道路構造物ジャーナルNET

シリーズ「コンクリート構造物の品質確保物語」⑫

コンクリート構造物の品質確保の手引き(トンネル覆工コンクリート編)の制定-産官学の協働-

横浜国立大学
大学院 都市イノベーション研究院
准教授 

細田 暁 氏

公開日:2016.10.16

3. 覆工コンクリート品質向上委員会の存在

 2015年6月に筆者らが復興道路の構造物の品質調査を行った際、6月20日(土)に、東亜建設工業の施工する南三陸国道事務所管内の小槌第二トンネル(写真-6)にて、覆工コンクリートの目視評価法の解説を要請され、筆者が解説した(写真-7)。南三陸国道事務所管轄の釜石山田道路のトンネル建設に携わる施工業者のうち3社の技術者たちと、国道事務所の監督官や、事業促進PPPのメンバーたちも参加しての講習となった。現場での講習の後、現場事務所にて第5回目の「覆工コンクリート品質向上委員会」が開催され、筆者らも同席した(写真-8)。筆者はその時点で、この委員会の存在を詳しくは知らなかった。第5回目の委員会は、筆者が現場を訪問するのに合わせて土曜日にもかかわらず開催されたようであるが、そこでの議論を聴いて心から驚いたのを現在でも記憶している。


写真-6(左) 小槌第二トンネルでの覆工コンクリートの勉強会(2015年6月20日)
写真-7(右) 覆工コンクリート版の目視評価法の解説(2015年6月20日)

写真-8 第5回の覆工コンクリート品質向上委員会(2015年6月20日)

 覆工コンクリート品質向上委員会には、釜石山田道路の建設に関わる様々なプレーヤーたちが、従来であれば手の内を見せるはずがないのに、覆工コンクリートの品質向上を目指しての各現場での取組みを発表し合っていたのである。この委員会では、既設のトンネルの点検結果の分析から(図-1)、覆工コンクリートの維持管理上の最大の問題は施工目地部のうき・はく離・はく落であると考え、この問題を根絶することを目標に掲げていた。復興道路では、高速道路会社のようにコンクリートに短繊維を混入する仕様となっていないため、天端付近のつま型枠側など打込みが難しい部分も含めて、なるべく均質なコンクリートを打込むための様々な工夫についても発表がなされていた。さらに、前回の第11回でも紹介したが、既設のブロックと新たに打込むブロックの接する面での付着がうき・はく離・はく落を引き起こすと考えられるため、付着を低減するためのいくつかの工夫についても西松建設の河内正道氏が発表した。このような現場での取組みは、その効果を実構造物で検証した上で、品質確保の手引きに取り込まれていくこととなるのである。


図-1 52のNATMトンネルの点検データにおける変状の個数
(A判定は応急処置が必要な変状、B判定が応急処置は必要でないが標準調査が必要、S判定は軽微なもの)


図-2 ビニールシートを用いた付着除去による施工目地部の不具合の防止対策

 この委員会は佐藤和徳所長を委員長とし、第1回目が2014年12月17日に開催されたとのことであった。実質的な取り仕切り役は、事業促進PPPの加藤ひろし氏が務めているようであった。加藤氏は、安藤ハザマでトンネル屋として現場で活躍された後、コンサルタント会社で既設トンネルの点検業務にも従事した経験を持ち、復興道路での覆工コンクリートの品質向上に人一倍強い情熱と意欲を持つ技術者であった。第5回の時点で、釜石山田道路に携わる産官の多彩なメンバーで構成されていた覆工コンクリート品質向上委員会に、筆者は委員として参画させてほしいと請願し、了承された。その後、筆者が三陸に出張するときに合わせて委員会を開催していただくこととなった。
 「コンクリート構造物の品質確保の手引き(案)(トンネル覆工コンクリート編)」は、この覆工コンクリート品質向上委員会のメンバーにより、現場で実践されている取組みをふんだんに取り込んだ内容に創り上げられていくことになる。

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