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-凍害の進行予測-

凍害に対するコンクリートの耐久性設計の課題と展望

国立研究開発法人土木研究所 寒地土木研究所
耐寒材料チーム 研究員
遠藤 裕丈 氏

寒冷地では凍害対策が重要

 凍害は、寒冷地のコンクリート構造物でみられる代表的な劣化の一つで、コンクリートの空隙に形成された氷の体積膨張によって未凍結水の移動圧が発生し、その移動圧によって空隙壁が破壊されることに起因し、スケーリングやひび割れが発生する現象です。凍害が大きく進行すると、鋼材の露出や腐食に至ることもあります(写真-1)。凍害に対するコンクリートの耐久性設計法の整備は、寒冷地のコンクリート構造物を適切に設計・維持管理する上で重要な問題となっています。

写真-1 凍害が進行して鋼材腐食に至った道路橋の橋台


地域的な特性が考慮された耐久性設計法が求められる

 凍害を防ぐには、エントレインドエアを適切に導入し、未凍結水の移動圧の緩和を図ることが基本です[1]。土木学会のコンクリート標準示方書では、気象条件が厳しい場合、エントレインドエアが導入されたAEコンクリートの適用を原則とする旨が昭和42年版の解説に明記され[2](それ以前は推奨扱い)、現在に至っています。

 さて、このように述べると、「空気量を適切に管理することで凍害が防げるのであれば、問題は解決済みでは?」と思われる方も多いでしょう。たしかに、エントレインドエアを導入すると、JIS A 1148に準じた急速凍結融解試験において高い耐久性指数が得られやすくなります。

 ところが、寒冷地のコンクリート構造物は凍結融解に加えて、凍結防止剤や夏期における乾湿繰返しなど、環境に関する多くの外的作用を複合的に受けます。このような環境下では、空気量が管理されたコンクリートでも凍害が大きく進行することがあります[3]。さらに、同じ寒冷地でも、凍害の進行速度は地域や部位によって異なります。コンクリート構造物を長期にわたって合理的に維持管理するには、供用期間中にコンクリートの耐久性が時間軸に沿ってどのように低下するかを定量的に把握し、適切な時期に計画的な対応をとることが大切です。すなわち、地域的な特性が考慮された耐久性設計法が求められます。

 寒地土木研究所では、凍害の進行を適切に予測する研究に取り組んでおります。その研究成果は、北海道のコンクリート構造物を合理的に維持管理し、長寿命化を適切に図ることを目的に、北海道土木技術会コンクリート研究委員会コンクリート維持管理小委員会が平成25年12月に発刊した実践的な技術資料「北海道におけるコンクリート構造物の性能保全技術指針」[4](以下、本指針と記します)にも反映されています。

 本稿では、本指針に掲載されている凍害の予測に関する内容について紹介します。


凍害を定量的に予測するには

 地域的な特性を考慮しながらライフサイクルコストが最小となる維持管理計画を策定するには、凍害の進行を定量的に予測することが大切です。そのためには、凍害の予測式が必要です。最新の土木学会コンクリート標準示方書「維持管理編」(2013年制定)[5]には凍害の予測式がまだ示されておりませんが、これまでの研究で幾つかの式が提案されています。本指針では実用性を考慮し、提案されている式の中で比較的簡易な下記の式により、コンクリート部材の凍害予測を行うことと記載しています[6][7]。


 ここに、Dmは剥離度(mm)、REdは任意の深さにおける相対動弾性係数(%)、tは凍結融解履歴(本指針では、供用年数)(年)、Aはtを無次元化させるための係数(本指針では、供用年数のおおよそ1/2の値)、a、b、c、dは係数です。


図-1 凍害の予測の概念