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15年間スケーリングを抑制、塩化物イオン浸透抑制はなお持続

現場での15年の追跡調査を通じて見えてきたシラン系表面含浸工法の中長期的効果

国立研究開発法人土木研究所 
寒地土木研究所 耐寒材料チーム
主任研究員  

遠藤 裕丈 氏

公開日:2021.02.09

■15年の追跡調査で見えたこと

 製品によって傾向は異なりますが、厳しい環境下にある美幌橋の地覆コンクリートの車線側側面における、シランを塗布した部位と無塗布部位の15年間の経年変化の推移を比較整理すると、図-6のようになります。
 無塗布区間もしくはシランの効果が小さい区間は、供用開始後、4年目には既に車線側側面にスケーリングが顕在化しました。その後、10、15年目にかけて、スケーリングの進行は緩やかではありましたが、コンクリート深部へ塩化物イオンが多く侵入しており、将来、鋼材腐食やASRなど内部劣化の発生が懸念されます。
 一方、シランの塗布によって吸水防止層が形成され、吸水抑制効果が発揮されている区間では、供用開始から4~10年間は凍結防止剤が含まれる融雪水(以下、塩水と記す)の侵入がほとんどなく、スケーリングの進行も抑制されました。その後、15年目にかけて、紫外線の影響で表面の撥水機能は消失し、スケーリングの進行に至りましたが、吸水防止層は消失せずに残存しており、水や塩化物イオンの侵入抑制効果は15年経過した現在も持続していました。
 なお、将来、補修工法として断面補修が選択されるとしても、一般に断面補修は塩化物イオンが含まれる範囲を除去することになりますが、図-4、5で示したように、シランを塗布した場合は塩化物イオン量の浸透が少ないため、はつり深さを小さく抑えることができます。

図-6 美幌橋地覆コンクリートにおけるシランの塗布有無による経年変化の過程

■おわりに

 今回ご紹介しました美幌橋の地覆コンクリートは、とりわけ厳しい環境下に曝されていますが、適切な製品を選定、施工することにより、塩水の侵入抑制効果は少なくとも15年以上は続くことがわかりました。
 一方、高い吸水抑制効果を発揮する製品を塗布した区間では、図-6でも示したように、10~15年目にかけて車線側側面と天端面にスケーリングが確認されました。スケーリングは、再塗布を繰り返すことで抑制されることが実験で確認されているので[1]、スケーリングを重視する場合は、再塗布を行うことが望ましいと言えます。
 図-7は美幌橋の地覆コンクリートをモデルに、初年度は地覆全面に塗布し、以降、10年おきに車線側側面と天端面に再塗布を行った場合の純工事費(管理費、経費を含まない)を試算したものです。外側側面は、写真-5の結果をふまえ、再塗布の対象から除外しました。シランの材工費は、北海道開発局のホームページに公開されている資材価格調査による単価を適用しました。この図に示すように、無塗布の部材を100年に1回打換える場合に比べると、部材のライフサイクルコストの減少、部材の維持費の平準化が図れる試算結果となりました。

図-7 スケーリングを重視する場合の純工事費の比較

 なお、将来、補修工法として断面補修が選択されるとしても、前述したように、シランを塗布した場合ははつり深さを小さく抑えることができることから、補修費の縮減に繋がることも期待されます。  現在、追跡調査は、美幌橋以外の道路橋でも行っています。写真-7は、塗布から16年を経た別の道路橋の一例です。この橋は直線橋で、路面水が地覆周りに集中的に滞留しにくい構造になっています。シラン塗布区間は、表面に小さなあばたはみられますが、外観はほぼ健全で、顕著なスケーリングは見受けられません。この写真は雨上がり時に撮影したもので、塗布区間をみますと、吸水が抑制されていることもあり、乾きも早いことも見てとれます。

写真-7 シランを塗布して16年が経過した北海道内の別の道路橋の様子

 今後も引き続き、各地での追跡調査を続け、この工法がもたらすコンクリート部材の保護効果をさらに検証するとともに、美幌橋で得た知見をふまえて、スケーリングの抑制と遮水・遮塩の双方の効果の長期持続の実現に向けて、撥水機能が持続しやすい製品を使用した検討も行う予定です。

参考文献
[1] 遠藤裕丈,田口史雄,宮本修司,村中智幸,後藤浩之,林大介,坂田昇,名和豊春:シラン系表面含浸材による寒地コンクリート構造物の耐久性向上効果,土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造),Vol.67,No.1,pp.69-88,2011.2

(2021年2月9日掲載)

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