道路構造物ジャーナルNET

15年間スケーリングを抑制、塩化物イオン浸透抑制はなお持続

現場での15年の追跡調査を通じて見えてきたシラン系表面含浸工法の中長期的効果

国立研究開発法人土木研究所 
寒地土木研究所 耐寒材料チーム
主任研究員  

遠藤 裕丈 氏

公開日:2021.02.09

■はじめに

 寒冷地では冬期間、車両の走行安全を確保するため、凍結防止剤が散布されています。このため、凍結融解と凍結防止剤の複合作用によって、コンクリートの耐久性が損なわれないよう、対策を講じる必要があります。その対策工の一つに、コンクリートへ水や塩化物イオンが侵入しないよう、コンクリート表層に吸水抑制機能を付与するシラン系表面含浸材【】(以下、シランと記します)があります。

 一方、実際の寒冷環境下でのシラン系表面含浸材の効果の持続性に関しては、検証データが少ないところです。そこで、北海道内の道路橋の地覆コンクリートにシランの試験施工を実施し、追跡調査を行っています。本稿では、その一例として、塗布から約15年が経過した美幌橋の地覆コンクリートでの調査結果について紹介します。

■調査箇所

 美幌橋は、昭和37年に架設された橋長73.5mの鋼桁橋です。この橋は、4%の横断勾配を持つ曲線橋で、写真-1に示すように、雨天時は地覆コンクリートへ水が集まりやすい路面となっています。2018年の年間最低気温は-23℃で、冬期は凍結防止剤も散布されており、地覆コンクリートは非常に苛酷な環境に曝されています。

写真-1 雨天時の美幌橋の路面の様子

■シランの塗布

 シランは、2004年10月に打ち換えられた地覆コンクリートへ塗布しました。地覆コンクリートの水結合材比は51.4%で、普通ポルトランドセメントが使用されています。試験施工では、表-1に示すNo.1、2、3、4、5の5種類のシランを使用しました。

表-1 試験施工で用いたシラン

 図-1は試験施工を行った部位、写真-2はシランの塗布状況を示しています。試験施工は、車線側側面と天端面および外側側面の3面で実施しました。施工は、1製品あたりの延長を4mとし、製品ではなく工法として評価する理由から統一の仕様を設けず、各メーカーの担当者に、それぞれの独自仕様に基づいて行っていただきました。

図-1 試験施工を行った部位/写真-2 シランの塗布状況

■調査内容

 ここでは、塗布後15年目のスケーリングの発生状況、吸水防止層の状態、塩化物イオンの浸透状況について調査を行いました。

(1)スケーリングの発生状況
 車線側側面と天端面において、当初の残存表面を基準とし、スケーリングによる欠損深さをデプスゲージで調べました。ここでは、各製品の施工延長4m区間を10cm間隔で40箇所に区分し、1箇所において1点測定する形で、1製品につき車線側側面で40点、天端面で40点測定し、その平均値で評価しました。
 外側側面の状態については、遠方目視により把握することとしました。

(2)吸水防止層の状態
 地覆コンクリートの車線側側面からコア試料を採取し(写真-3)、コアに水を噴霧し、撥水を呈した範囲を吸水防止層(塗布したシランが含浸し、疎水化した領域)と判断し、吸水防止層の厚さを計測しました。

写真-3 コアの採取状況(車線側側面)

(3)塩化物イオンの浸透状況
 写真-3に示す作業で採取したコアを使用し、車線側側面から深さ50mmの範囲を対象に、JIS A 1154の電位差滴定法に準じた塩化物イオン量の測定、ならびに、塩化物イオン濃度のEPMA分析を行い、塩化物イオンの浸透状況を調べました。

ご広告掲載についてはこちら

お問い合わせ
当サイト・弊社に関するお問い合わせ、
また更新メール登録会員のお申し込みも下記フォームよりお願い致します
お問い合わせフォーム