道路構造物ジャーナルNET

① セメント系注入材の材料特性

橋梁構造物のクラック補修工

株式会社 ティ・エス・プランニング
代表取締役社長

佐藤 智

公開日:2023.10.11

4.注入材「TSクラックフィラー®」の開発

(1)材料特性

 以下に、自社で開発しました「TSクラックフィラー®」の特性について簡単に記載する。
1.平均粒径3.0μmの高流動超微粒子セメント注入材
2.早期に水和物が生成し、緻密な組織を造るため一体化する
3.   高流動性を3時間維持し、再攪拌することでチクソトロピーの効果で可使時間が延長できる
4.高圧、超高圧下の注入でも材料分離抵抗性が極めて高く、水/セメントの分離が起こらない
5.硬化後、45N/mm2以上(W/C 57%)の高強度を発現
6.注入工法は低圧・高圧・超高圧の注入機での注入が可能である
7.各種樹脂用注入治具の使用も可能であるが、先行注入は清水の注入が必須である
8.注入時は潤沢な湿潤環境での注入が、より注入精度が高くなる

(2)使用用途

 適用範囲、用途について以下となります。
・道路、橋、トンネル、ダム、空港、港湾、上下水道等のコンクリート構造物
・コンクリート躯体内部のジャンカ、空隙等の注入補修
・クラック補修、漏水の有無に関係なく補修できる

(3)配合・練り混ぜ方法

① 配合表を参考に、高流動超微粒子セメント「TSクラックフィラー®」と 清水、混和材を計量する
② バケツ等に清水、混和材を投入攪拌した後、紛体を投入しながら撹拌機で攪拌し、投入後3分程度の攪拌を行う
③ 練り混ぜ不良がないことを確認し、30分経過後、再攪拌することで流動性が格段に向上する
④ 圧縮強度試験用の試料を必要量採取する(φ50×H1003 最低3本)

配合表

(4)流動性の確認

 標準配合(W/C57%)で練り混ぜ後、3時間静置し別の容器に移し入れることで流動性の確認を行い、移し替え時にはブリージングは起きておらず、初期の流動性が維持されていることを確認した。


流動性確認試験

(5)細部間隙通過性の確認試験

 TSクラックフィラー®と、他の2種類の超微粒子高炉スラグ系注入材と無収縮グラウト材1種類の細部間隙通過性と経時変化の確認試験について、結果を以下に記載します。
 流動性の確認には写真1のTS式ロート試験器(注射器容量:100cc、吐出口径φ1.4㎜)を製作し実験は、30分毎の流下量と流下時間を3時間計測しました。結果、TSクラックフィラー®は3時関後も100cc全ての材料が流下しましたが、A注入材、B注入材は100㏄全ての流下には至らず、練り混ぜから60分を境に増粘し流動性が著しく低下した。また無収縮グラウト材は、練上り直後の計測時点においても流下には至りませんでした。


TS式ロート試験器/流動性経時変化の比較

(6)充填確認
 供試体(φ100×H200)に円柱縦方向に圧縮試験機を用いて任意の幅(0.2㎜)のクラックを発生させ、円柱天端部に注入口を、下部の両端部にエアー抜き口を設け、その他のクラック開口部をセメント系材料でシーリングした。シーリングが硬化した後、TSクラックフィラー®を標準配合(W/C57%)で注入し、注入材料硬化後に供試体を切断した結果、幅0.05mm以下に至る注入材の充填を確認しました。(写真4.5.6)

5.注入工法と自社開発機材

 TS-type1(TSノズル式注入工法)
 コンクリート表面をキズ付けずに確実にひび割れ内部まで充填が可能であり、注入ノズル(写-7)を直接ひび割れに押し当てるだけで誰でも簡単に注入できる工法である。
 適 用:打ち放しコンクリート面の施工に適している。
 注入機:足踏みポンプ(写-8)エポキシ注入ポンプ(写-9)を先端変更により使用可能である。

 TS-type2(穿孔式低圧注入工法)
 ひび割れの表面が目詰まり(ホコリ、エフロレッセンス等)している場所や注入治具を取り付けが不可能な場所(凹凸面、斫り処理後表面等)に適した工法である。
 穿孔径はφ4㎜~φ5㎜で水循環式無振動ダイヤモンドビットドリル(写-10)を使用して穿孔後、穿孔式注入ノズル(写-11)を差し込んで足踏みポンプにて注入する工法である。

TS-type3(注入専用アンカープラグ式高圧注入)
 表面からの施工が困難である躯体内部の不具合等(コンクリート内部のジャンカ・隙間・背面の補修)の補修や補強が必要な箇所に施工できる工法。
 穿孔するにあたり、小口径深穴穿孔機(ロングビットドリル(写-12)による穿孔(φ9mm・φ15.5㎜)で高圧注入機(写-13)と注入専用プラグ(写-14)を使用して内部の補修及び補強を行う。
㊟:振動ドリル等の穿孔機は穿孔時にクラックの目詰まりが起きるので、可能な限り水循環式の穿孔機の使用を期待する。

 次回は10月中旬に掲載予定です。

ご広告掲載についてはこちら

お問い合わせ
当サイト・弊社に関するお問い合わせ、
また更新メール登録会員のお申し込みも下記フォームよりお願い致します
お問い合わせフォーム