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河川内橋脚はPCウェル工法で施工

日本橋川 首都高直下に約100mの人道橋桁架設

公開日:2017.11.27

鋼管12本を打設し、防潮堤を0.5mかさ上げ

 P2の構築後、P2周辺部の全長約20mの防潮堤工事を実施した。これは架橋工事にともない既存の石積み護岸の一部を壊さなければならなかったためと、架橋後は防潮堤の改修が困難になるためである。


護岸施工状況図

 重機はP2施工と同じものを使用し、鋼管(φ1,500)を3~5本に分割して圧入機(ジャイロパイラー)で12本打設した。鋼管径は通常設計ではφ1,900の構造計算だったが、φ1,900の鋼管を河川内で打設できる重機を搬入することはできず、施工できる最大級のφ1,500として、背後を軽量盛土として土圧を下げることで対応をした。その後、化粧パネル設置やコンクリート打設などを行い、防潮堤背面の排水、既設護岸の取り壊しをして、軽量盛土を敷き詰めた。


(左)ジャイロパイラー設置 (右)鋼管打設完了

(左)化粧パネル設置 (右)護岸完成(地上部から)

(左)旧石積み護岸 (右)新設防潮堤

工事用車両の通行確保のために通常軌条より高いベントを設置
 送り出し架設時の桁下空間は約2.6m

 P2以外の陸上橋脚は場所打ち杭での施工となった。建設中の高層ビルに近接するP4と階段部のP5は、高層ビル完成後に基礎工を行うと、高層ビルの構造に影響を与えることを回避するために時間とコストがかかるため、フーチングまでアンカーフレームを先行して施工した。「高層ビル建設を同時に進めているので、安全面を含めた施工管理が重要となった」(都市再生機構)
 橋脚施工後、上部工架設となったが、河川内は50tクレーンしか使用できず、地上部は首都高八重洲線のトンネルがあるため、重機による大きな荷重を地盤にかけられなかった。また、首都高とJRの高架橋が近接している制約があるため、クレーンによる架設ができずに送り出し工法での架設が採用された。
 送り出しヤードは、大手町側の日本橋川で行き止まりになっている千代田区道補助98号の半分を通行止めにして確保した。道路上に送り出し構台用ベント3基を組み立てたが、建設中の高層ビルに出入りする工事用車両の通行を確保するため、通常軌条より高いベントにする必要があった。また、P2ベントについては、施工したばかりの鋼管護岸に土圧の関係で荷重をかけられないため、橋脚に直接荷重が乗る特殊な設計を採用した。


(左)送り出しヤード。行き止まりのため、工事用車両のみが通行
(右)送り出し構台。工事用車両通行のためのクリアランスを確保している


P2ベント

 送り出し構台の長さは約70m、対岸まで約100mの桁架設でのたわみを防ぐため、約50mの手延機を設置した。本体桁の製作は日本ファブテック取手工場で行い、縦断方向10m、横断方向は幅員7mの半分の3.5mに分割したものをトレーラーでヤードに運び、送り出し構台上でボルト溶接を行い組み立てた。
 本体桁を手延機に連結し、構台上での本体桁の組み立てが完了後、1日10mの送り出しをする作業を繰り返した。荷重が重くなった時点で約200kgの水平ジャッキを設置して作業を行った。約4カ月をかけて対岸までの架設を行い、鉛直ジャッキで橋脚上に約4mの降下作業をして、据え付けを行った。



桁の組み立てと送り出し

 通常の送り出しでは桁が下がり過ぎないことに注意するが、今回の架設では上部に首都高の高架橋があり、1.5mの桁下空間を取る必要があった。また、完成後の橋面上から首都高の高架橋桁下までが約6.5mとなっており、3.9mの降下作業を行ったので、架設では約2.6mの桁下空間しかなく、「針に糸を通すような架設」(都市再生機構)をしなければならなかった。


送り出しステップ概要図

 床版は荷重を考慮して鋼床版を採用し、シート系防水工のうえ、調整コンクリートで勾配のみを調整し、接着モルタルを塗付してタイル仕上げとした。また、たわみによる影響を防ぐため、目地幅1cmで目地剤(エラスタイト)を2.5m間隔で鋼床版まで挿入している。


(左)シート防水工 (右)調整コンクリート打設

橋を美しく見せる意匠を凝らす

 人道橋であるために意匠にも工夫がされた。通常の箱桁であれば化粧パネルを設置するが、人道橋での今後の維持管理を考えて化粧パネルを設置しないので、直接目に触れる桁の形に船底をイメージする六角形の断面を採用した。また、桁と橋脚の塗装は、日本の伝統色である若干青みを含んだ明るい灰色である銀鼠(ぎんねず)色とした。橋脚は防食対策のためにフッ素塗装を行っている。
 高欄部も通常であれば縦のバラスターを地覆に収まるように設計するが、地覆の外にバラスターの足が出る設計として、桁が視覚的に薄く見える効果を狙っている。


(左)橋面上 (右)Rがついた六角形断面の主桁


(左)バラスターの足 (右)神田側からの人道橋全景

 設計・施工は鴻池組。協力会社として、日本ファブテック(橋梁製作・架設)、日本ヒューム、加藤建設(下部工)、技研施工・角藤(鋼管護岸)、栄都建設(河川)、大日本コンサルタント(設計協力)など。

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