道路構造物ジャーナルNET

シリーズ「コンクリート構造物の品質確保物語」㊾

国道57号滝室坂トンネル(西工区)における品質確保の取組み

滝室坂トンネル(西工区)
清水建設(株)清水・東急・森JV
現場代理人

平野 宏幸

公開日:2023.07.01

(編注:今回は2022年12月16日にコンクリート構造物の品質確保の試行工事に関する講習会での発表内容を横浜国立大学の細田暁教授が再構成した内容をお届けします) 

 清水・東急・森JVの作業所長をしている平野宏幸です。滝室坂トンネル西工区における覆工コンクリートの品質確保、セントルの変形の測定などの様々な工夫について、説明します。


講習会時の資料表紙(阿蘇盆地から滝室坂方面を望んでいる)

 はじめに、当現場の工事概要を説明し、その次に覆工コンクリートの施工の概要、その後に覆工コンクリートの不具合発生部位について一般論を確認して、それを踏まえた上での当現場の品質向上の取組みについて説明します。最後に、目視評価による評価点の推移についても説明します。


発表内容

滝室坂 3,000mを超える位置にある峠道のトンネル
 大断面の本坑に平行して小断面の避難坑も掘進

 まず工事場所です。九州の地図の左側が熊本市、右側が大分となっており、そこを結ぶ国道57号が九州を横断しております。九州地方整備局で中九州横断道路を57号と並行した自動車専用道路として計画されています。本工事はその事業の中の一部であり、現場は熊本県と大分県の県境に当たる位置になります。


滝室坂道路事業

 本工事は、阿蘇山の外輪山を貫通するトンネルとなります。
 熊本地震の時に国道57号が寸断されまして、それの迂回道路として、北側復旧ルートの二重峠トンネルが外輪山の西側を貫くトンネルとして施工され、現在供用されています。
 一方、滝室坂トンネルは外輪山の逆側の東側の滝室坂という峠道のバイパスとなるトンネルです。このトンネルは3000mを超えていますので、大断面の本坑に平行して小断面の避難坑も掘っています。


滝室坂トンネル位置、3,000mを超える峠箇所に掘進を進めている

被災時に仮橋で通していた滝室坂(井手迫瑞樹撮影)

トンネル標準断面図

 工事概要です。正式な工事名称は熊本57号滝室坂トンネル西新設(二期)工事で、本坑は4834mあり、東西から掘っています。当工区は西側で、本坑が2,679m、避難坑が3,069mでということで一期、二期工事に分かれており、今は二期工事に入っております。ちなみに反対側の工区は大成JVが施工しています。


西工区の範囲と地質

 今日現在(2022年12月16日の品質確保の試行工事の講習会)の進捗は、避難坑の方が3069mということで、こちらは2022年の9月に貫通しております。本坑の方は2679mのうちの2457mまで掘削しており、残り200mちょっとという状況です。覆工の方は1379mで約半分ぐらいの施工が終わっているという状況です。


掘進進捗状況

幅14m、高さ8mのセントルで施工 1スパンあたり実打設量は120~140㎥
 チキソリデュースでこわばり低減効果

 当現場の覆工コンクリートの概要ですが、幅約14m、高さ8mのセントルで施工し、1スパン10.5mです。1スパンあたりの打設量が設計で104m3程度、支払いで131 m3、実打設でいくと120から140 m3ぐらいとなっております。
 コンクリートの配合ですが、当初設計では18-15-40BBで非鋼繊維補強のコンクリートとなってまして、これを協議変更して、繊維を添加する前のプレーンで30-21-20BBとしてスランプを上げておいて、繊維を投入した後にスランプが15cmとなるように協議して認めてもらいました。ただ、短繊維が入ってますので、吹上げ等の施工時に配管の詰まり等が想定されるので、天端部の施工時はこわばり低減材のチキソリデュースを使用することによって配管のつまり等の防止も図っています。


覆工コンクリートの概要

 チキソリデュースの説明をしておきます。ご覧のように、練混ぜ後にスランプが21.5㎝あったとしても、1時間放置して静置状態にして、その後スランプを測ると4㎝ということでかなりスランプがロスしており、非常にこわばりが生じており流動性を失っている状態です。ところが、練混ぜ後にチキソリデュースを後添加しておくと、当初22㎝のスランプが同じように1時間静置してもスランプ20㎝ということで、スランプロスが小さく、こわばりもなく流動性を維持できるというものです。


チキソリデュースのこわばり低減効果

 スランプロスが非常に小さいということで、この図にあるように、ベースコンクリートのスランプは時間経過とともに低下していくんですけども、30分程度でこのチキソリデュースを投入すると、元の正常のスランプに戻ってその後も時間が経ってもスランプロスが少ないということで流動性を維持できているという結果です。流動化剤のようにベースのスランプをぐっと上げるというものではなくて、スランプはそのままで維持するというようなものになっています。


チキソリデュースのこわばり低減効果2

 ここで、覆工コンクリートの不具合の発生部位について、簡単に説明させていただきます。これは東北地方整備局の品質確保の手引きの抜粋でございますが、この図のように、いろんな不具合が発生する可能性があります。近年は、充填不良とか背面空洞といったものは充填検知デバイスだとか、天端部の引抜きバイブレータなどの活用もあって、私の肌感覚ではこういう不具合はかなり減ってるのかなと思ってます。ところが永遠の課題ともいえる、剥離、色むら、打重ね線とか、あと気泡も含めまして、表面品質的なものが、課題として残っています。さらに、最近でもっと課題になってるのが施工目地部のうき、はく落。こういったものを我々も竣工直前に打音検査等でやった時にやっぱり目地部にいくらか出てきて、さらに、その後の経時変化でもどんどんそれが進行するという経験があります。対策が必要なA判定と判定されるものの大半がこの目地部のひび割れ、うき、はく落になっているということからも、これらが生じないように施工時にしっかり品質の良いコンクリート構造物にしておくというのが非常に重要だということで、こういうことに主眼を置いて、当現場では対策をしております。


覆工コンクリートの不具合発生部位/A判定の変状の内訳

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