1.はじめに
だいぶ涼しくなりました。9月議会で「橋梁トリアージ」についての質問が出ました。やはり皆さん、「トリアージ」と言う言葉の持つ力に反応してしまっている。それはそれで良いのだが、「富山市の橋梁トリアージ」は順番付けが目的ではない。「富山市の橋梁マネジメント基本計画」の中の一項目で、其の役割は過ぎつつある。おそらく、わが国においては、数多くの物を管理すると言うことになれていない方々が多い。作って終わり、あとはホッタラカシ。さらに、数多くの物を見ると言うことに慣れていない。多くの物を見る場合は俯瞰的に見なければならないのだが、それができていない。本来は官庁が一番持っていなければならない力である。この辺が民間とは違うはずなのだ。
今回は、施策の一つで「コンサルへの能力別発注」について記述する。これをみると、馬鹿なことをとか、当たり前だろうという意見もあるだろうが意外にできていないのが地方なのである。
2.コンサルへの能力別発注
4年半前の4月1日、富山市に赴任した。そして、周りの状況を探りながら、与えられた命題に対処すべきか考えていた。プロジェクト課題に対処するには、まずは、こちら側の戦力をまず把握しなければならない。こちら側の戦力というのは、官庁の場合、職員は当たり前だが、協力企業つまり、発注している、コンサルや建設会社のことになる。つまり、かつてのインハウスでの直営時代と異なり、現在では業者の選択が、その地域の技術力となり、街づくりから始まり新規案件、維持管理までの計画や設計施工、管理といったすべてに大きくかかわってくるのである。私の仕事はそこから、始まったわけであるが、みなこの辺が理解できていないようだ。
そして、4月11日から会検検査が入ることになった。様子を見ていると、3件ほど引っかかった。副市長から「赴任早々申し訳ないが、(建設部関連案件は)対応を頼む」と言われ、中身を聞き取るといずれも簡単な物であった。そのうち、2件は、担当者に翌日の説明で、「こういうふうに回答してみろ。そして通らなかったら、対処法を考えよう」と指示したら、それで事なきとなった。しかし、残る1件は明らかにミスであった。コンサルに中身の説明を求めると要領を得ない。実は3件ともそうなのだが、実に明快(?)な回答で「ソフトでやりました」と言う。
「ソフトとは何か?」と問うと、「協会のソフトだ」という事であった。「そうではなく、設計時の考え方を聞いているんだ」と言う話をしても、チンプンカンプンであった。設計プロセスやロジックを確認したくても全然問題にならない。まあ、それで困ったわけだが、ある手法を使って解決した。(これは企業秘密)
ここで、そのコンサルの担当者は、おそらく50歳過ぎだろうが無資格だった。設計計算の中身も説明できないで、「ソフトでやった」としか言えないのはおかしいと言うことだ。実は3件ともそうだった。それで調べてみると、富山市が発注する際の特記仕様書には、技術者の資格要件が無かった。つまり、無免許の医師に診てもらってなんとも思わない状態だったのである。土木の設計と言え、近年では責任の所在を明確にするために、業者側にも資格要件を課すのが、一般的である。
これを直そうと思い、これまで富山市が発注していた市内コンサルの各社のHPを調べたのだが、HPを見ても普通は載せているだろう「有資格者数」が載っていない。各社に各社がコンサルタント登録している「専門部門」と社内の有資格者リストを提出するように指示した。すると、回答が来たのは半年後であった。なぜか? 仕事を受注するうえで通常重要な有資格者が居ないからである。
橋(インフラ)資産運営の流れ/富山市の橋梁マネジメントにおける技術的課題
さらに、打合せや検査にも立ち会ったが、目を疑うような中身のものも有る。これで市内のコンサルタントの能力に疑問を感じた。近年、業務が高度化している。単なる測量や設計と言った部類ではない、幅の広い深い経験と思考がコンサルには求められるわけである。コンサルタントは、○○株式会社という企業全体のイメージよりも、○○さんという1技術者の資質のような物が重要となる。個人の資質がすべてに勝るのである。維持管理、点検といえども同様であり、どう見ても「手抜き」というような成果を出してきたのでは、腹も立つ。よくみなさん我慢しているな!
何よりも、土木の世界は「経験」が重要である。いくら優秀でも大学や大学院を出て数年では、そんな知見は無いはずなのである。しかし、最近見ていると、IT業界などの悪影響なのか? 自信満々な奴が居る。これは自分自身が損をしているのだがどうも気がつかないようだ。
また、こちら側(役所)の職員の思考が、「都市計画」や「まちづくり」へ向いた思考なので、非常に危うい。街づくりはそれはそれで大変なのだが、有る意味、正解は無い。しかし、橋梁の世界では、間違えれば大変なことになる。ソフトに頼った安易な設計はしないほうが良い。責任があるということがわかっていない。