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首都高速道路 横浜環状北線の建設を振り返る

首都高速道路株式会社

神奈川建設局編

公開日:2017.03.31

⑦鉄道交差部

 鉄道交差部は、JR横須賀線、JR東海道線、JR京浜東北線、JR貨物線、京浜急行線の計10線の鉄道路線及び国道15号の上空を跨ぐ延長約300mの区間となっている。この区間の橋梁は東日本旅客鉄道株式会社に委託して建設していただいた。鉄道交差部の全景を写真-8に示す。

写真-8 鉄道交差部全景写真

(1)鉄道交差部の構造
 鉄道交差部は、横浜北線の本線、岸谷生麦出入口、一体整備している関連街路の岸谷生麦線からなり、7本の橋梁から構成され、各橋梁は、平面曲線を有しながら拡幅している。
 鉄道交差部は鉄道に影響を与えないという観点から、供用後の点検・補修環境が著しく制限されることから、他の橋梁よりも維持管理に特に配慮した設計を実施した。
 桁下下面に設置する裏面吸音板は、橋桁だけでなく鋼床版の張り出し部(側床版)から裏面吸音板で覆う構造とし、裏面吸音板内で橋梁下面を全て点検できる構造とした。橋面上の防護柵は、RC構造の壁高欄形式の剛性防護柵としているが、壁高欄の外側を本体兼用のアルミ製型枠とすることにより、将来のコンクリート劣化による線路敷への剥落リスクを回避し、且つ、アルミ製とすることで腐食劣化リスクを回避した。
(2)鉄道交差部の施工
 鉄道交差部では、「送出し架設」と「横取り架設」を併用した工法を採用することで、鉄道への安全性向上を実現した。高速本線2橋梁は「送出し架設工法」、出入口及び街路の5橋梁は先行架設する本線桁を利用して所定位置まで縦取りした後、「横取り工法」にて架設した。架設は、終電と初電の間約3時間で送出す等、非常に厳しい時間制約のなかで実施した。
本線曲線桁の送出し架設は曲線上に軌道設備を設置し、1回目は自走台車にて桁を移動させて架設、2回目以降は橋脚及びベント上に設置した駆動式エンドレス滑り装置で桁を移動する方式を採用することで工程短縮、省力化を実現した.
・出入口及び街路の曲線桁は先行して架設した本線桁に軌条設備を設置し,縦取り台車とジャッキによる推進設備を用いて、ジャッキのストロークを盛替えながら桁を移動した。曲線形状による軌道毎の速度差が生じないよう油圧ポンプの油の排出量を軌条毎に設定することで安全な桁移動を実現した。
・桁横取り作業は,橋脚および親桁上のベント設備を介して設置した横取梁の上で,主桁を梁に沿って水平に移動させ、桁をスライディングジャッキにて支持し、それに接続した水平ジャッキ及びH鋼クランプジャッキを推進設備として、順次ジャッキのストロークを盛替えながら横取りを実施した。主桁には縦断勾配があること、各横取り設備に作用する反力が異なることから、横取り時に主桁が橋軸方向に移動しないよう、スライディングジャッキに横方向(橋軸方向)の調整ジャッキを内蔵、操作することで安全な横取りを実現した。
 このように、施工時間帯が制限される過酷な条件の中、7つの曲線橋をこれら鉄道と立体交差させ、安全に施工させたことは前例のないものである。

⑧生麦JCT

 生麦JCTは、横羽線の本線、大黒線と横浜北線をつなぐ本線、それらをつなぐ8連結路となっていて、全方向アクセスが可能となったフルジャンクションとなっている。また、JCT内に横羽線の出入口である生麦入口、生麦出口を有している。このうち、既設の生麦入口は本事業において移設し、移設して空けたスペースに新しい連結路を設置している。生麦JCTの全景を写真-9に示す。


