道路構造物ジャーナルNET

③鋼材の材質と溶材について

土木・建築における溶接継手について

株式会社エヌダブル
代表取締役社長

森部 繁尚 氏

公開日:2022.11.30

溶接ヒュームに含まれる化学物質が特定化学物質に追加
 労働者にとっての健康リスク 保護マスク着用の徹底を

 11月になり、気温も下がってきましたので、作業しやすい環境になってきました。
 さて、最近よく聞く、特定化学物質・四アルキル鉛等と言ったものですが、溶接に関係しているのは、溶接ヒュームが神経障害等の健康障害を及ぼすおそれがあることが最近になって明らかになったことから法律が改正され、令和3年4月1日より特定化学物質に加わりました。四アルキルとは、四メチル鉛、四エチル鉛、一メチル・三エチル鉛、二メチル・二エチル鉛、三メチル・一エチル鉛及びこれらを含有するアンチノック剤の事だそうです。
 アンチノック剤とはガソリン添加物の事です。なかなか、難しいワードばかりで覚えにくいですが、溶接時に関して言いますと溶接ヒュームは今までは、粉じんとして健康被害への防止対策をしてきましたが、近年 溶接ヒュームに含まれる化学物質が労働者にとって健康被害のリスクが高いと認められたことで特定化学物質に追加されました。
 私も16才のころから、31年間溶接に携わってきましたので、老後に溶接ヒュームや石綿シートなどが健康に被害を及ぼさないか心配ですが、これからも職人の健康をまもっていきたいと思います。特定化学物質は、毛穴からも侵入するため、ヒュームを外に出さないようにと、吸わないように保護マスクを溶接していなくても近くにいる場合は、必ず着用するようにお願いします。


特定化学物質・四アルキル鉛等作業主任者テキスト

女性溶接工の採用が日本の技術を守る
 男性よりも繊細な溶接ができる

 先日、地方の溶接評価試験会場に行ってきましたが、そこで女性溶接工の方を5名ほど見かけました5名とも、海外の人達でしっかり溶接していました。弊社にも女性作業員がいますが、以前その女性社員に溶接の資格を取るため何度か教えたことがあります。個人差はあると思いますが、覚えも早く心持ち男性作業員より繊細な溶接ができるかなと感じ取れました。一月ほど仕事終わりに1時間程度教えましたが、見事JISの厚板の基本級と立向きの専門級を取得することが出来ました。私が思っているのは、近年海外実習生を沢山雇い入れて、やっていくのもいいですが、男性作業員と同じ評価(賃金)で女性作業員を増やしていくのも日本の技術を守っていくにはいいのではないかと思います。


女性溶接工用ヘルメット

 女性用の溶接面も出てきています。
 海外では、沢山の女性溶接工が活躍していますので、日本も女性溶接工が増えてもいいと思います。今や現場も女性専用トイレが設置されるようになり、前ほど汚い現場もなくなりました、女性も現場監督や現場作業員として働ける環境になってきていると思います。
 私的には現場トイレがきれいになってきたことは凄くうれしい事です。

溶接する鋼材の材質と溶材の選定が、最も重要
 橋梁で最も使われるSS材とSM材について

 今回は橋梁における鋼材の材質の特徴と材質にあった溶材の選び方などを、私なりに、ご紹介したいと思います。溶接作業をするにあたって初期段階でまずやらなければいけないのが、溶接する鋼材の材質と溶材の選定が、最も重要です。溶接は、鋼材の材質や板厚、気温、湿度によって予熱や後熱が必要とされます。橋梁で主に使われている鋼材は、SS材やSM材がもっとも多い鋼材ではないかとい思います。建築鉄骨だと、SN材が使われていますが、なにがどうちがうのか見てみたいと思います。

【SS材】
 SS材とはsteel structureの略称でSはsteel鉄、structureは構造と名つけられ正式名称は一般構造用圧延鋼材と言います。
 JIS規格においては、他の鋼材に比べて不良品の発生率が少なく不留まりがよいことから建築現場や土木現場で使用されていますがJIS規格上の規定はいまだに議論中のため、まだ規定がありません。SS材は、どのような性質があるのかと言いますと低炭素の軟鋼ですので、溶接や肌焼きなど金属そのものを焼いて補強することは向いていません。問題なく溶接はできますが、大きな応力を受けるような部位や板厚25㎜を超える場合は、溶接構造用圧延鋼材のSM材を使用する事をお勧めします。

