道路構造物ジャーナルNET

㊺協議のあり方 プログラムの使い方 

民間と行政、双方の間から見えるもの

富山市
建設技術統括監

植野 芳彦

公開日:2019.08.16

1.はじめに 

  暑い日が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか?前回「大島橋」の問題に関して、書きましたが、「もっと技術的な話かと思った。」という意見がありました。具体的にどう処理したのか?聞きたいというものですが、それは企業秘密です。それぞれ限られた条件の中でどう対処するのかは、設計者や管理者の判断で変わってくるはずです。まあ、そういうことでご容赦願いたい。しかも、実は未だにやってます。

 技術者にとっては、問題が起こったときにどういう判断でどういう処理をするかと言うのも重要なことです。個々の性格や、経験、さらには、予算や持っているツール等によって対処法も異なります。どうやって乗り切るか? が問題です。それが技術力の醍醐味であるはずです。何事もなく通常通り毎日過ごせるのが幸せなのですが、そうは行かないのも現実です。

2.大島橋問題で気付いたこと

 今回の問題で改めて考えられさせられたのは、「協議」のあり方である。官も民も「協議」を甘く見ているのではないか? 業者側からすれば、本来、発注者への確認説明と条件など決定事項の承認であるはずが、それが十分にできていないのである。本来、指示すべき側が指示できない。承認を得るはずの事項が承認という行為を飛ばして勝手に作業している状況なのだ。

 

 これは、まずい状況である。自分達の役割分担や責任を考えていない。今回の問題が修正に長時間要しているのは、そもそもの「設計方針」の部分が良くわからないからである。構造的にたいした橋ではないので、うるさいことは言わなくてもよい。しかし、構造形式、支承の配置、耐震設計モデル、入力地震動(まあこれは決まってはいる)等の協議と承認に対する認識が甘い。

 仕様書には通常業務では、打ち合わせ協議3回と書いてあるのが普通かもしれない。しかし、良く考えて欲しい、3回の打合せで重要構造物の設計がまとまるのか? これは勝手にやっているということに他ならない。中には「どうせ役所に聞いても、回答が返ってこないから」という事をいう者も居る。確かにそうかもしれない。

 さらに、「近年の設計とは、プログラムに入力することか?」と、ある先生がおっしゃっていたが、まさにそういうことである。この使用プログラムに関しても、首都高などでは認証制度があったが、少なくとも承認と言う行為は、現在でも必要であろう。設計用ソフトもそうであるが解析のプログラムなどは重要であると考える。解析にどういうプログラムを使用したのか?これが、後から必要になるかもしれない。まさに、今回の場合はそうだった。また、入力データの確認ということも重要になる。

 いつの時からか、安易にプログラムを使用するようになってしまった。私自身、自動設計や解析、CAD、CAMなどのソフト開発、運用にも関わってきたことがあるが、このときに感じたのは、「利用者のわがまま」である。わがままと言うのは、利用者から、「こんなものも出来ないのか?」とか「自由度がない」とか様々なことを言われた。

 プログラムを使っていながら、プログラムをけなす方々が多い。「使い物にならない」とけなす。プログラムとはまず道具である。馬鹿とハサミは使いようであるので、人間のほうの自由度をもっと発揮すればよい。しかし、そういう人たちに限って自由度がないのである。なんでもかんでもプログラムにやらせようとすると、膨大な開発費が必要となる。そこで妥協点を見つけ、人が判断したほうがよいようなところは機能制限を設けるのだが、意外と理解されない。ましてや、他人が作ったものを安易に信じて使っている。これは本来信じられない。検証が必要であろう。そういう意味ででは、良く利用されているプログラムというものは、それなりに世の中が検証していることになる。現在、さまざまな分野で「AI」と言うことが脚光を浴びているが、果たしてどの程度の機能制限を持っていくのか? で、大きくコストも変わってくる。

 また、「プログラムがうまく動かない。このプログラム、おかしいのではないか?」という、おしかりを受け、データを送ってもらい精査すると、なかなか原因が分からず、結局、データそのものが間違っていたと言うのが多く、9割くらいはデータミスであった。コンピュータは、機械なので正直であり、1カラムでも1桁でも違っていれば動かない。「このプログラム、使い物にならない。」と罵声を浴びせかける方々も多かったが、結局、標準設計を廃止したときと同じで、思うようにならないと相手のせいにするという単純な人間性の話である。

 こういう方々は、技術者としての粘り強さにかけるところがあり、あまり向いていない。使えもしないので開発は無理。そもそも、道具を使うことも出来ないのだ。プログラムは信じ過ぎても、いけないし、信じなくてもいけない。自分の目的に合わせて、どういうプログラムを使って、どう回答を得ていくのかいくか決定するのも重要だ。あなたが民間の方ならば、監督職員の承認をとるのも重要だし、発注者ならば協議で確認していくことが重要なのだ。


ハードも目的を明確にして使うことが大事

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