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床版の点検・補修に関わる製品も展示 現場で公開施工も

宮崎県で橋梁床版維持補修に関する講習会を開催

公開日:2018.10.29

NPO宮崎社会基盤保全技術研究所が主催し、約200人が参加
 宮崎県、宮崎大学などが講演

 NPO宮崎社会基盤保全技術研究所は9月27日、宮崎大学創立330記念交流会館コンベンションホールで「橋梁床版維持補修に関する講習会」を開催し、約200人が参加した(宮崎大学工学部社会環境システム工学科など共催、宮崎県県土整備部、土木学会西部支部後援)。

中澤名誉教授が県内橋梁床版を詳細に調査
 表面被覆を全面的に行うことで大きく劣化を抑制できる可能性

 同講習会では中澤隆雄宮崎大学名誉教授(右肩写真)が基調講演を行い、宮崎県内の橋梁床版の損傷事例について、旧小戸之橋や旧相生橋、宮崎自動車道の長江川橋を例に挙げ、橋梁床版損傷について詳しく論じた。具体的には中性化深さの進展は舗装や防水工、下面補強の有無により進展速度が大きく変わり、凍結防止剤散布や飛来塩分濃度が高い箇所においても中性化が進んでいなければ、塩害による損傷は大きくないことを確認できた、とした。今後は床版防水工や(下面についても)表面被覆を行うことにより、床版損傷の進展を大きく抑制できる、と論じていた。


中澤名誉教授の講演に聞き入る聴衆

阿部教授 教授として最後の外部講演
 RC床版の損傷状況や設計の変遷、劣化状況を熱く語る

 次いで午後には日本大学の阿部忠教授(左写真)が「道路橋RC床版の長寿命化対策」という題で講演した。阿部教授にとっては、「教授として最後の外部での公演となる」(同教授)こともあり、熱の入った講演となった。

 講演はまず、RC床版の損傷状況から説明がなされた。
 床版の上面損傷は(下面損傷に比べて)見つけにくいとしつつ、舗装面の遊離石灰の滲出やひび割れ、ポットホールを見逃さず対応することが必要とした。放置すると土砂化や鉄筋腐食、断面欠損に至ることもあり、凍結防止剤を散布していた橋梁では、床版が33年で撤去された例も示した。


舗装へのセメント分の滲出/舗装のひび割れ/ポットホール

 また、床版の再劣化に関しても言及し、補修しても早い箇所では1年も経つとポットホールが生じている現場もあると指摘した。具体的に秋に補修した後、翌春にはポットホールが発生するというケースを示した。また、鋼板接着後20~30年を経過して補強鋼板の腐食が進み、錆の影響で補強箇所周辺の抜け落ちが特にジョイントの傍で発生している箇所もあることを長野県の神戸橋の例などを示しながら説明した。同様に国が管理する橋梁でも炭素繊維シートを下面から格子貼りして補強していたが、下面にふくらみが発生し、舗装を撤去すると抜け落ち寸前になっている損傷も例として挙げ、その補修・補強法として部分打ち換えの研究事例とあわせて施工事例について語った。


床版の再劣化状況1

床版の再劣化状況2

 一方で設計規準の古い橋梁が未だ多く残っていることにも触れた。
 現状で50年経過している橋梁は、昭和39年示方書設計となっており、1等橋でも軸重20t対応であり、鉄筋は異形ではなく丸鋼、配筋方向の鉄筋は70%程度しか入っておらず、昭和48年示方書と比較しても床版としては脆弱であると指摘した。


RC床版下面の損傷状況

床版厚の変遷

 48年示方書からは異形鉄筋が使用され、平成6年示方書からはB活荷重対応となり、同8年には設計自動車荷重を245kNにするなど、示方書改定毎に床版の耐荷性能が強化されているが、その意味では既存床版を現示方書レベルに補強するためには、昭和39年示方書では60mm、48年示方書でも40mmも床版厚が薄いため、増厚や補強だけでなく、場所によっては車輌規制をしたり、重要な橋梁であれば架け替えを選択することも必要である、と述べた。取り分け、高速道路や地方公共団体では、走行性だけでなく、ライフサイクルコスト低減の観点からも床版取替を選択する例が増えており、研究面においても補修補強技術の開発から取替床版の技術開発に焦点が移っていると話した。


RC床版補修・補強方法の変遷

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