道路構造物ジャーナルNET

画像やレーザーを活用した橋梁点検とモニタリング手法の提案

国際航業株式会社
技術サービス本部 社会インフラ部
橋梁マネジメントグループ

伊礼 貴幸 氏

公開日:2017.07.01

はじめに

 平成25年度に道路法が改正され、翌年に橋梁を5年毎に近接目視点検することを定めた道路橋定期点検要領が制定・実施された。道路管理者は、本要領にもとづいて点検を進めているが、近接目視点検にかかる費用や人的負担が大きく、特に地方自治体で問題となっている。一方、政府は「i-construction」施策においてICT技術の土木分野への導入を進めている。本稿では、橋梁点検における問題解決のためにICT技術を導入した新たな3つの手法を紹介し、実証試験を行った結果について報告したい。

1 現状の橋梁点検の問題点

 点検は近接目視により行われることを前提としているため、コスト、品質、作業環境、関連図書の整備等の面での問題が指摘され、さらにデータをモニタリングに活用できていないことも問題視されている。ここでは点検の中でも作業ウェイトが大きい「RC床版のひび割れ点検」「危険箇所の点検」「台帳の未整備」の3項目について問題点を整理する。

(1) RC床版のひび割れ点検
〔コストや品質面での問題〕
・点検作業車や足場設置が必要なため費用が増大する
・誰が実施しても同じ点検結果が得られるような客観性が担保できていない
・点検者の技能の違いによる、ひび割れの見落としがある
・ひび割れのスケッチ図は、作成に手間取り正確度に問題がある
〔作業環境の改善〕
・上向きの姿勢を維持した点検は作業者に苦痛である
・その影響で点検の見落としや正確性が損なわれることがある
〔モニタリングデータとしての高度化〕
・点検記録の経年比較を客観的に行えない(例えば、数値化による比較など)
・点検結果を第三者が診断する場合、判断できる精度や品質が担保されていない

(2) 危険箇所の点検
・高橋脚など高所の危険箇所や足場が大掛かりになるような点検では、コスト高の抑制と安全性への配慮が重要である
・このような箇所の点検は、点検作業者と技術的判断を行う専門技術者が分業することが多く、作業指示の齟齬が生じやすく品質低下を招く

(3) 台帳の未整備
・地方自治体では、点検に必要な橋梁台帳や竣工図書が残っていないことが多い
・図書を整備するには、現場測量が必要になりコスト高になる

2 測量技術を応用した問題解決手法の提案

 弊社は、1947年より航空写真測量の技術開発を行い、空間情報を使ったコンサルタント業務に応用してきた。特に、航空写真を地図とずれなく加工する正射投影画像(オルソフォト)は、ビジュアルで分りやすいため災害調査、防災計画、インフラ計画や住民説明等に活用されている(図1 参照)。最近では、レーザー測量と写真画像を合成する3次元画像、ドローンのような新たなプラットフォームによる調査、それらのデータを活用する仮想現実(VR)、拡張現実(AR)による空間情報サービスを提供している。

 弊社は、これら空間情報サービスを前述した3項目の問題解決に適用させるため、新たな技術開発を行った。また、それらの有効性を検証するため、富山市建設部と国土交通省沼津河川国道事務所のご協力の下で実証試験を行った。
以下にその提案の概要を紹介し、次章で実証試験結果について報告する。

(1) 正射投影画像によるRC床版のひび割れ点検の合理化
 RC床版のひび割れ点検は、人間の目で確認したひび割れを床版にチョーキングし、現場で写真を撮ってスケッチしたものを持ち帰り、平面図にトレースするのが一般的である。この過程で点検作業者の人的能力や主観が介在するため、点検漏れ(チョーキングでの見落し、トレースのミス)やひび割れ形状等の判読にバラツキが生じる。したがって、点検結果の客観性が確保しにくく、過去の点検結果との比較検証や第三者が点検資料で診断することが難しい。
 そこで、正射投影技術をそのバラツキを生じさせている人的作業の工程に導入した。さらに、作業環境改善とコストダウンのために足場設置を不要にする撮影方法を開発した(写真2参照)。カメラ機材なども、誰でも操作可能な市販のものを採用した。これにより、ひび割れの状況を写真画像で客観的に捉えることが可能になり、人的ミスを防止し、さらにモニタリングデータとしての品質を確保できる。
ただし、この手法は現状の点検要領で定められる近接目視の要求仕様をすべて満足するものではない。したがって、現状では作業の効率化と点検のスクリーニング手法の将来を示唆するものになる。

(2) スマートグラス(AR)を用いたリモート点検
 橋梁点検では、点検指示と診断を行うのは豊富な知識と経験を持った専門技術者である。専門技術者が的確な診断を行うには、現地の状況や損傷の状態を正確に把握することが最も重要である。しかし、高所の作業や点検車でも近接できない部位では、ロープアクセスなどの手法を用いるため、点検は特殊な技能をもった作業者が担当することになり、診断を行う専門技術者とは分業せざるを得ない。

 この場合、点検作業者から専門技術者に点検部位の正確な状況をタイムリーに伝えることができなければ、的確な診断に供する情報を取得できないだけでなく、作業の手戻りも生じやすい。
 そこで、近年注目されている拡張現実(AR)技術を用いて、点検作業者と専門技術者とをリアルタイムで結ぶコミュニケーション・ツールを開発した(図2 参照)。この中核には「スマートグラス」(写真3 参照)と呼ぶウエラブル眼鏡の技術を導入した。

(3) レーザースキャナを活用した復元図の作成
 地方自治体では、竣工図書や橋梁台帳が整備されていないケースが多い。そのため、点検データの整理に復元図の作成が必要な場合がある。その際は、現地測量により部材寸法などを計測し図面を復元しなければならず、足場設置などの付加的な経費が発生しコスト増を招く。
 そこで、地方の測量会社でも普及が目覚しい「レーザースキャナ」を用いて橋梁形状を計測する手法を開発した(写真4 参照)。本装置で取得するデータは、復元図作成だけではなく、画像合成の基盤データとしても付加価値を持つため多方面の用途に応用できる。

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