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既設巻き立て鋼板を活用して鋼製ブラケット設置

横浜市 第三和泉原橋の補強・補修工事を進める

公開日:2018.10.18

H鋼支柱を巻き立て鋼板に現場溶接で接合
 受桁部約700mm四方をはつり、本設支承を設置

 施工は、P1とP2の各2箇所合計4箇所で行った。足場設置、基礎部のはつり整形、アンカー設置、巻き立て鋼板のケレンを行った後、H-250の支柱(1橋脚につき4本)と補強用の垂直補剛材を巻き立て鋼板に現場溶接で接合した。巻き立て鋼板内側にはエポキシ樹脂が充填されていたため、事前に別の場所で試験施工を行い、現場溶接による影響を確認した。橋脚頭部には既設補強材のH鋼があり、新設する鋼製ブラケットと干渉するため、その一部をガス切断してから、H鋼に鋼製ブラケットを取り付けるための穴あけを行った。その後、鋼製ブラケット本体を3分割してH鋼支柱にボルト締め付けにより設置、2017年6月に鋼製ブラケットの設置が完了している。


既設巻き立て鋼板へのH鋼支柱の設置

H鋼支柱の現場溶接/H鋼支柱取付後の橋脚


鋼性ブラケットの設置

 桁の仮受けでは、高さ調整のための調整鋼材をゲルバー部にアンカー固定後、2017年8月に鋼製ブラケットと調整鋼材の間に1,000kN対応の油圧ジャッキ(大瀧ジャッキ/MJ-10020-A)を設置し、ジャッキアップを行っている。その後、受桁部約700mm四方をワイヤーソーで切断、撤去した。取材段階では、撤去部分に桁受鋼材と本設ゴム支承の設置を進めており、2018年度内にはジャッキダウンとジャッキ撤去を行い、ゲルバー部の対策を完了させる予定だ。


調整鋼材とジャッキ設置/受桁部の撤去

ジャッキ設置と受桁部撤去の完了

 仮受け用の調整鋼材は本設支承への受替え後も、今後の支承取替えなどの補修のために撤去をせずに残置するとともに、桁が下がった時のフェイルセーフとして、タイプA相当の支承を5mm程度の隙間をあけて設置している。

1日の施工時間は約4時間
 足場は掛け払いのため、安全対策を徹底

 本工事は東海道新幹線の線路上空の工事のため、新幹線営業時間後から営業開始までの1日約4時間で施工しなければならない。そのため、「線路上空への仮設物が残らないことや、作業が遅延し始発列車に支障させないようにするために、後片付けを含め1日ごとの予定作業を計画し、線路内の足場撤去に必要な時間の確保を徹底した」(元請の名工建設)。


夜間施工中/掛け払いの足場

 夜間施工になるため、支承設置部のはつりをはじめとした作業での騒音にも配慮した。また、線路上空の足場は施工日ごとの掛け払いとなるので、「安全帯を掛ける場所や使用状況の確認をこまめに作業員に指導した」(同)という。

断面修復工とひび割れ注入工で桁と床版を補修
 A活荷重対応のための補強工では連続繊維シートを接着

 ゲルバー部補強工以外では、主桁と横桁の下フランジに剥離、鉄筋露出が発生しており、床版では下面にひび割れと遊離石灰が発生しているため、補修を実施する。
 補修工の内容は、桁、床版ともにかぶり厚30mm以上の箇所はポリマーセメントモルタルでの断面修復工、30mm未満の箇所は亜鉛メッキによる防錆処理を実施している。ひび割れの補修では、中央径間の桁と床版は新幹線の線路上空となり短時間での施工が求められるため、硬化の速いアクリル樹脂注入工を行い、側径間の桁では経済性を考慮してエポキシ樹脂注入工で行った。


張出床版の損傷状況

ひび割れ注入工

 A活荷重対応のための補強工では桁と床版に連続繊維シートを接着する。
 中央径間の桁部と床版下面は新幹線の電力設備(き電線:交流25,000V)が近く地絡防止のためにアラミド繊維シートを使用。中央径間桁部はFORCAトウシートFTS-AK-40(繊維目付280g/㎡)を橋軸方向25cm幅、15cmピッチで1層貼りしていく。床版下面は同FFS-AK-120(繊維目付830g/㎡)を中央床版部1層貼り、張出床版部2層貼りとする。


連続繊維シートの接着(左:FORCAトウシートFTS-AK-40/右:同FSS-AK-120)

 側径間の桁部と床版上面は炭素繊維シート接着としているが、側径間桁部ではFORCAストランドシートFSS-HM-900(繊維目付900g/㎡)を橋軸方向に2層貼りしたうえで、アラミド繊維シートを外側に中央径間と同幅、同ピッチで接着する。床版上面は同FSS-MM-600(繊維目付600g/㎡)を中央径間1層貼り、側径間はFSS-HM-600を斜方向に1層、端部はFSS-HM-900、FSS-HM-1500を各1層貼りとしている。
 そのほか、鉄筋露出の損傷が発生している壁高欄の取替工、伸縮装置のシームレスジョイントSJ-M型への交換工、舗装打替工などを実施する。
 元請は名工建設、一次下請けはボンドエンジニアリングなど。
(2018年10月18日掲載 大柴功治)

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