道路構造物ジャーナルNET

シリーズ「コンクリート構造物の品質確保物語」⑰

南三陸国道で行われる受発注者の協働思考 「対話」の重要性

横浜国立大学
大学院 都市イノベーション研究院
准教授 

細田 暁

公開日:2017.04.04

盟友の北一北成建設が鉄筋・型枠工を供給
 震災以来5年間、多い時には30人

 細田 鉄筋工や型枠工がコンクリートの打ち込みも行ったと聞きましたが。 
 菊池美 両者は北海道の北一北成建設さんから応援に来てもらっています。
 菊池啓 震災以来ですので、既に5年目になります。地元に鉄筋工、型枠工が不足しており、会社のつながりで応援を頼みました。多い時には30人に達しました。
 細田 その方々が、小佐野だと、型枠や鉄筋もやって、コンクリートも打設もしていますね。普通は別々ですよね。
 菊池美 鉄筋工や型枠工の手が空いてしまった時に北海道へその都度帰らせるわけにもいかないので、彼らに仕事をさせるために生コン打設もやってもらいました。彼らも出来ない人たちではありませんから。
 細田 自分たちが組んだ鉄筋や型枠に(自分たちで)打ち込んでもらうというのは良いものなのですか。
 菊池美 そうですね。人のせいにできないという事で、(生コン打設を意識して)鉄筋組み立て・型枠配置からコンクリート打設までを行っており、良い効果が出ていると感じています。
 細田 今回の工事を通して、北一北成建設さんとはどういう雰囲気でしたか。
 菊池美 長年の付き合いという事もあり、いつも通りの和気藹々とした雰囲気で仕事ができています。
 細田 現場には当時の佐藤和徳所長も視察に行かれたと聞いていますが。
 菊池美 最初は緊張もあったと思いますが、次第に慣れました。
 細田 小佐野高架橋A2の出来栄えについてはどういう思いを持っておられますか
 菊池美 ひび割れ抑制鉄筋も入れて、施工の工夫という点でもやり切った感じです。
 細田 改善すべき点などはありますか。
 菊池美 施工についてはやり切った感があります。あとは施工班が変わっても同じような施工品質が確保できれば良いのかな、と思います。

ノロ漏れを無くすために隙間テープで対応

 細田 コンクリート品質確保の点で一番難しかった項目はなんでしたか。
 菊池美 最初は、型枠目地からのノロ漏れを無くするというのが、一番難しかったですね。最終的には隙間テープで対応しました。あれはいいですね。


型枠目地からのノロ漏れを無くするため、隙間テープで対応

 細田 具体的にはどのような効果がありましたか。
 菊池美 建築物の施工の際、隙間に貼るテープなので、風や水を通さず、そこから水もノロも出ませんでした。
 細田 性能もさることながら作業性やコストの観点ではいかがですか?
 菊池美 型枠間にテープを貼り付ける手間が一つ増えてしまうので型枠工は喜ばないかもしれません。型枠間にあらかじめテープを貼り付けて置き、それを組んでいくというやり方を本現場では採用しました。ただ(粘着テープを利用しているため)雨天時での施工はできません。  
 細田 気泡についても頑張られましたよね。
 菊池美 当社の施工では、以前から気泡の発生は少ない方でした。今回、手間本監督官からより丁寧な施工を促されて、もっといいものができたのではないかと思っています。基本的にはバイブレータのかけ方、型枠の下からの叩き、丁寧に仕上げバイブレータをかけることが重要だと思います。
 細田 1つのキーワードとしてPDCAがあって、橋台はフーチングを施工してたて壁、胸壁と形がどんどん変わっていくから、目視評価を活用したPDCAは難しいと思うのですが、今回の現場ではどうでしたか。
 菊池美 A2に関しては、最後まで型枠がついている状態であり、脱型まで中は見れませんでした。
 細田 そうした条件になった理由は何ですか。
 菊池美 最初はラッピング養生を施工する方針だったのですが、その代わりに型枠を2か月存置する手法を採用したためです。脱型したあとにラップ養生もしました。A2は形が複雑なので、ラップ養生する時も苦労したのですが、ラップ養生も効果が出ていると感じています。


