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NEXCO西日本 本名川橋・思川橋 曲線および勾配の激しい箇所の床版取替

公開日:2019.04.16

合成桁部 フランジ上のコンクリートを残す形で既設床版を切断
 両端部6.7mは現場打ち施工

 本名川橋は橋長約180mの単純合成5主鈑桁+2径間連続鋼トラス橋である。単純桁部分が40m、トラス桁部分が140mを占めている。


本名川橋A1-P1間 プレキャストPC床版架設ステップ図(NEXCO西日本提供、以下注釈なきは同)

本名川橋A1-P1(手前の部分)、奥はトラス桁部(井手迫瑞樹撮影)

 合成桁部は、フランジ上のコンクリートを残す形で既設床版を切断し撤去した。次いでフランジ上面のコンクリートは手斫りなどを用いて除去した。これは合成桁であることを考慮したもので、スタッドジベルが中に埋まっているため通常のジャッキアップで床版を撤去しようとすると桁の変形を招くため、フランジ上面のコンクリートを後追いで斫り取っている。もちろん施工時にひずみ計測や床版設置高のキャリブレーションを行っており、プレキャストPC床版パネルを設置し終えた際にキャンバーが戻るよう慎重に施工している。


現場打部分(井手迫瑞樹撮影)/同部分のコンクリート打設

 合成桁部の撤去・架設は、撤去用に80tラフタークレーンを、架設用に220tオールテレーンクレーンを各1台使用し、A1の土工側またはP1(トラス桁部)に配置して施工を行っている。橋梁上に重機を配置しないのは合成桁に重量物を載せることを避けるためである。両側に配置したのは、片側からのみの施工ではクレーンの能力が不足するためである。またここでは、プレキャストPC床版パネルは中央部に13枚配置し、両端部6.7mは現場打ち施工する。端部は特にスタッドジベルを200~300mmピッチで配置しなければならずプレキャストパネルでは対応できないためだ。


本名川橋P1-P2間 プレキャストPC床版架設ステップ図

トラス桁部は3分割して撤去
 1日当たりの取替は4枚

 次にトラス桁部に移る。トラス桁部は全幅が13mにおよび、トラスの最外側にブラケットおよび縦桁を有する構造となっている。また、過去にPCMを用いた下面増厚を行っている。


プレキャスト床版割付図

 撤去は全幅を3分割する形で施工した(橋軸方向は2mピッチ、右写真)。まず路肩壁高欄と床版のラインでワイヤーソーを用いて水平切断し、地覆および高欄を撤去する。次いで床版にカッターを入れて切断していくが、下面増厚時の補強用格子筋があり、思いのほか切断に手間を要した。また、撤去時の既設床版のジャッキアップにあたっては、トラス部材(主構)の損傷を避けるため、スラブアンカー部分のコンクリートを先行して斫り、抵抗を減らしたうえでジャッキアップした。


プレキャスト床版架設概要

ケレン作業状況(井手迫瑞樹撮影)/床版の架設

 橋長は140mと長いが、A1方向は鈑桁の床版取替(前述)を行っており、重機が逃げられないため、P1からA2方向へ片押しで73枚(1枚当たり約13m×2mで重量は15t。撤去は3分割のため213枚となる)のプレキャストPC床版パネルを配置していった。1日当たりの施工量は4枚ほど。プレキャストPC床版の間詰部及び高欄打設は、思川橋同様の仕様を用いている。


P1からP2(左)、P2からP1(右)方向を望む(両写真とも井手迫瑞樹撮影)

P1近傍(左)/エンドバンド継手(右)(両写真とも井手迫瑞樹撮影)

間詰および高欄のコンクリート打設

高性能床版防水はノバレタンES
 本名川橋では登坂車線で勾配が4%程度変化

 床版・高欄の施工完了後は、床版防水および舗装に移る。高性能床版防水はノバレタンES工法を採用する。特殊要因としては、この時期は雨が多いこと、風向きによっては桜島の火山灰が落ちてくることから、路面清掃や表面含水率の計測を細やかに行い施工する必要がある。また、舗装厚は標準で80mm(レベリング層40mm:FB13、表層40mm:高機能舗装)であるが、特に本名川橋では登坂車線で勾配が4%程度変化するため、一部では舗装を厚めに施工せざるを得ない箇所も出てくるようだ。床版防水および舗装施工は両橋全体で約2,700㎡。


床版防水工(思川橋)

 床版取替後は、耐震補強や桁の塗り替えに移る。思川橋は既設の鋼製支承をゴム支承に交換する。また約1,600㎡を塗り替える。既設塗膜の膜厚は平均400μmで鉛を含有している。1種ケレンで施工する。
 本名川橋は、鈑桁部で既設鋼製支承を取り替え、落橋防止チェーンを取り付ける。トラス桁部では、既設鋼製支承を免震ゴム支承に取り替え、両端の桁かかり長を増やし、桁端部のP1は200kN、A2は750kN相当の油圧ダンパーを2基ずつ設置する。トラス桁部の支承交換に際しては、ジャッキアップ荷重を直接主構で支持させるため、鋼材による補強を施す予定だ。塗装は思川橋同様の検討を行っている。塗替面積は鈑桁とトラス桁のストリンガーのみで約2,000㎡。膜厚は350μm。


クイックデッキ

 施工足場については思川橋および本名川橋の鈑桁では従来の単管吊足場を採用したが、トラス桁部では設置しやすさおよび更新施工時の施工性を考慮して、クイックデッキ+くさび式足場『ダーウィン』を用いている。トラス桁部の足場段数は5段とした。


くさび式足場「ダーウィン」

 元請はオリエンタル白石(床版取替及び耐震補強)、一次下請は日本道路(橋面舗装)。一次下請はトラスト工業(床版撤去および架設)、野崎クレーン(重機)、鹿児島架設(足場)、ポリテクノ(防水工)。(2019年4月16日掲載)

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