道路構造物ジャーナルNET

床版の点検・補修に関わる製品も展示 現場で公開施工も

宮崎県で橋梁床版維持補修に関する講習会を開催

公開日:2018.10.29

誰でも簡単に施工できる床版補修工法「EQM」
 リフレモルセットSPを用いたタイプは宮崎県内 紙屋大橋でも実績有

 その上で、EQM工法や上面補修に用いる高弾性および低弾性ポリマーセメントモルタル(リフレモルセットSP)、浸透性KSプライマーやKSボンドなどについても触れた。
 EQM工法は、誰でも簡単に(Eazy)、素早く高耐久(Quality)にメンテナンス(Maintenance)できる工法。浸透性接着剤(KSプライマー)と付着用接着剤(KSボンド)を使い、リフレモルセットSFや同SPを補修材として用いている。


EQM工法の施工手順/EQM工法の使い分け

 浸透性KSプライマーは、付着強度が2.6N/mm2、KSボンドは3.7N /mm2あり、実験の結果、最終的な破断面は母材で生じることが確認でき、接着界面での破断は生じないことが分かった。また、KSプライマーは、既設RC床版上面の微細なひび割れにも浸透するため、上面の損傷状況を改善できる。


KSプライマーは床版上面の微細なクラックにも浸透する

 SFは8時間施工、SPは36時間施工用で、自治体での施工においては後者の方が使いやすいとした。同材料は既設RC床版の状況に配慮して低弾性であるため靱性に優れており、さらにひび割れが生じにくいように高強度ビニロン繊維を配合している。
 SPを使った床版上面の補修は、既に宮崎県内でも紙谷大橋で施工実績があるということで、今後も施工件数が増えていきそうだ。


紙屋大橋では数年間で2回補強したが、再劣化を起こしていた/その補修をEQM工法で行った

補修して3年経ったが舗装に目立った変状は出ていない

埋設ジョイント+EQM-J工法を提案

 ついで、床版端部に設置する埋設ジョイント(MMジョイント(DS))や同ジョイント設置の際の間詰に使用するEQM-J工法についても紹介した。


MMジョイントDS型の施工手順

 埋設ジョイントは、衝撃を吸収するため採用を進めるべきだとする一方で、その前後の間詰コンクリート部については、EQM工法をジョイント前後部に援用したEQM-J工法を用いることで、ジョイント前後の耐久性を飛躍的に向上できることについても資料を使って詳しく説明した。


伸縮継手および近傍の損傷(段差の発生)

EQM-J工法の施工手順

グリッドメタル 床版増厚の厚さを薄く、死荷重を軽減
 年内にもボックスカルバート補修で現場適用

 最後に、床版増厚の際に、補強効果はそのままに増厚高さを従来比6割に落とせるグリッドメタル(展張格子筋、格子鋼板筋)を用いたSFRC上面増厚補強工法についても詳しく説明した。グリッドメタルを用いた補強は、カルバート補強にも援用できる工法で、年度内にも適用現場が出る予定ということだ。


グリッドメタルの利点(補強厚が薄くでき、死荷重も軽減できる)

 例えば劣化が著しく、上面の鉄筋が断面欠損しているような箇所では、鉄筋を補強しなくてならないが、かぶりも含めて約100mmの厚さが必要になり、死荷重の増大が課題となる。グリッドメタル工法は最初から格子状に製作されているため配筋の手間を省ける。また、表面にはエポキシ樹脂粉体塗装を施しているため配筋後に生じる錆の除去の必要がなく、長期的な(凍結防止剤を含む)塩害にも強い。加えて(軸方向と直角方向に)鉄筋を重ねる必要がないため、コンクリートの被り厚も最低鉄筋の一方向分が薄くできる。そのため、従来の増厚コンクリートに比べて材工コストを1割程度縮減することが可能であると説明した。


鋼板格子筋/グリッドメタルを用いた床版上面増厚の施工手順

 グリッドメタルは形状に従いA型とB型に分かれ、いずれも成型により製作される。B型は従来の格子状だが、A型はアコーディオン状の「A」に近い形状となっている。これは完成品の3分の1程度の鉄板にスリットを入れて引き延ばすことで網状の格子筋に成型するためで、生産時の材料ロストを大幅に少なくできる。成型による製作のため、最初から隅角を伴ったグリッドメタルも製作可能だ。また、断面修復においては、KSボンドとリフレモルセットSPや同SFを使ってカルバートを下面から補修する実験を行い、耐荷力が1.65倍まで向上するという結果も得ているということだ。


供試体を用いたカルバート補修試験/既設カルバートの損傷状況

 多くの聴衆が、実践的な最新の知見に聞き入っていた。


阿部教授の講演に聞き入る参加者

会場外ヤードではスケルカなどを展示
 模擬床版を使ってEQM工法を実演も

 会場外のヤードでは、上記の各種工法、ジェットモービル車や、全国的に多くの実績を有する橋梁床版点検車「スケルカ」なども展示され注目を浴びていた。スケルカは、橋梁や高速道路の高架部分、空港の滑走路などに用いているコンクリート床版など様々な場所を最高時速80㎞で走行しながら非破壊点検できる点検車。1日当たり30橋のデータを取得し、コンクリート版内部の劣化箇所の診断カルテを作成する。橋梁床版やコンクリート版の内部劣化を短期間で総点検できるものだ。


スケルカの展示①

スケルカの展示②

ジェットモービル車と模擬床版/県内では珍しい? ジェットモービルを注意深く見ている人もいた

グリッドメタルの展示

KSプライマーの塗布

KSボンドの塗布(写真左、中)/リフレモルセットSFの攪拌

リフレモルセットSFの施工

 KSプライマーやKSボンド、リフレモルセットSFを用いたEQM工法の供試体を用いた補修の実演もなされた。また、グリッドメタルを用いた上面増厚補強の施工事例の紹介もなされた。(文、写真:井手迫瑞樹、10月26日掲載)

ご広告掲載についてはこちら

お問い合わせ
当サイト・弊社に関するお問い合わせ、
また更新メール登録会員のお申し込みも下記フォームよりお願い致します
お問い合わせフォーム