道路構造物ジャーナルNET

㊹維持管理の重み(その5)

現場力=技術力(技術者とは何だ!)

株式会社日本インシーク
技術本部 技師長

角 和夫

公開日:2023.05.16

(2)PFAS(有機フッ素化合物)の規制

 一部のPFASの安全性に懸念があることが発端となり、欧米を中心にPFAS全体を対象とした規制が進行中という情報が入った。以下は、日本フルオロケミカルプロダクト協議会(FCJ)の資料から抜粋して紹介する。PFASという言葉は、皆さんご存じでしょうか。我々土木技術者には馴染みがないし、知っている方が珍しい。半導体製造装置、自動車部品他様々な用途に使われている。土木の世界ではふっ素樹脂塗料に使われている。
 では、今何が起こっているか。安全性に懸念があることから欧州中心にPFASの規制が進むと、現在調達している製品や部品が使用できなくなる。当然、ふっ素樹脂塗料が使えなくなることが想定される。それではふっ素樹脂塗料に替わる塗料は何か。
  その前にふっ素樹脂塗料についてこれまでの経緯を以下に説明する。

①ふっ素樹脂塗料とは
 1980年代からそれまでのポリウレタン樹脂塗料に替わりふっ素樹脂塗料が世に出てきた。塗り難さはあるが耐候性に関しては断トツと言うことで本四橋では明石海峡大橋以降の来島海峡大橋、多々羅大橋の新設塗装や以降の塗り替え塗装に採用された。ところが本四橋(海峡部)の塗色はほとんどがライトグレー(無彩色)としており、白色の酸化チタン顔料を使用している。この酸化チタン顔料の光触媒(光活性化)作用により樹脂分解が生じることが判明した。この現象は、現場ではチョーキング(白亜化)として現れ、光が表面の粉粒子により乱反射し、光沢度が低下することで判明する。

 <裏話>
 このチョーキングについては、塗替塗装にふっ素樹脂塗料を使用した大鳴門橋には発生しなかった(私が橋梁課長として在任した2003~2006年において)。新設塗装でふっ素樹脂塗料を採用した明石海峡大橋や塗替塗装で採用した瀬戸大橋(一部の橋)では発生したと聞く。

②高耐久性ふっ素樹脂塗料の開発
 光沢度保持率を高める(チョーキング発生を遅く)ことを目的として高耐久性ふっ素の開発が行われた。基本的には樹脂やチタン顔料に改良を加えている。実際にどうなったかは今後発表されるであろう。

(3)ふっ素樹脂塗料に替わる塗料は?

 PFAS規制が進んだ場合、ふっ素樹脂塗料が作れなくなる、あるいは無くなる、可能性がある。これに替わる塗料は何か。ふっ素樹脂塗料(上塗り)に課せられているのは耐候性である。ふっ素樹脂塗料(上塗り)と同等以上の耐候性を有し、チョーキングを発生しない、し難い(光沢保持率が落ちない)塗料、それは無機塗料しかないと私は考える。
  現在、阪神高速時代に行った無機塗料に関する共同研究結果を整理中である。5年間実施した日本ウエザリングテストセンター(一般財団法人)宮古島暴露試験場での暴露実験、東神戸大橋近傍を始めとする環境の異なる3か所(阪神高速沿線)での暴露試験結果等についてまとめている最中である。機会があれば紹介する次第である。

(4)最後に

 昨今の話題は、人口減少、インフラの老朽化、能登半島の震度6強の地震、未完の巨大インフラ(瀬戸大橋・青函トンネル)、限界集落、を取り上げた。いずれの話題もお金に関する話である。私ももうすぐ(4か月後)前期高齢者の仲間入りをする。生産人口はどんどん減り続ける。政府は少子高齢化対策をする、と言うが何をするのか。子供を産み易く、育て易い環境づくりをするのが対策なのか。勘違いも甚だしい。すぐそこまで来ている首都直下型地震、東海・東南海・南海地震や今回の能登半島にみられる「流体活断層刺激型地震(私が勝手に命名しました)」の対策は進んでいるのか。現道(国道や県道・市道・村道)と限界集落を結ぶインフラ(小規模吊橋等)の長期修繕計画は進んでいるのか。防衛費を増額している場合か、と言いたい。
 また、新たな話題として「PFAS(有機フッ素化合物)」の規制が各国で進行中であることを紹介した。今後の「PFAS規制」の動向については注目必須だ。仮に規制がかかればふっ素樹脂塗料が作れない時代がやってくる。今から「脱ふっ素」、つまり、ふっ素樹脂塗料に替わる被覆材料(例えば、無機塗料)を全面的に押し出す必要があるかもしれない。

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