【SM材】
 SM材とはsteel marineの名称でSはsteel鉄、Mは船舶を意味するMarineだそうです。これには、なるほどって思われた方も多いのではないでしょうか、かつてはほとんどが船体に使用されていましたが今では、船舶に限らず橋梁やプラントにも幅広く使用されています。SM材は、SS材と成分は似ていますが、SS材はリムド鋼、SM材はキルド鋼からできています。

 キルド鋼の名前の由来も面白くて、キルド鋼は製造の過程で脱酸と言う溶鋼に含まれている酸素を抜く作業で溶鋼内の気泡を除去し、低温下でも強度を保つようにした鋼材です、脱酸されたキルド鋼は炭酸ガスの放出がなく静かに凝固していくため(死んだような静かな鋼)(酸素を殺す)と言う意味で「killed」という意味でキルド鋼と名つけられたようです。SM材はSS材と比べてリンと硫黄の比率が少ないため、溶接性が良いため溶接用鋼材とも言われています。

 SM材の種類ですが、沢山ありますが、例えばSM400Aなどの末尾にAと付くものをA種と言い、A種は耐久性が強い鋼材です、熱や紫外線、雨水などの影響を受けにくいので屋外や劣悪な環境下で使用されます。末尾がBやⅭと付いているものについては、それぞれB種、Ⅽ種と呼ばれ衝撃試験を行っているタイプの鋼材になります。ちなみにシャルピー衝撃試験ではAやBよりも若干Ⅽのほうが高い靭性を持っていることがわかります。

鋼材の機械的性質に関するJIS規格値(板厚16㎜~40㎜までの場合)

鋼材の化学成分(%)他のJIS規格値

 私は、鋼材と溶接材料の組み合わせは大変重要だと思います。
 引張強度の違う鋼材と溶材にしてしまうと割れや破断の原因になりえます。

レベルの高い超音波探傷試験(UT試験)の溶接製品は国産製品が良い
 メッキ対応溶接ワイヤの特徴としては溶接機のプラスマイナスを逆にする必要がある

【溶材について】
 溶接材料について、少し私なりにお話しさせていただきます。
 今回は、半自動溶接の溶接ワイヤを取り上げてみました。
 今は鋼材をはじめ色々な材料が値上がりしています、溶接材料も大幅に値上げをしてきています。そこで、私の感覚で話をさせていただきますと、現場溶接では、あまり目にすることはありませんが、他社の工場で目にするのは、国産の溶接ワイヤは値段が高いため海外の溶接ワイヤを使う会社もたくさんあります。国産よりもワイヤに付着している油と言うか汚れと言いますか、国産に比べて多く付着している量が多いと思われます。
 すみ肉溶接であれば、さほど国産ワイヤも海外ワイヤも変わりなく思えますが、やはりレベルの高い超音波探傷試験(UT試験)の溶接製品だと、国産ワイヤに比べて細かい欠陥がでてきます。弊社もコストダウンを考え試しに海外ワイヤを使ってみましたが、弊社の製品には不向きだったので、やはり国産ワイヤを使うことをきめました。

【溶接ワイヤの種類】
 溶接ワイヤには、主にソリッドワイヤとフラックス入りワイヤに分かれます、橋梁溶接においては、外観が綺麗なフラックス入りワイヤがすみ肉溶接には特によく使われています。
 ソリッドワイヤは、弊社では、下向き溶接のUT検査箇所に使用しています。水平溶接や鉛直溶接は全姿勢用のフラックスワイヤを使用しております。溶接する姿勢でワイヤを選択することは大切な事ですが、溶接する鋼材と溶接ワイヤの相性や規格が合っているかを選定する事が一番重要です。特殊なとこで言いますと、あまり知られていませんが、メッキ対応ワイヤと言うワイヤもあり(下写真)、メッキ加工のしてある鋼板の上からそのまま溶接できます。

 メッキ対応溶接ワイヤの特徴としては溶接機のプラスマイナスを逆にする必要があります。
 通常(+)がトーチ側で(-)が母材側ですが(-)をトーチ側で(+)を母材側にしないと、メッキ対応の溶接ワイヤにはなりません。その他フラックス入りワイヤの中でもメタル系とチタニア系のフラックスがあり、メタル系の中には、ジンク塗装やプライマー塗装が15μ以下の塗装された鋼材でも、ケレンすることなくそのまま溶接しても良好な溶接をできるワイヤもあります。鋼材にSS材SM材などの400・490・520・・・と種類がたくさんきますが、必ず鋼材にあった溶接ワイヤを選んで溶接をしてください。(次回は2023年1月に掲載予定です)

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