道路構造物ジャーナルNET

第33回 鋼構造物の防食(その3)について

現場力=技術力(技術者とは何だ!)

株式会社日本インシーク
技術本部 技師長

角 和夫 氏

公開日:2022.06.01

(1)はじめに~最近の話題~

 昨年末、海外で計画されている歩行者専用斜張橋の設計について技術支援を依頼された。技術提案の中には、ガラスの床構造もあった。ガラス床だからといって退けるのではなく、前向きに調査・検討をすることにした。
 ガラスを使用した床構造といえば、大鳴門橋遊歩道「渦の道」(写真-1参照)や明石海峡大橋の「舞子プロムナード」(写真-2参照)が浮かんでくる。写真-1に示す通り、3層構造の床ガラスに人が乗ってもびくともしない。何れの施設も強化合わせガラス2層(t=10,12㎜)、フロートガラス1層(t=6㎜)の3層構造を採用している。


写真-1 大鳴門橋遊歩道「渦の道」/写真-2 明石海峡大橋舞子プロムナード(2枚とも著者撮影)

 ここで世界に目を向けてみることにする。中国では数多くのガラス床構造の歩行者専用吊橋(以下、「ガラス吊橋」という)が建設されている。最近では、ベトナムに世界最長のガラス吊橋が完成した。以下に「ガラス吊橋」関連の情報を紹介する。

①世界最長のガラス吊橋が完成
 2022年4月29日、世界最長のガラス吊橋(「通称;バクロン(白竜)」)が開通した。場所は、ベトナム北西部ソンラ州モクチャウ県でジャングルが生い茂る谷から150m上に架けられている。全長632m、無補剛吊橋で、床面にはフランス製の強化ガラスが使用されており、一度に渡れるのは450人。近々、ギネス世界記録の認定審査を受ける予定とのこと。この橋が開通するまでの世界第1位は、中国広東省にある全長526mの歩道吊橋であった。

②歩行者専用吊橋の床ガラスが落下
 中国吉林省で2021年5月7日、ガラス吊橋(長さ400m、地上からの高さ100m以上) の床ガラスが落下した。強風により床ガラスが剥がれて落下したものである。

③歩行者が通ると床ガラスにひびが入る奇抜なガラスの通路
 中国北部の東太行山の断崖絶壁(高さ1,180m)に設置された全長266mのガラス通路。歩行者が通るとガラスの「床にひび割れが入る(エフェクト効果)」というもの。

 中国では、ガラス吊橋(や通路)が観光スポットになっているようだ。②のような事故が起きているにもかかわらず、である。好奇心旺盛なのであろう。
 新入社員の頃、大鳴門橋ケーブル架設用の足場(通称;キャッツウォーク)を現場監督の度に歩いていた。幸いなことに生れつき高所恐怖症ではないので事無きは得たが。
 海上からのキャッツウォークまでの高さは、主塔付近で140m、支間中央部で60mほど。床面構造(図-1参照)は、溶接金網(50×75メッシュ)1層、合繊ネット2層であり、物の落下の危険性はないのだが、鳴門の渦潮ははっきり見える。来客案内では結構悲鳴を聞いて楽しんだ記憶がある。


図-1 大鳴門橋キャッツウォーク床組構造

「ガラスは割れる」とか、「ひび割れが入れば落ちる」といった先入観は捨てるべきであるが、果たしてそういう構造を作っていいものかどうか、皆さんはどう思いますか?
 今回は、鋼構造物の防食(その3)と題して、無機形塗料と出会ってからの15年を振り返って記述する。

(2)無機形塗料との出会い

 2006年、阪神高速道路本社の技術開発グループで補佐をしていた頃である。無機質コーティング協会の平良会長と話す機会があった。これまでの有機系塗料への失望と新たな塗料への期待から長時間の話となった。
 無機形塗料を開発するきっかけとなったのは「中学生のシンナー中毒」が社会問題化していたから。世の中からシンナー(有機溶剤)をなくせないか、模索していた時に無機形塗料に出会った、ということだった。前号にも書いたが、当時は無機系塗料への逆風もかなりあったように思う。日本の弱小球団(阪神?)がメジャーリーグ(ヤンキース)に挑戦するようなものである。

(3)いざ神戸へ、そして試験施工本格的実施へ

 本社では各種技術開発、設計・施工審査、長大橋の耐震補強設計や各種基準の策定を行っていた。「東神戸大橋の耐震補強」をするために神戸に行く、ということにして神戸(調査設計課長)に異動させてもらった。実は、興味を持った「無機形塗料」を試してみたかったのである。
 当時の業界紙に次のような文章を寄稿した。
「阪神高速道路は、3号神戸線内の腐食環境が厳しい鋼桁端部、支承部などの防食に環境適合型の無機形塗料を試験採用した。従来の塗装と同等以上の防食能力を持ち、紫外線劣化を起こしにくく、施工工程も短縮でき、コスト縮減も可能」
 当時は、ガードレールや標識柱などの道路付属物(亜鉛メッキ面用)では多くの実績があったが、鋼桁端部や橋梁付属物への本格試験施工は初めてであった。当時、私が描いたシナリオは、建設時の塗装系にいきなり無機形塗料を入れるのではなく、塗替え塗装のサイクルを少しでも長くするために行う局部補修塗装に取り敢えず使用することであった。

(4)コツコツと現場で

 阪神高速道路の管理延長は260km弱(2015年時点)。鋼構造、コンクリート構造、橋梁付属物や照明柱及び標識柱などメンテ部材は数知れず存在する。
 無機形塗料が本格的に世の中に登場したのは2000年初期。桁端部、標識柱・ガードレール(亜鉛メッキ劣化部)、伸縮装置からの漏水で腐食した支承及び鋼製橋脚の補修塗装に省工程の無機形塗料を積極的に採用した。
 高速道路上で目立つ標識柱の塗替えは、従来仕様ではスイープブラストが必須であったが、無機形塗料では4種ケレン程度の簡単な素地調整で塗替え可能である(写真-3参照)。


写真-3 ガードレールや標識柱の塗装

 また、高速道路や一般道の鋼桁下面によく見られる塗膜の層間剥離。剥離した塗膜が風にたなびいたり、路下に落下しているのは非常にみっともないものである。これらの橋梁の多くは工場塗装と現場塗装の間隔があいてもいいようにフェノール樹脂MIO塗料中塗り(工場塗装)を挟んでいる。工場塗装の最終層であるMIO塗膜面が良好な状態で管理されていればいいのだが、ほとんどの現場で養生不十分となっている(運搬時や架設時)。現場塗装(中塗り以降)時にMIO面に付着した塩分や塵埃を除去していればかなり違う。
 このような塗膜剥離を起こした鋼箱桁橋の塗替え事例を写真-4に、支承の塗替え事例を写真-5に示す。


写真-4.1 塩化ゴム系仕様におけるMIO塗膜面からの剥離(3号神戸線武庫川橋)

写真-4.2 無機形塗料(#7000)施工中/写真-4.3 無機形塗料(#7000)施工後

写真-5 支承の塗装塗替塗装事例

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