道路構造物ジャーナルNET

㊳小規模吊橋雑感(その2)

現場力=技術力(技術者とは何だ!)

株式会社日本インシーク
技術本部 技師長

角 和夫

公開日:2022.11.01

(1)はじめに~最近の話題~
  ①ピボットローラー支承の破壊

 私が知らなかっただけなのか、業界ぐるみで情報を発信しなかったのか、それは分からないがピボットローラー支承の損傷が相次いでいる。1橋目は、2020年9月に発生した「舞鶴クレインブリッジ」(写真‐1参照)である。舞鶴クレインブリッジは、橋長735mの3径間連続鋼斜張橋である。関西電力火力発電所建設工事のアクセス橋として建設され、工事完了後は舞鶴市に移管(1999年)されている。損傷は、西側主塔の2基のピボットローラー沓のローラー4本の内3本が破断。その後、委員会が設置され原因究明や対策案が議論され、復旧工事を経て2021年10月に通行止めが解除された。原因は、ローラーの製造過程(焼き入れで内部の硬度が高くなり過ぎて延性を欠き放射状のひび割れが発生)で生じた微細なひび割れがその後の活荷重の載荷で破断に至った可能性が指摘された。
 2橋目は、2021年8月に発生した「牛深ハイヤ大橋」(写真‐2参照)である。牛深ハイヤ大橋は、橋長883mの7径間連続鋼床版曲線箱桁橋である。熊本アートポリス事業の一環で世界的な建築家レンゾ・ピアノ氏が設計した綺麗(私だけか)な橋である。経済性を追求しない、メンテに苦労する、作ってはいけない部類の橋の一つであろう。損傷した支承は3基(全16基)。ローラーが破損したり、支圧板が砕けていたり、ローラーを誘導する歯車(ピニオン)の軸が破断したりした。原因は、橋梁の線形と構造により想定外の力が作用していたことによる(FEM解析結果)。復旧工事を経て2021年12月に通行止めが解除された。多くの技術者はご存じかと思うが、この橋が「土木学会デザイン賞2001最優秀賞」を受賞している。この橋は工事中、完成後と何回か訪れている。主桁のFC大ブロック架設時には福岡県の部下や委員会のメンバーを引き連れて、完成後は新天門橋の現地踏査のついでに。鄙びた漁港に突如現れるこの橋は異様である。
 橋自体が要・不要は抜きにして、デザインのみの耐風板を付け、維持管理を究極にし難くした橋である。神戸淡路鳴門自動車道の門崎高架橋を思い起こさせる。耐風板が腐食して・・・・。こういう橋は作るべきではない、と言うのは地元に住んでいない私だけであろうか。

 この2橋の損傷事例に関して、日経コンストラクションの編集長が論評されていた。非常に重要なことなので紹介する。「インフラ管理者(技術)は誰のために仕事をするのか」。上記2橋の支承製作メーカーは同一だと損傷後判明した。舞鶴クレインブリッジのローラー支承の損傷が発見された時、何故公表なり、警鐘を鳴らさなかったのか。原因が分からないうちから、支承メーカー名を公表できない、公表すると風評被害が発生する、と役所は言うが。原因が分からないから箝口令を敷くのではなく、こういう支承に損傷が出たから、同種の支承を使っている橋は緊急点検をせよ、などの指示を出すのが常識ではないのか。出していたのであれば流石と言いたいところであるが。

 <ローラー沓の設計に関する思い出~瀬戸大橋 与島橋~>
  1982年頃、瀬戸大橋与島橋(3径間連続併用トラス橋、支間割175m+245m+165m)の計画設計を担当していた。工事(発注~詳細設計~施工)を担当する工事区と連携を取りながら支間割を含めて併用トラス橋の最終検討を行っていた。この区間は、前後の斜張橋(櫃石島橋・岩黒島橋)と南北備讃瀬戸大橋(吊橋)とを接続するために平面曲線(R=1,300m)が入っていた。また、南北備讃瀬戸大橋の航路限界(TP+65m)をクリアするために1%の縦断勾配が付いている。そういう意味では、設計条件的には非常に厳しい橋梁となっている。
 因みに、与島橋での平面曲線と縦断線形の処理は以下のように実施した。

