させ、河川に流さないようにする計画としている。
 防食面では、下部工、上部工ともに塩害対策として、かぶりを厚くした。また、PC鋼線はエポキシ樹脂被覆PCケーブルを採用しており、桁端部については、エポキシ樹脂系防水塗装をする予定である。
 上部工はP1柱頭部に着手している。


上部工の施工に着手した

フェイシアラインを工夫
 防護柵は茶色に 自然石素材の親柱を使う

デザインにこだわる
 橋梁のプロポーションを引き締め、橋台との床版端部・地覆のラインを合わせて一体感を向上させることを目的に、フェイシアラインを工夫している。茶色のアルミ製防護柵や道路照明・自然石素材の親柱などを用いる予定である。


工夫されたフェイシアライン

構造細目上の工夫

 環境面では、国の特別天然記念物であるコウノトリへの対策として、架け替え橋完成後の排水処理として円山川の水質汚濁を防ぐため、油水分離桝を経て排水する構造などを用いる予定である。また、現橋撤去工事を行う際には作業時間を徐々に増やし、コウノトリを慣れさせる手法の採用や低騒音・低振動型機械を使用する予定である。

 設計は予備、詳細とも八千代エンジニヤリング。下部工は前田・寄神・宮本・西山JV、前田・寄神・宮本・川嶋JV、中村建設、山口工務店。上部工は川田建設・日本ピーエス・日本高圧コンクリートJV。(2020年7月1日掲載)

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