道路構造物ジャーナルNET

㊳小規模吊橋雑感(その2)

現場力=技術力(技術者とは何だ!)

株式会社日本インシーク
技術本部 技師長

角 和夫 氏

公開日:2022.11.01

(2)小規模吊橋雑感(その2)

 小規模吊橋の調査・診断・補修設計を当社の柱の一つとしてスタートして約3年。これまでに和歌山県白浜町の3橋(葛原橋・里谷橋・小房橋)、奈良県の2橋(大台ケ原)についての詳細調査・診断・補修設計業務が完了。十津川村の1橋(谷瀬大橋)については補修設計業務が完了。引き続き、十津川村の吊橋8橋については詳細調査・診断業務を実施中である。また、白浜町の3橋及び十津川村の1橋については、補修工事に着手されたようである。今回は、小規模吊橋の他県の状況を探るために大井川鐡道沿いの小規模吊橋を探索してきたので紹介する。

①塩郷の吊橋(写真‐3参照)
 県道77号、大井川を跨ぎ、さらに大井川鐡道の上空に架かる人気の人道吊橋である。
  ・所在地   静岡県榛原郡川根本町
  ・建設年   1932年11月
  ・全長    220.4m
 大井川沿いの吊橋に共通することはいずれの橋も観光資源となっていることである。訪問した際は台風15号による豪雨災害で大井川鐡道は不通となっていた。この吊橋の直下を大井川
鐡道のSLやきかんしゃトーマスが通過する。これがより一層観光の起爆剤となっている。
吊橋自体は、主索・吊索・耐風索等は交換されており、さらに敷索、横桁等も更新されている。
 観光資源でもあり十分なメンテナンスが施されている素晴らしい橋である。因みに、大井川に架かる吊橋としては最長である。


写真‐3 塩郷の吊橋

②両国吊橋(写真‐4参照)
 大井川、大井川鐡道井川線上空に架かる吊橋である。
 ・所在地   静岡県榛原郡川根本町千頭
 ・建設年   1988年7月
 ・形式    単径間無補剛吊橋
 ・全長    145m


写真-4 両国吊橋

 大井川沿いの吊橋に共通することはいずれの橋も観光資源となっていることである。耐風策
が機能しており、揺れは無かった。主索等ケーブル類は何れも良好である。木製床板は、平成
17年の電力交付金(電源立地地域対策交付金)で取換え工事が実施されており健全であった。

③南アルプス接岨(せっそ)大吊橋(写真‐5参照)
 大井川上空(接岨湖)に架かる吊り橋である。
 ・所在地   静岡県榛原郡川根本町犬間~梅地
 ・建設年   2000年3月
 ・形式    3径間2ヒンジ補剛桁(鋼管)吊橋
 ・全長    240m(50m+160m+30m)  RC主塔高は、右岸(22m)左岸(16.4m)

 塩郷の吊橋から30㎞北上すると接岨湖(長島ダム湖)に架かる本橋が登場する。事業主体
が中部地建(当時)ようなので理解した。ダム湖建設による旧道の機能復旧でこういう橋が作
られたのであろう。当日(平日)は、だだっ広い駐車場に車が2台だけであった。休日はこんなことはないだろうと願うばかりである。この橋を渡ると「八橋小道(やっぱしこみち)」が整備され周遊コースとなっているようである。こういう補剛吊橋には最近興味が無いので当然のことながら対岸までは渡らなかった。維持管理に関しては、何も問題が無いようである。お金を湯水の如く使えた良き時代の吊橋だなという印象である。多くの人が通るから揺れないよう補剛桁構造にしたのか、耐風索が張れないから補剛桁にしたのか、よく理解できない吊橋である。

④奥大井レインボーブリッジ(写真‐6参照)
 吊橋ではないが一番印象に残った橋なので紹介する。接岨湖(長島ダム湖)上に架かる南
アルプスあぷとライン(井川線)のトラス橋である。
 ・所在地   静岡県榛原郡川根本町梅地
 ・建設年   1990年開通
 ・形式     (4+2)径間連続上路式ワーレントラス橋
 ・全長     不詳

 奥大井レインボーブリッジは、大井川鐡道きっての観光資源である。首都高速11号線の東
京港連絡橋(通称;レインボーブリッジ)より開通は早かったが知名度の低さでレインボーブリッジの名を譲ったという裏話がある。皆さんも一度は訪れて下さい。感激間違いなしです。

(3)最後に

 今回は、最近の話題として①ローラー沓の損傷、②新たな指名競争入札方式の試行、について紹介した。

 次に、小規模吊橋雑感(その2)として、静岡県大井川及び大井川鐡道沿線の小規模吊橋を数橋探索したのでこれを紹介した。これまで3年間調査を行ってきた近畿、特に和歌山、奈良、京都の小規模吊橋と比較して大井川に架かる吊橋は何が違うのか。近畿の吊橋の状態を悪くしている要因は何か。違いあるいは要因は3つ。①大井川の吊橋は積極的に観光資源に活用している②生活橋であり利用者が多い③越すに越されぬ大井川。

 ①については、両側(片側)に駐車場を整備し、構造部材含め錆等が殆ど見られない、つまり、不安感を与えないようにメンテされている。また、塩郷の吊橋では募金箱が設置されていた。②については、集落と集落を結ぶイメージで利用者が多い。③については、江戸時代の関所ではないが大井川を渡ることの難しさを分かっているからこそ地元民が吊橋を大事に使うし、管理者がきちっと維持管理をしている、のであろう。

 奈良、和歌山の小規模吊橋が維持管理に手を抜いているわけではない。人口減少に伴う利用者減により補修優先度が落ちているのである。利用者が少ないから健全度判定ⅢないしはⅣの橋は通行止めという処置をせざるを得ないのである。私たちの使命は、目視点検で健全度判定ⅢもしくはⅣと判定された吊橋をいきなり架換えするのではなく、詳細調査・診断を実施し、健全度評価を行い、実態に合った補修・補強等を提案することである。(次回は12月1日に掲載予定です)

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