道路構造物ジャーナルNET

②技術者倫理

失敗から学んだコンクリート打設

株式会社ファインテクノ
調査計測部
マネージャー

平瀬 真幸 氏

公開日:2023.01.01

 新年あけましておめでとうございます。連載を開始して間がありませんが、早々にお目にかかれました。元旦に連載を投稿したいと考え、編集者にお聞きしたところ「大晦日まで原稿のやり取りができるなら可能」と言われましたので喜んで執筆させていただきました。お忙しい中、編集者の井手迫さんありがとうございます。

最初に話するのは技術者倫理、そして打設を実演
 【三方良し】を目指す

 一定期間失敗を重ね、それだけ反省と改善をしてまいりましたのでスランプ8cm程度のコンクリートを綺麗にする事に対し、特に条件が悪い場合(高密度配筋で棒状バイブレータが入らない等)を除いて難しくないと感じるようになった後の事です。発注者職員さんの前で「綺麗なコンクリートは、施工者に良心があれば、そこに適切な指導を加えるだけで構築できます。目の前で証明できますがここでやってみましょうか」と発言し、指導内容・材料・施工・目視評価等で確認いただいた事がありました。
 実際、様々な指導をしましたが難易度で言うと誰でもできる事を良心に従って丁寧に積み重ねてもらうことが大切です。私が施工者に助言するとき、最初にお話しするのは技術者倫理について、が多いです。なぜかと申しますと、人を動かすには正しい理由があれば響き易いですし、施工者の行動にこの国の未来がかかっていると強く認識されれば、その行動も力強く可能な限り尽力いただける可能性が高まると思うからです。とは言ってもこちらは発注者側、という事で当たり触りなく肯定するふりをする施工者もいて、実際どのように思っているかは施工初日の対応を見るまで分かりません。今回紹介します施工者は、とても聞き分けが良く私の話に「なるほど、分かりました。大丈夫です」。そのように同意しているかのような反応でありましたが、実際の施工は4回連続コンクリート打設に失敗しました。毎回コンクリート打設前は丁寧に説明し、型枠脱枠後も失敗理由について分かりやすく解説・是正方法を助言したつもりでしたが、あまり変わりませんでした。そこで4回失敗した後、発注者職員さんの前で前述しましたように以下のようなやり取りをしました。


 平瀬:「コンクリートを綺麗にするのは難しい事ではありませんが、この施工者は4回連続でコンクリート打設を失敗しております。毎回助言すると、気持ちよく「分りました」と返事するのですが、助言に従った行動はありません。次の5回目も改善せずに失敗する状況で、ただ頑張るだけだと思います」。
 相川係長:「綺麗なコンクリートとするのは難しいと聞いておりますが、そのように出来るのでしょうか、しかも失敗続きなんですよね」。
 平瀬:「良質な駆体ができない事について、国が指摘しているのは熟練作業員の引退が大きな原因の一つだと言われていますが、それもありますが今回は元請さん・土工さん・ポンプ屋さん・生コンプラント全てが私に懐疑的なので、これを覆す仕掛けを考えております」。
 相川係長:「どのような仕掛けですか」。
 平瀬:「成功体験がないから出来ないと思うのは当然ですが、経験があるのでお任せいただければそれを効果的に伝えて実施・指導・改善しょうと考えております」。

 相川係長:驚いたようで、目を輝かせて聞いてくださいました。
 平瀬:「これは一人で遂行できる事ですが、相川係長の協力が得られればより短時間で最高のパフォーマンスを引き出し継続できるかと思いますので協力いただけるでしょうか」。
 相川係長:「はい、できることなら協力します」。
 平瀬:「元請さん・土工さん・ポンプ屋さん・生コンプラント全てが助言に従わないので、全員の意識を変える必要があります。そこで何が正しいか理解いただくために、私が実演して彼らに同じ事をやっていただきます。材料については、現時点の技術で硬いコンクリートは難しいので、その辺りを考慮し成功体験可能なスランプ6.5cm程度で注文してもらいます。そこで締固めの手本を見せ、体験させ、助言しながら成功するまで引き上げていこうと思います」。
 相川係長:「スランプ6.5cmとか施工できるのでしょうか」。
 平瀬「スランプ2cm程度での締固め経験がありますが、それに見合う器械を考えて使えば問題ありません。ポンプ車は何も対策しなければスランプ8cm以下で詰まるリスクが僅かに出てきますが、こちらが対策をしていれば6cmもあれば問題ありません。スランプが低いほど締め固めたコンクリートに不具合は少ないですし、コンクリートの硬さに見合う締め固めをすれば良いので、ここでは締固め時間で管理するのではなく、空気が排出されるまで締固めを丁寧に行います」。
 相川係長:「締固め時間が長い場合、過振動・材料分離はどう考えれば良いでしょう」。
 平瀬:「硬いコンクリートを締固めますので、材料分離は僅かだと想定されます。生じたブリーディングは全て廃棄し、天端で使うコンクリートは更に低スランプを投入して丁寧に締固めるので、今まで経験のない緻密なコンクリートになると思います。十分に成功体験がありますし、少々何が起こっても対応できる事なので安心して任せていただきまして、実証する状況をつぶさに確認いただければと思います」。
 相川係長:「では、私は何をすれば良いでしょうか」。
 平瀬:「相川係長には、現場に来ていただけるだけで助かります。施工者に良い緊張感とヤル気も生じますので大きな効果が見込めます。あと全然ダメな施工者であっても、誰か一人指揮できる者がいたら緻密な駆体ができる事を分っていただきたいです。最も大事なのは施工者を育てる事なので、脱枠したその日、コンクリートの仕上がりを確認いただいて綺麗・汚いなど正直な感想を施工者へ伝えていただき、もし綺麗に仕上がった時は褒めちぎっていただけないでしょうか。彼らは品質が良いと言う事で発注者に褒められた経験がありません。ただ決められた事をやって、国益など全く関係なく会社に利益を持ち帰るだけの役割なので、こうした誰でもできる仕事が施工者のモチベーションを低下させております」。

 「「綺麗ですね。長持ちしてくれそうです。国は助かります」などと伝えていただけたなら、国に貢献している事を自覚しさらにやる気につながって、この丁寧な施工が評価されれば彼らも自然と高品質なコンクリート構造物を構築し続けるのではないかと思うのです。多くの技術者は、意図して手抜きした汚いコンクリートで儲けようなど思っておらず、ただノウハウも評価も分らないことから仕方ない状況で施工していると思います。ここで高い評価を得たなら、他業者も競争して品質の良い構造物を構築しようという技術者が出てくるでしょう。いま、全国で高品質な駆体を構築しにくいのは、良質な躯体を構築してもその費用に対して評価が釣り合わないと考える事から、良識ある技術者が発言力を失いお金のかかる人材育成も制限されるからではないでしょうか。国益を確保した施工者にはそれなりのインセンティブがあれば、施工者は腕を磨き、良心的な下請けを選びやすく、そこで人を育てやすいですし、良い材料も調達しやすいので、いずれ【三方良し】となると思います。そのようになって欲しくて、【最高品質の駆体造り】をここで公言実行したいと思います」。等々抜粋内容。
 以上が5回目の施工前に発注者の相川係長と打合せた要点となります。

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