ラップ養生状況

 細田 ラップ養生の苦労はどのようなものですか。
 菊池美 橋台の形がいびつなため貼りにくかったことです。その後も風によって剥がされるため、貼りなおすこともありました。
 細田 安いのは魅力ですが、もっといいものがあるといいですね。
 菊池美 NETISには良いもの(スリーエムジャパン製)がありましたが、少し高くなってしまいます。隣の現場(りんかい)はそのスリーエムでやっているのですが、やっぱりくっついている分安定していますね。

ただものではない監督官との邂逅
 課題指摘だけでなく一緒に解決策を考えてくれる

 細田 国交省さんの仕事が多くなったのは震災後ですか。
 菊池美 そうですね。
 細田 手間本監督官とのやりとりの感想を聞かせてください。
 菊池美 監督官は以前からコンクリートに関して知識が豊富な人だな、と感じていました。この現場でもテラさん何やるの? 養生はどういう風にするの? と聞かれて、実際にこの監督官は凄いな、とびっくりしました。その過程でひび割れ対策も積極的にやっていこうぜ、って言われました。
 細田 仕事はやり易かったですか?
 菊池美 とてもやり易かったです。失敗を恐れるな、という感じで言ってくれますので。
 細田 手間本さんは現場に行く回数が多いと思うのですが、ほかの監督官もこのように頻繁に現場に来るものですか。


立ち会うだけでなく解決策を一緒に考えるところが妙味

 菊池美 普通の監督官は、コンクリート打設の立ち合いには、初回施工時に1回来るぐらいです。しかも打設をずっと見続けるという事もしませんね。手間本さんは時間の許す限り現場に来て、施工方法などの助言をくれたり、一緒に工夫を考えたりもしていただけます。
 細田 目視評価も一緒にやったのですか。
 菊池美 一緒に考えて、具体的に問題点を指摘しながら行いました。
 細田 施工状況把握チェックシートも使われたと思いますが、その使いやすさや効果についてはどのように感じましたか。
 菊池美 記されている内容は当たり前の作業だと思うのですが、メモに残せるのが非常に良くて、忘れている項目もどうしてもあると思うし、チェックシートがあればそうしたミスも減らせるので、とても良いものだと思います。チェックシートに関しても手間本監督官から具体的な指示を頂きました。
 細田 品質確保試行工事において、表層目視評価や、施工状況把握チェックシートを使うことは特記仕様書に明記されているのですか。
 菊池美 明記されています。
 細田 御社が請けた国交省の他の仕事でも、これらのツールを使うことは明記されていますか。
 菊池啓 入っていないところもあります。
 細田 小佐野高架橋以外では監督官も変わっていると思いますが、手間本さん管轄と同じようにはできませんか。
 菊池美 そうですね。(フーチング打設時における)練習的な打設も絶対にさせてくれません。ひび割れ抑制のために、今まで頑張っておこなってきた対策は誘発目地ですが、監督官に相談しましたが結局承諾事項なので、お金は見てもらえません。
 誘発目地を入れれば、当社の施工であれば、目地の箇所に(ひび割れは)誘導されるのですが、手間もお金もかかるし、会社的に面白くない。
 細田 お金はいくらくらいかかるのですか。
 菊池美 小佐野の現場に使うとなると解析込みで300万円かかりますね。
 細田 そんなにかかるのですか。
 菊池美 誘発目地には手間もかかるし、打設にミスがあれば、ずれたりしてひび割れが誘発目地の位置に行かなかったりすることもあります。最初の導入事例はボックスカルバートの建設現場だったのですが、その時に少しずれてしまって、目地の脇に、クラックが入ってしまったという経験もあります。
 細田 私たちは真っ向勝負でコンクリートの品質を変えていこうと頑張っています。山口県のある現場で、「仮にこの構造で、誘発目地をなしでやろうとすると、0.35mmのひび割れ幅が入るような設計になっている、それで良いのか?」という事を最初に田村先生(当時德山高専)が問題提起したわけです。「業者はそうした不条理な設計のもとでコンクリート構造物を造ることを押し付けられているわけですよ」と。
 この問題提起から始まった山口の取組みを、東北地整でブラッシュアップし、その成果としての各種手引書ができましたので、少しづつ変わっていくと思います。
 菊池美 我々施工者は、ひび割れを入れないでナンボという、ことでやってきました。誘発目地でひびを隠しているとも言えますが、それが本当に良いあり方なのか、考えることもあります。

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