斜角があるためアンカー削孔に一苦労
あと施工アンカーは無機系の注入式アンカーを採用
施工上の課題
安倉橋の耐震補強で施工上一番苦労したのが、中空床版桁と橋脚・橋台をつなぐ鉄筋を挿入するためのアンカー削孔だ。「フーチングと、橋脚・橋台は既設鉄筋が基本的には直角に配置されているため、補強鉄筋の配置スペースが比較的確保しやすいが、上部工は54°の斜角を有しているため、既設鉄筋が平行四辺形的に配置されており、補強鉄筋の配置スペースが限られ既設鉄筋に当たるケースが多発し、非常に苦労した」(元請の富士技建)。もちろん市販の電磁波レーダーによる非破壊検査で表面鉄筋の位置は把握しているが、「レーダーに映る表面鉄筋をかわすように削孔しても、その奥の鉄筋に当たるケースが起きている。PCMで穴埋め補修する費用も少なくなく、多少費用はかかっても深部の鉄筋の位置も分かるようなハンディな非破壊検査機器が求められる」(同)としている。
鉄筋探査は綿密に行うが……
斜角を有しているため
どうしても孔のあけ直しが生じるケースも出てくる
現場では、あと施工アンカーには無機系の接着系注入方式アンカーを使用している。今回使われたのは「セメフォースアンカー」。容器内で撹拌したアンカー用モルタルを専用のガンで注入する無機系セメントを用いた注入方式アンカーである。同アンカーは「コンクリートのあと施工アンカー工法の設計・施工指針(案)」(土木学会コンクリート委員会あと施工アンカー小委員会編)に沿う形で適切な評価試験により品質を確認された材料であり、長期クリープ試験(吊り下げ状態における抜け落ち耐久性能)や耐振動試験(繰り返し荷重による抜け落ち)、耐熱試験(火災事故などが生じた場合の耐久性)などにおいてエポキシなど有機系アンカーより高い性能を有している。また-5℃~40℃の温度環境下で使用でき、かつ湿潤状態でも施工が可能であるため、湿式コアドリルで孔を開けた後も直ぐに充填できるほか、雨天などによる工期への影響を最小限に抑制できる。また、粘度が高い材料であるため液ダレしにくく、上向きでも安心して施工できる。
アンカーの施工は、通常とほぼ同じ手順で、まず鉄筋位置を確かめるためのスミ出しを行い、コアドリルで削孔し、内部を清掃したのち、材料を撹拌し、サイズに応じてハンドガンないしエアガン(今回はこちらを使用)で孔の一番奥までノズルを差し込み注入していく。ノズルには予めマーキング(目盛)をしておき、所定量の充填を確認できる。その後、鉄筋を差し込み、1日程度の養生を経て完了させるというものだ。充填される無機系セメントには2mm弱の細骨材が入っており、躯体コンクリートよりも強度のあるモルタルであるため、削孔のやり直しによって径が拡大した個所でも、別の補修用モルタルを使わず、無機系セメントで一挙に埋めることができ、工程を短縮させることも可能だ。
削孔状況
5月のゴールデンウィーク明けには、東側のP2橋脚、A2橋台の補強に入る予定だ。
A2、P2の補強にGW明けから入る予定(井手迫瑞樹撮影)
設計はNEXCO西日本コンサルタンツ。元請は富士技建。一次下請は久本組など。
(2018年4月14日更新)