道路構造物ジャーナルNET

シリーズ「コンクリート構造物の品質確保物語」㊸

進化するコンクリート用化学混和剤! ー運搬の長時間化に対応する化学混和剤ー

国際企業株式会社 
広島営業所 課長

筒井 達也

公開日:2021.03.08

3. スランプの長時間保持機能を持つ化学混和剤の活用事例

 ここでスランプ長時間保持機能を活用することによって打設可となった活用事例を紹介する。使用した混和剤には上述したGSPと同様の効果を持つ別添加タイプ(以下KSPと称す)を採用した。使用現場は国土交通省管轄の洋上ケーソン打設現場であり、約20m3のフレッシュコンクリートをバケットホッパー(1m3×20個)に移し、台船で沖まで移送し、同日中に打設を完了する計画(フレッシュコンクリート出荷から現場荷卸までの所要時間は約2時間)であった。

 土木配合による夏期打設ではスランプロスが発生し、バケットホッパーの閉塞を引き起こす可能性が生じ、汎用のAE減水剤では打設が困難になることが予測された。この条件下での打設を可能にするにあたりKSPを採用したところ、夏期の厳しい環境下にも関わらず、フレッシュコンクリートの性状は、2時間後のスランプロスが2cm程度と良好な状態を保持し、無事打設を完了した。現場の様子を写真1、配合データを表1.1、試験結果を表1.2に示す。


4. コンクリート化学混和剤使用による生産性向上ならびに働き方改善

 化学混和剤は現場のニーズを受け日々進歩を続けており、本稿で紹介したスランプを長時間保持する機能は、まさに現場の声が反映されて開発されたものである。 現場でのスランプロスは、物質的なロス(生コン廃棄)に加え、現場トラブルによるポンプ打設の中断、打設計画の滞りによる工期の遅れ等を引き起こし、現場作業員や技術者に精神的な負担を強いる。一方、スランプ保持型混和剤を活用すると、季節ごとに変化する温度の影響を受けず年間を通じて、生コン工場出荷時のスランプ値を約2時間程度保持することが可能となる。
 このように、化学混和剤の活用は、フレッシュコンクリートの生産性向上だけでなく、数値化されず目に見えないが確実に発生する現場作業員の心理的負担軽減にもつながっている。コンクリートの品質確保においては技術の発展だけでなく、打設現場での人の判断能力、人の手作業が大きく影響するものであり、化学混和剤の使用はその双方に大いに寄与するものである。

5.コンクリート用化学混和剤のさらなる活用に向けた環境整備

 周知のとおり打設現場での化学混和剤の活用には各規準が適用され、現時点では全ての現場に適した化学混和剤を使用できる環境はまだ整っていない。個々の現場での都度々々の対応では手間が生じスピード感がなく、抜本的な展開は期待できない。日本建築学会は「暑中コンクリートの施工指針・同解説」を2019年7月に改定、酷暑期を新たに定義し、コンクリート温度が38℃までの範囲では適切な対応を取れば使用可能となった。同改定において高性能AE減水剤の遅延形について記載(暑中期におけるスランプ保持性能、コールドジョイント抑制性能)され、化学混和剤の有効性が示された。

 スランプ保持性能についても、土木・建築両学会による現行基準・JIS規格の改定(荷卸90分を120~150分に延長)の必要性を実感している。また、運搬時間の延長が認められれば、これに伴い打ち重ね時間延長も可能になる。性状が確保された状態でのコンクリートの打設作業はコールドジョイントの発生リスクを低減できることから、コンクリート構造物の品質確保の一助となる。運搬時間ならびに打ち重ね時間の延長は超保持型高機能タイプ混和剤を使用することにより可能になる技術であるため、同混和剤使用促進に向けて積極的なルール改定が成される事を期待したい。
 ただし、同混和剤はJISA6204においてAE減水剤に分類されているが、運搬・打ち重ね時間延長は同区分の混和剤全体が有する性能ではない。ルール改定においては既存のAE減水剤との分類についても再度考慮し、新たにどのように分類すべきかといった議論を促したい。

6.まとめ

 生コン生産者にとって究極の理想のフレッシュコンクリートは年間を通じてどのような気候でも工場出荷時に確認したフレッシュ性状が規定時間内で「同じ状態で現場に届く」ことである。
 しかしながら、生コンクリート工場の集約化の促進が見込まれる状況下、コンクリートを練り混ぜてから打設が終わるまでの土木・建築両学会の基準を満足することが出来ない地域が郡部を中心に年々増えることが現実味を帯びてきた。筆者が実際に携わってきた山間部の災害復旧など、長距離・長時間を要する現場は依然として多くあるにもかかわらず、生コンクリート工場は集約化され、規定時間内での打設が厳しくなってきていることを実感している。
 どのような地域にもコンクリートが必要な現場は必ずあり、必要とされるコンクリートはいずれも統一したルールの下で品質確保されるべきである。スランプ保持型の化学混和剤は、このような問題を解決する一つの優れた手段である。ただし、現場のニーズに応え、優れた技術を有した化学混和剤が開発されても、使用できる環境が整っていなければ、全く無意味である。化学混和剤はコンクリートの配合計算において最も量の少ない材料ではあるものの、フレッシュコンクリートの性状確保ならびにコンクリートの品質確保、さらに現場の生産性向上において重要な役割を担っている。これからのコンクリート打設の合理化を図るうえで、全国の施工工事などで、その有効性を確認し、今後業界全体でのルール改定が進むことを期待する。 

参考文献
1) 田村隆弘,筒井達也:コンクリート用混和材料に関するアンケート調査から見る認知度,使用実績,今後の混和材料への期待,コンクリートよろず研究会テキスト 付録1 ,2018
2) 小泉信一,作榮二郎:流動性を長時間保持するAE減水剤「マスターレオシュア」,セメントコンクリート,No.876,pp.8~13,2020.2

(2021年3月8日掲載)

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