  〇平面曲線(R=1,300m)(図-1.1参照)    主構幅をバチ形状に(28m~32m~28m)

  〇縦断線形(1%)(図-1.2参照)  主構高を変更(20m~35m~37.5m~20m)

この与島橋の耐震固定法(つまり)支点条件は、起点側からMove(YB1P) - Fix(YB2P) -Move(YB3P) – Move(YB4P)とした。YB2Pの一点固定としたのは、浅い位置で良好な支持層(岩盤)があったことによる。YB3Pは与島の入江付近にあり、浅い位置に良好な支持層(岩盤)が無かったことによるものである。支承の最大鉛直反力は、YB2Pの固定支承で13,000t弱。YB3Pの可動支承で13,000t(当時の設計;YB3P~YB4Pは、与島島内の列車騒音対策からスラブ軌道として計画していた。最終的には鋼桁直結軌道に変更したことで11,000tに)と化け物の様な支承となった。 以前のジャーナル記事にも書いたが化け物沓の調査のために阪神高速道路湾岸線・港大橋(反力10,000tのピン固定沓)にも出かけた。与島橋の支承は、反力が大きいばかりでなく、移動量も大きい。このため、大反力と大移動量に対応可能な「ピンローラー沓」を採用した。

 ピンローラー沓の特徴は、以下のとおりである。
  ・大きな反力に対応可能である。 →利点
  ・大きな移動量に対応可能である。 →利点
  ・移動は転がりによるもので、摩擦係数(設計上はμ=0.05)が小さい。 →利点
  ・1本ローラー沓ではローラーの逸脱が確認されている(特に、1本ローラー沓)。 →欠点
  ・塵埃等の影響を受けやすい。  →欠点
  ・高硬度ローラーの場合、製作時の焼き入れや肉盛り溶接に注意が必要。 →注意点
 因みに、与島橋3Pのピンローラー沓のローラーは、本数6本、直径はφ300㎜である。
   
 大反力・大移動量のローラーは、支圧強度や耐食性を向上させるため高硬度ローラーが一般的に採用されていた。高硬度ローラーには、焼き入れ型高硬度ローラーもしくは肉盛型高硬度ローラーがある。焼き入れ型高硬度ローラーには、13Cr系ステンレス鋼(C-13B)をベースにしたもの、ニッケル・クロム・モリブデン鋼(SNCM材)をベースにしたもの、ステンレス鋼(SUS420等)をベースにしたもの等が使われていた。肉盛型高硬度ローラーは、13Cr系合金(CWA)を支圧範囲に肉盛り溶接を行ったものである。

 与島橋の計画設計では、耐食性に優れ、焼き入れ性が良く、高い支圧強度が得られる13Crマルテンサイト系ステンレス鋼(C-13B)を選定した。その後、製作時には実物大の供試体を用いた耐久性試験(転動疲労寿命の確認)を実施し、ローラーの耐久性を確認している。

②新たな指名競争入札制度の試行~地域の守り手育成型方式~

  令和2年3月、福島県が「地域の守り手育成型方式」の試行を始めた。非常に素晴らしいことだと思うので紹介する。福島県入札監視課のオープンメモを以下に紹介する。

  <地域の守り手育成型方式>とは?
 1)県が発注する建設工事において、“地域の守り手”企業の健全経営の継続や振興を図り、今後も継続的に地域の安全・安心の確保を担えるようにすることを目的とする。
 2)種別は、3千万円未満の一般土木工事、舗装工事、建築工事、電気設備工事、暖冷房衛生設備工事
 3)対象工事は、総合評価方式(地域密着型)に該当する工事のうち、発注者が認める工事
 4)指名基準は、<資格要件>と<選考基準>が示されている。資格要件で注目すべきは、「過去3年度以内に国・県・市町村いずれかの指示に基づく災害時出動実績があるまたは国・県・市町村いずれかと災害応援協定を締結している」、と書かれている。つまり、地域に対して貢献しているかどうかが問われているのである。

