1.はじめに
新年度、あけましておめでとうございます。
新しい年度に向けて、希望に燃えている方々も多いのではないだろうか? 人事異動で異動された方も多いと思う。新天地でも心機一転御活躍を期待しております。人生はどうなるか、分からない。自分でコントロールしているつもりでも、なかなか予定通りの人生は歩めない。人生は、マネジメントである。マネジメントの話をしていると、理想論や教科書的な話をされる方が多い。では、実際に事業を進めるには? うまく行かなかったら? 失敗したら? どうするのか? ということになると、答えが返ってこない。しかし、実務の世界では軌道修正をして、何とかしなければならない。これがマネジメントである。マネジメントで重要なのは、判断と決断と覚悟であると思う。
自分の人生もそうである。幸せな方は、一生同じ組織で活きられる。これはわが国においては幸せなことで、最も得策である。しかし、土木の世界で重要なのは“経験”である。しかもその中で、最も重要なのは、現場での実務経験である。これがなくて語られても真実味は薄いが、今の世の中、その薄いほうが、ありがたがられるようだ。
マネジメントで重要なのは、修正することである。これも実際にやってみなければわからない。しかし、そこが抜けている。なぜか? 実際にやっていないからである。これらを見抜く力も必要である。
2.技術力とは
若手職員からの質問で多いのが、「どうしたら技術力を付けられるか?」である。
そもそも、何を持って「技術力」と言うのか? 難しい課題である。社会一般で言われる技術力とは何か? 誰が決めるのか?
最近、よく耳にするのが、「団塊の世代の大量定年退職により技術力を有した職員が減少し、技術力が低下」ということであるが、技術力の中には、管理する技術、発注する技術など役所特有の技術も存在し、これも技術と言うならば、技術力とは、役割分担によって違ってくる。つまり、発注者と受注者側の言う技術力は違ったものである。かつて、インハウスでの直営設計施工が行われていた時代の技術力と現在のような、調達が主流の時代の技術力は違ったものであるはずである。さらに、発注者と受注者では求められる技術力は違う。それで、良いのである。
ただし、これでは、今の日本においては双方間の転職は相当困難である。ここが日本の弱点でもある。そもそも、公務員を目指した段階で、世間一般の技術力とは違った形を求めているはずであり、民間側の技術力とは異なった性質となる。しかし、事業をやる上では双方とも重要なのである。
我々、土木の世界では技術力とはなにか? “経験”である。これが答えである。それをどうつけるか?
・なるべく現場に行って実際の物を見る
・疑問に思ったら、分かっている人に聞く。できれば“師”をつくる(数人必要)
・組織内の仕事だけでなく、外部の研究会や委員会活動を行う
・受身ではなく積極的に考える。とにかく考える
これらが重要である。
かつてのように、公共事業が潤沢にある時代ではない。経験できる件数も激減している。このような中でどう経験値を積み上げるのか大変である。私の世代が、おそらく、本州四国連絡橋に実際に関わった、最後の世代である。また、橋梁の設計などを手計算で行い、手で図面を起こしてきた、最後の世代であると言われている。しかし、この技術の伝承は、無意味ではないと思う。
さらに、マネジメント系の話になると、わが国では、いまだ実際に経験した者は少ないはずである。しかし、能書きを述べる方々は多い。事業を進める上で、民間側の方々が陥るのは、実行性を考えていないことである。事業として考えていない。考えないまま、自分達は技術力があるので大丈夫だと勘違いしている場合も多い。さらに、最近は求められるものがかつてとは違っていることに気付いていない。