写真-9 生麦JCT上空写真

(1)生麦JCTの構造
 横浜北線の本線は大黒線の本線に接続しており、大黒線が上下層の2層構造となっていることから、横浜北線の本線も上下2層となる。これに上記の横羽線の本線、連結路を含めた構造となることから、生麦JCTは最大で4層の構造となっている。
 このような状況から、道路線形の曲線半径が小さく多層となっている箇所を中心に、鋼製橋脚に剛結構造とした3~5径間連続鋼床版箱桁橋を多く用いた。なお、連結路の端部等ではRC橋脚としている。橋脚基礎は場所打ち杭を基本としているが、橋脚柱から用地境界が近い箇所ではニューマチックケーソン基礎、深礎杭基礎としている。最も厳しい箇所では道路橋では国内最小クラスとなるΦ5.5mの小断面ニューマチックケーソン基礎とした。
(2)生麦JCTの施工
 生麦JCTの施工にあたっては、1250t吊りのクローラクレーンによる大ブロック一括架設工法を採用することで、架設回数を最小化し、限られた用地の中、横羽線、大黒線、高架下の街路(県道6号東京大師横浜線)への交通影響の最小化を実現した。
 生麦JCT の一部では、大規模施設に近接していた関係からベント架設工法を工夫することにより、大規模施設の操業に対する影響を最小限とする施工を実現した。その方法として、大規模施設の操業に影響が少ない日曜日から月曜日早朝までの18時間で桁架設する計画とし、移動式ベント設備を用いたT/Cベント工法を採用した。予め大規模施設から離れた位置で移動多軸台車上に大型ベントを組み立てておき、施工当日に移動式ベントを架設位置まで移動させ、桁架設を実施することで施工を実現した。
 生麦JCTの横羽線接続では、横羽線の上下線に挟まれた幅4m程度の狭隘地の有効利用と架設工法の工夫により、横羽線接続を実現した。具体には、鋼床版の張り出し部(側床版)をモジュール工法にて折りたたみ構造とし、移設により空きスペースとした旧生麦オンランプ橋梁を利用し、ステージジャッキと移動多軸台車を組み合わせた架設を実施した。最大スパン区間(86m)は、ガントリーによる張り出し架設とステージジャッキを組み合わせた架設を実施した。この状況を写真-10に示す。

写真-10 ガントリーによる張り出し架設とステージジャッキを組み合わせた架設を実施

⑨舗装

 横浜北線の高架部の舗装は、骨材の最大粒径を13mmから5mmに小さくし、小粒径ポリマー改質アスファルトH型を使用した小粒径ポーラスアスファルト混合物(5)(ポリマー改質アスファルトH型)を用いた排水性舗装としている.首都高速道路では,平成27年改訂の舗装設計施工要領において、排水性舗装の施工面積拡大とともに、舗装損傷はわだち掘れとひび割よりも粗骨材が飛散してできるポットホールが増加し,この損傷に対する耐久性の向上が重視されるようになったことなどから,骨材剥離抵抗性と層間剥離抵抗性に優れているこの舗装を採用している.
 鋼床版部における基層のグースアスファルト混合物は、基層を50㎜に厚くしたことによる耐流動性の低下を補うため、骨材最大粒径を13㎜から20㎜に変更した.
 トンネル部の舗装は、降雨の影響を受けず、近隣への交通騒音の問題も生じにくいことから密粒度アスファルト混合物を使用し、排水性舗装としていない。

⑩まとめ

 横浜北線は、2001年度に事業化し、約15年間にわたって建設事業を進め、2017年3月18日に開通した。事業に着手して以来、建築物や社会インフラが密集する都市部で大断面道路トンネル、高架橋を安全、確実かつ効率的に建設する方法を検討してきた。そのなかで、現場状況に即して多種多様な技術を複合的に応用することにより、JCTのコンパクト化や住宅下での大断面の地中拡幅のように初めての施工も行っている。
 また、事業を進める過程においては、関係する鉄道・道路等の事業者の協力を得ながら設計施工を進めたこと、構造物が既存の街並みと調和した良好な景観を形成するように、学識経験者の意見を伺いながら路線全体で景観検討を進めたこと、トンネル上や周辺にお住いの方々の安全・安心のために地盤の状況について学識経験者の意見を聞きながら工事を進めたことなど、関係者の皆様及び用地取得に応じていただい皆様に多大なご協力をいただいた。改めて、深く敬意と感謝の意を表する。

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