道路構造物ジャーナルNET

⑩津山線落石災害の対応 ~道路管理者との連携~

JR西日本リレー連載 鉄道土木構造物の維持管理

株式会社 レールテック 構造物本部 構造物技術部長
(前 西日本旅客鉄道株式会社 鉄道本部 施設部 土木課(斜面防災) 技術主幹)

細岡 生也

公開日:2023.07.16

4.道路管理者との連携

 落石災害が発生した際、県道218号線の道路陥没の110番通報を受報した警察署員が現場に到着後、通行止めの措置をとりました。道路陥没の原因が不明であったため警察は道路管理者に対して連絡を行いましたが、道路管理者から鉄道事業者への連絡は行われませんでした。「もし連絡をしていれば」ということがあるかもしれませんが、この事象を教訓に表1に示すように情報共有の方法について、国土交通省鉄道局および道路局は2006(平成18)年11月22日付けで鉄軌道事業者および道路管理者に対し、鉄道と道路が近接する区間において、落石等により災害が発生した場合は、必要に応じ、関係者に情報を速やかに提供し共有化が図られるよう通達を発出しました。
 また、2010(平成22)年2月5日付けで、災害時における関係機関との連絡体制の整備、平時における防災情報の共有化のための取り組みに関する事務連絡が発出されました(表1)。

 2010(平成22)年2月の事務連絡を受けて、JR西日本では地方自治体等が開催する防災会議等へ参加、関係機関との連絡体制の構築と現地での災害時情報連絡訓練などを行っています。
この情報共有に関する最近の事例としては、2021(令和3)年8月18日に発生した国道9号線の地すべり事象があります(図10)。

 地すべりによって道路構造物に変状が現れた際に道路管理者(国土交通省松江国道事務所)から鉄道事業者(JR西日本米子支社)へ迅速に連絡が入り、山陰線小田・田儀間の列車を抑止し安全を確保しています。その後、応急対策を実施し2021(令和3)年10月1日から2022(令和4)年12月1日の間、徐行運転を行いました。
 この地すべりに対し道路管理者は地すべり土塊の重量軽減と土中の排水促進のために頭部排土と排水ボーリング、集水井、横ボーリング工、グランドアンカー工、鉄道切土のり面へモルタル吹付などを実施し、鉄道事業者は周辺の地すべり地形に対し集水井につながる既存の排水設備の土砂浚渫、排水ボーリングの打設を実施するなど道路管理者と鉄道事業者が連携して復旧工事を行いました(図11)。

5.おわりに

 今回の連載では、落石災害への対応として対策工の施工、関係機関との情報共有の重要性について紹介しました。JR西日本では、道路構造物ジャーナルNETの連載第8回(5月号)で紹介した「斜面防災カルテ」を整備し、日常の維持管理に活用しています。落石対策が必要な箇所については、落石止め柵などの防護設備の設置など計画的に実施しています。また、国土交通省からの通達等に基づき関係機関との情報共有や災害対応訓練などを実施しています。
 今後も道路管理者等関係機関との連携強化を図るとともにより効果的かつ効率的な斜面の維持管理を継続していきたいと考えています。

参考文献
1) 航空・鉄道事故調査委員会:鉄道事故調査報告書「西日本旅客鉄道株式会社 津山線牧山駅~玉柏駅間列車脱線事故」,2007.10
2) 長谷川智,細岡生也,二宮正樹,小林徹:津山線落石災害の原因と対策工,土木学会第63回年次学術講演会,2008.9
3) 中山 亮,藤原申次:過去災害(落石)2 津山線における落石災害の概要と対策,日本鉄道施設協会誌,2016.12
4) 国土交通省:通達等,2006.11,2010.2
5) 国土交通省中国整備局松江国道事務所:プレス資料,2022.12.13

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