 そもそも1990年頃まで広く一般的に行われてきた指名競争入札制度。これが一般競争入札に何故変わっていったのか。第1の原因は談合問題(官製談合も)、第2の問題は○○議員等の介入、第3の原因は手続きの公明性、であろうと私は考える。色々な意味で指名競争入札の発注手続きは簡単である。1995年に福岡県庁に出向した際、福岡県に新たな入札制度を導入するために様々な検討を契約担当課と始めた。600億の空港連絡橋建設事業(と九州歯科大学建築工事)をスムーズに動かすためである。当時は、単体かJV結成(JV結成のメリットの説明)か、施工実績をどう問うか(求めるか)、技術者資格と経験をどう問うか、といった具合である。大規模な橋梁建設事業や建築工事はある程度の足枷が必要だと考えた。その後、阪神高速道路㈱では総合評価型の技術提案型や高度技術提案型、設計施工一括型、等の試行を繰
り返し行い、洗練させていかれたように記憶している。

〇地域密着に関する裏話
 福島県の新たな指名競争入札制度の試行と指名基準に関連する裏話を紹介する。2004年の豪雨災害を皆さん覚えていますか。この年、日本の至る所で豪雨災害が発生した。本四鳴門の橋梁課長時代である。神戸淡路鳴門自動車道は、淡路島島内でのり面崩壊等の大災害を被った。当然のことながら国道28号も至る所で被災し寸断されていた。この時に大きな力になったのが淡路島島内の地元建設業者(と重機)であった。のり面崩壊により、崩れた土砂に覆われた自動車道本線や室津PA(上り線)の応急復旧工事等に獅子奮迅の活躍であった。

 しかし、その後の本復旧工事には何と誰(貢献した業者)も指名されなかった。何故、こんな理不尽なことになるのか。どこの道路会社もメンテナンス(補修)やエンジニア(点検)の子会社を作っている。24時間体制の維持管理を求められている道路会社である。緊急工事等に即応出来るように協定により保守管理事業を子会社に委託している。これらの子会社が機能するもしないもその下の協力会社の存在如何による。協力会社が協力してくれなければ子会社は仕事が出来ない仕組みである。

 10年後、しまなみ海道今治の副所長に着任した際、島内の建設業者、ガソリンスタンド等に災害協定にサインしてもらうようにお願いに回った。皆さん、快く引き受けて下さった記憶がある。普段から付き合いしている(仕事をあげるではなく、していただいている)会社には優先的に仕事をしてもらう、その結果、その会社に優秀な社員が就職する、仕事の範囲や技術力が向上する、税金が地元に落ちる、といったような好循環に繋がると私は思う。要件的に高度な技術力を必要としない業務や工事にオール日本のような企業が応札し、受注してどうなるのか。中国企業ではないが、安価で入札し、現場仕事は中国人を雇い、仕事が終わったらさっさと引き上げる。トラブルがあっても知らん顔。後には毛一本も残っていない。

 以前のジャーナル記事にも書いたのだが、コンサル業務も中国案件と同じではないのか。阪神高速時代、某協会のご一行が本社に陳情に来られた。業者の技術力を評価して欲しい(総合評価型試行においてお金と技術提案の比率を変えて欲しい)と。中小のコンサルタントに技術提案を書くだけのポスト(ポジション)は無い。大手コンサルの場合、技術提案のみを書く部署がある。実力も経験もないのに機械的に提案を書いている会社も知っている。こんな会社が地方の案件に参加してもらいたくない。地元に根を生
やした企業に是非とも参加してもらいたい。福島県に追随する地方自治体さんに期待しています。

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