道路構造物ジャーナルNET

㊲定期点検の意義

現場力=技術力(技術者とは何だ!)

株式会社日本インシーク
技術本部 技師長

角 和夫 氏

公開日:2022.10.01

(3)定期点検の評価と改善

 道路管理者の義務の明確化で5年に1度の定期点検がスタートした。国道・市町村道を含めて一括本省に定期点検結果が集約されることとなった。独自の基準で点検や補修を実施している高速道路会社の高速国道や自専道は別として、例えば、県道や市町村道ではどうなっているのか。例として、自治体さんやコンサルタントさんから相談を受けた事例を参考に紹介する。併せて、今後改善すべき点も紹介する。

①高速道路下のボックスカルバート
 自治体が管理する高速道路下のボックスカルバート(車道)の変状である。ボックス軸方向、直角方向に多数ひび割れが発生している。点検要領からすればRC構造物のひび割れ幅の大小でランク付けをすることになる。点検者(あるいは点検・診断員)は、点検結果を野帳やデジタルカメラに残し、帰社後、原因究明や診断、健全度判定を行う。クラックの発生原因について相談を受けるのは点検中や診断中である。医療現場ではセカンドオピニオンという言葉がある。私も確度を高めるために、別の専門家(大手ゼネコンK社)に所見を求めることがある。ここまでして回答する。しかし、コンサルタントの中には点検要領の判定通りで、しっかりとした原因究明、診断及び判定が出来ていないところも多々見受けられる。受注者側のレベルアップは必須であるが、発注者側(管理者側)もそれ以上にスキルアップが必要である。

②歩道吊橋
 自治体さんの中には管理する橋梁の「長期修繕計画」を公表されているところがある。定期点検結果と診断、健全度判定をもとに、使用実態や代替えルートの有無等を加味して総合的に判定されている。限られた予算の中で非常に努力されており、感心するばかりである。しかし、一様に吊橋主索の評価が悪く、ほとんどの吊橋でⅢあるいはⅣ判定となっている。Ⅳ判定は架け換えであるが、Ⅲ判定は次回の定期点検までに何らかの補修が必須である。こうなってくると、Ⅱ判定はどういう状態なのか、と個々の吊橋主索の状態を見たくなる。定期点検結果や健全度判定通り、主索が本当に悪いのか。HPで公表されている吊橋も含め近畿各地に架けられている小規模吊橋について自らの足で調査・診断を進めているところである(約3年間)。この中には診断業務を実施した吊橋も10数橋あるが、見た目ほど主索の状態(残存耐力含めて)は悪くないというのが正直なところである。こういう判定をしている原因は、吊橋、特に主索等のケーブル部材の変状判定を鋼構造物(鋼板)と同様、錆や腐食面積(量)で判断しているからである。
 吊橋主索は、吊橋にとってのFCM部材※1)である。より安全側に評価すべきなのは当然であるが、使用実態や損傷状態(定性的ではなく、定量的な評価を)に応じて適切に評価すべきであると私は考える。ワイヤーロープ構成、亜鉛めっきの有無、非破壊検査による腐食断面積の評価、残存耐力評価等、必要十分な調査・検討を行った上で最終判定すべきと考えている。
 ※1)FCM部材;崩壊危険部材(Fracture Critical Member)、 引張力を受ける部材が破断することにより、その橋梁が崩壊もしくは橋梁としての機能を失う場合、その部材を崩壊危険部材(FCM)と定義する。「リダンダンシー評価ガイドライン(案)」 土木学会 鋼構造委員会(H26.6)より引用

③改善すべき点~その1~
  国は老朽化対策の具体的な取り組みとして、「メンテナンスサイクルを持続的に回す仕組みを構築」するとした。つまり、「予算、体制、技術、国民の理解・協働」の4つである。この中の「技術」の一つとして、点検・診断の知識・技能・実務経験を有する技術者確保のための資格制度の充実を挙げている。現状と将来の人材不足と人材確保のためとはいうもののあまりにも増え過ぎた民間資格の弊害はないのか。道路構造物等の保有資産の増大と老朽化橋梁の維持管理という問題を点検・診断資格者の増でカバー出来ると考えたのか。点検・診断技術者と行政側(技術者?)の融合を考えたのであろうが。ペーパードライバーを増やすのが解決策ではなく、文字通り、知識・技能・実務経験を豊富に積んだスペシャリスト(技術者)を養成すべきでないのか。

「久しぶりの裏話」
  以前勤めていた高速道路会社の子会社での話。「点検と工事」を担う会社ということで入社した。入社後まもなくして、「この会社は定期点検まで丸投げしているのか?何のために点検の組織があるのか」と経営層に言った。「協力会社(の点検員)は、要領に則って計測した数値や写真等をもとに一次判定を実施。その結果をもとに当社社員(と協力会社社員との会議で)が二次判定をします」と言う。「技術」という名を冠する会社なら自分で現場に行って、自分で点検・診断をし、業務を完結するだけの技術者を養成しないと将来きついですよ」と進言した。「これは親会社と子会社で決めていることなので出来ないんです」、と言う。この「四捨五入理論」は、「協力会社が付いてこないと仕事が出来ないという「高速道路会社の子会社」理論であり、全国共通の問題である。寂しい限りである。

④改善すべき点~その2~
 吊橋主索(ストランドロープ等)には詳細調査が必須である。一般的に言う「非破壊検査」である。
その橋の規模や重要度、補修・補強の難易度、架け換え費用の大小等を判断する上で非破壊検査の実施は必須である。さらに、点検時のアプローチ手法である。山間部に建設された小規模吊橋では点検車は使用出来ない。そこで「特殊高所技術」の出番である。必要に応じて点検・診断資格や工事資格を保有する方にぶら下がって頂いている。私が40歳若ければ「特殊高所技術者資格」に挑戦するのであるが(連載記事作成中に64歳を迎えました)歳をとり過ぎた。

(4)最後に

 建設後50年を迎えようとしている橋梁が2025年時点で全体の42%(30万橋)にも達する。このため、法令を改正し5年に1度の定期点検を義務化した。所謂、点検、診断、措置、記録の実施である。点検・診断の結果に基づき計画的に修繕を実施し、必要な修繕が出来ない場合は通行規制・通行止めを行うこと、としている。小規模吊橋の診断業務で現地調査をしている際に地元住民に声を掛けられることが度々ある。「この橋を早く使えるようにして欲しい」と。「点検・診断」による健全度判定でⅢもしくはⅣ判定を下した橋である。健全度判定はコンサルタント等が実施した定期点検結果と判定がベースとなっている。小規模吊橋の健全度判定は安易に行うべきではない。一般の橋は国交省の判定基準が目安になるわけだが、小規模吊橋には向かないと考える。主索にストランドロープ(やPWS)を使用している小規模吊橋では何周期目かの定期点検時に非破壊検査を行うのも一つの手法である。

 最後に、9月中旬に実施した小規模吊橋の形状計測(3D測量)においてドローンを活用した(写真‐5参照)。中央支間長200m弱の本橋含め8橋の診断業務を実施中であるが、山間部でかつ変形量の大きい小規模吊橋の形状測量ではドローンは欠かせない機材となっている。


写真-5 ダム湖上の小規模吊橋の3D測量(ドローンの活用)

(次回は11月1日に掲載予定です)

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