道路構造物ジャーナルNET

シリーズ「コンクリート構造物の品質確保物語」㊾

国道57号滝室坂トンネル(西工区)における品質確保の取組み

滝室坂トンネル(西工区)
清水建設(株)清水・東急・森JV
現場代理人

平野 宏幸

公開日:2023.07.01

セントル表面にブラスト処理
 パンチングメタル等でブリーディング水の排出をしっかり行う

 この表が、当現場で取り組んでいる品質向上の取組み内容ですが、これらの中で、先ほど述べたはく離、色むら、打重ね線といった事象への対策と、施工目地不良の不具合、特にセントルの押し当てクラックへの対策に絞って説明させていただきます。

品質向上の取り組み内容

 最初に、色むら、剥離、打重ねに関してですが、セントルの表面加工と剥離剤の影響が大きいので、それについて説明します。まずセントルの表面ですけれども、無垢、セラミック加工、ブラスト処理があります。私はこれまで無垢を使うことが多かったのですが、無垢というのはスキンプレートの表面加工なしそのままのものです。これのメリットとしては、光沢のある仕上がりで、光沢があるのがメリットかどうかはさておき、ツルツルに仕上がるということですが、私の経験上、非常に剥離が多いという印象があります。非常に悩ましい現場もありました。あと、色むらが出やすいという印象もあるため、以前からあるセラミック加工のセントルを使ったこともあります。これはスキンプレートの表面にセラミック被膜を形成して剥離性が良くなって色むらが目立たないというものです。

 これを使用したこともありますが、打設回数が多いとどうしてもセラミックが剥がれてきて、コンクリートの表面に模様ができるという難点と、セントルが高価であるということがあります。そこで、当現場ではこの図の一番右のブラスト処理を採用しています。これはスキンプレートのもともとの無垢の表面に細かい凹凸を強制的に作って、剥離剤のノリをよくするというもので、セラミックと同じように剥離性が良くて色むらが目立たなくなります。ただ、問題は湿度の高い状態で放置しておくと錆が発生しますので、こういう対応が必要で現場によってはステンレス素材で対応しているというところもありますが、当現場では剥離剤をしっかり塗って対応できています。これも最近の技術ではないですが、私自身は遅ればせながら、初めてこのブラスト処理のセントルを使用して非常に良かったです。ご存知の方も多いとは思いますが、現場での取組みとして報告させていただきました。


品質向上の取組内容(正面処理)

 これがセントルの表面の色で、無垢はこういう黒っぽい色なんですけども、ブラスト処理すると白っぽい色になります。このブラスト処理したセントルに剥離剤を薄く適切に塗ることに加えて、基本的なことですが、パンチングメタル等でブリーディング水の排出をしっかり行っています。これはどこでも今はやってるかと思います。


品質向上の取組内容(無垢とブラスト処理の違い)/パンチングメタルによるブリーディング水の排出

 これが仕上がりの写真です。ご覧のように色むら等がなく、非常に綺麗に仕上がっていると思っています。これは拡大した状況です。左が無垢の時で、別の現場の写真です。どうしても無垢の場合では、配合にもよりますが、このように打重ね線が出る。これはコールドジョイントでも何でもなく、そのものが不具合というわけではないのですが、目視評価シートの項目にもあるように、表面の美観を良くするためには改善が必要です。右がブラスト処理の仕上がりです。これぐらい違います。ちょっと白っぽくなって、色むらがなく、剥離が全く出ない。すでに1000m以上コンクリートを打ってますが、剥離は1回だけ、剥離剤を少し塗り忘れた部分に出ただけで、その他はほとんど出ません。非常に良かったと思っています。


覆工コンクリートの仕上がり状況

気泡対策 地道に施工を改善 作業員を教育
 妻部の鉄板を設置した箇所の不陸を無くす

 次に気泡です。SL下の気泡も永遠のテーマでありますが、この図の左の写真のように当初ちょっと気泡が多いとこともありましたが、地道に施工を改善している状況です。作業員さんの教育でこの右の写真程度までは改善しております。私もいろいろ取り組んでますが、これはなかなか決定打を見出すことができておりません。今のところは右の写真の状況まで来ているということの報告です。


SL下の気泡

 続いて、施工目地不良の対策になります。まず、セントルのオーバーラップフランジにゴム緩衝材を設置しまして、とにかくセントルセット時の押し当てを防止しようということです。


セントルのオーバーラップフランジにゴム緩衝材を設置

 あと、コンクリートの打設時にセントルの挙動をトータルステーションで把握しています。これを測るとよくわかるのですが、当然ながらセントルは打設中に側圧を受けます。側圧を受けると、セントルが上に押し上げられて、この変位を測ると大きいときは2、3mmの変位が出てきます。これが押し当てクラックにつながって、後々の目地部の不具合になってるだろうというのが容易に想像できます。この挙動が計測によりつかめていますので、あらかじめセントルの位置を3、4mmちょっと下げた状態でセットして押し当てをなくす。当然そうすると、目地部に数mmの段差ができるんですけども押し当てクラックが発生よりも格段に良いということで当現場ではこういう工夫をしております。


あらかじめセントルの位置を3、4mmちょっと下げた状態でセットして押し当てをなくす

 施工目地部の妻型枠の一部に、写真のように鉄板を設置すると、脱型すると妻部の鉄板を設置した箇所の不陸がなくなってツルツルになります。新しく打つコンクリートとの付着を抑制できると思われます。さらに、確実に付着を切るために縁切剤をこの妻部全面に塗布しております。


施工目地部の妻型枠の一部に、鉄板を設置/確実に付着を切るために縁切剤を妻部全面に塗布

 この写真にあるように、打設後に温度収縮、乾燥収縮した時に、付着力が結構強くて、目地部に引っ張られてクラックが入る。これを私も何回も経験して、この付着っていうものは舐めたもんではないなということがわかりました。やはりこの施工目地部の付着が原因であるということで、この写真のように、同スパンの覆工の両目地に、縁切剤ありなしで施工してみました。そうすると、縁切剤のない方は引っ付いてるんですけども、縁切剤がある方はだいたい1ヶ月半ぐらい経った状態でしっかり縁切りされているということで効果があったと思っております。
 先ほどの押し当てクラック防止と施工目地部の縁切りを総合して、施工目地部での不具合がなくなっていくであろうと思っております。


目地部の不具合要因と目地の縁切りの有無

縁切剤による確実な縁切

目視評価 砂すじに注意

 最後に、目視評価の結果について述べます。今まで説明した取り組みで、総合点に示されているように、一部急に下がったりした箇所はありますが、だいたい21点から24点の間で推移しています。今現在は、非常に点数が向上して、23点以上をキープしているというところまでいきます。それぞれの項目別に見ますと、やはり点数が急に落ちているところが砂すじなんです。この図の中には入ってませんが、箱抜き部などで打設量が多いところで打設時間を短縮するために打設速度が速いと砂すじができてますので、施工の手をもっとしっかり引き締めて、打設管理を徹底させることで今はほとんど出なくなってます。

 もう一つ緑色のグラフが気泡です。気泡も30ブロック40ブロック辺りで一時期は収まってましたが、50から70ブロック辺りでまた出てきてます。これがどうも1月ごろの寒い時期に出ており、コンクリート温度との関係があるのかなと思っております。その後またなくなっておりますが、現在はまた12月に入って寒くなってきておりますので、その動向を見ながら対策を考えようと思っております。


評価点の推移

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