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避難坑の背面空洞量は調査時の6倍。空洞には発泡ウレタンを注入

NEXCO中日本 安房トンネル本坑・避難坑の補修工事を進める

公開日:2019.12.05

施工延長が長く小断面のため、ウレタンによる空洞注入工法を採用
 6倍発泡ウレタンを全2,590箇所から注入

 覆工背面空洞充填工では、ケー・エフ・シーの高発泡ウレタン注入材による空洞注入システム「RBSフォーム工法」を採用した。注入材をウレタンとしたのは、長野県側の施工箇所までの距離が最大で約4kmと長いことと、避難坑が標準幅員約2.6m、高さ2.8~4.2mという小断面であるという現場条件のためだ。
 エアモルタルや可塑性グラウト充填工法では、アジテーターを含む大規模設備が必要になったり、圧送のための配管設備が必要になるが、「(小断面の避難坑で)アジテーターの待機場所や大規模設備の設置場所をどうするのか。また、長距離にわたり配管設備を構築することの非合理性に加えて、圧送距離は約2kmが限界」(元請のケー・エフ・シー)といった問題があった。
「RBSフォーム工法」は、ウレタン注入ポンプと発電機、原液用タンクという小規模な設備で坑内を移動でき、圧送の必要もないため、小断面で施工延長が長い本現場に適していたのだ。


RBSフォーム工法の設備。小断面でもコンパクトに施工できるのが特徴だ(大柴功治撮影)

 また、避難坑の湧水(毎分約12t)と、水抜坑からの水は避難坑を通り外部に排水されているが、「平湯地区の上水や、温泉の温度を下げるなどの雑水で使用されているものがある。そのため、希釈されにくいウレタンを使用することで水質的に問題が生じない」(NEXCO中日本)こともウレタンを採用した理由のひとつとなった。


トンネル内の湧水は平湯地区の上水などに使用されている(大柴功治撮影)

 注入するウレタンは6倍発泡とした。当初は圧縮強度1N/mm2の12倍発泡を予定していたが、NEXCO中日本から圧縮強度を1.5N/mm2とする要請があり、6倍発泡での施工となった。
 2019年連休明けからの本施工着手前の4月に試験施工を実施し、6倍発泡で3日後に平均2.6N/mm2の圧縮強度を発現することを確認している。ウレタンは、注入後60秒で6倍発泡し、半日で1N/mm2弱となるので、強度発現が早いことも特徴となっている。
 施工は平湯側の覆工健全度Ⅲ以上のセントルから行っている。ウレタンの注入孔はφ33mmで、トンネルセンター(天端部)とセンターから横断方向1.3mの左右2箇所の合計3箇所に、それぞれ縦断方向3m間隔で、全2,590箇所に配置した(削孔は2018年9~12月の背面空洞量削孔調査時に実施)。注入パイプは、覆工削孔後の空洞の天端から50mm下がりで切断している。


背面空洞注入坑概要図

 ウレタンは2種類の原液を注入ポンプ経由でミキシングノズルに送り、注入パイプから注入していく。その順番は、センター右側の注入パイプ→左側→センターとし、右側と左側は計画量(定量)の1.5倍のウレタンを注入している。1.5倍としているのは、「定量は覆工肩までの数量であり、側壁にも空洞がある可能性が調査時に判明していたので、NEXCO中日本と協議をして、1.5倍で管理をすることにした」(ケー・エフ・シー)からだ。
 センターは、初期圧力+0.2Mpaでの注入を行い、最後にセンターからウレタンを左右に広げていく形で施工している。注入量は注入ポンプで管理していて、設定量や圧力を打ち込めば自動で止まるようになっている。注入完了後は、注入パイプを覆工面で切断する。


注入ホース設置状況(左)/施工前(中)

ミキシングノズルでの施工(左)/注入量は注入ポンプで管理した(右)

 1日の施工(注入)量は、6倍発泡では5m3が標準だが、現場施工者の努力もあって「無機系材料と比較すると施工量は少ないが、小規模な設備で小回りが利くので段取り替えなどの必要がなく、その分施工性は上がっている」(同)という。
 今回のウレタン注入で特質すべきは、閉塞していない注入パイプから想定以上に水が排出されていることだ。「ウレタンは軽いので水の上に行くと考えていたが、水を押しのけているということは、空洞のなかでウレタンがきれいに膨らんでいる」(同)ことになり、背面空洞に確実に充填されている証拠となっている。


閉塞していない箇所から水が想定以上に排出された

 健全度Ⅲ以上のセントルでの施工は、11月13日に完了した。NEXCO中日本では、背面空洞の完全充填を目指しており、今後も継続して工事を行っていく。
 削孔調査で確認された覆工厚不足の箇所については、覆工補強工で対策を進めることにし、一部をケー・エフ・シーが施工していくが、今後も対策を行っていく。

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