道路構造物ジャーナルNET

シリーズ「コンクリート構造物の品質確保物語」⑪

復興道路の覆工コンクリートにおける品質確保

横浜国立大学
大学院 都市イノベーション研究院
准教授 

細田 暁 氏

公開日:2016.08.22

3. 覆工コンクリートの劣化の実態

 52のNATMトンネル(道路)の覆工コンクリートの点検結果を分析した結果3)を示す。1991年~2011年の21年間に建設されたトンネルであり、点検が行われたのは2001年~2012年の12年間である。点検結果における危険度の判定区分とその定義を表-1に示した4)


表-1 トンネル点検データの危険度の判定区分とその定義
判定区分 判定の内容
A 変状が著しく通行車両の安全が確保できないと判断され、応急対策を実施した上で補修・補強対策の要否を検討する標準調査が必要な場合。
B 変状があり、応急対策は必要としないが補修・補強対策の要否を検討する標準調査が必要な場合。
S 変状がないか、あっても軽微で応急対策や標準調査の必要がない場合。

 図-1には、分析した52のトンネルにおいて記録された変状の種類別の個数と危険度の判定結果を示した。図-2には、変状ごとの危険度の割合を示した。ひび割れの数が非常に多いが、危険度の高いものは少ないことが分かる。ただし、長期的に、これらのひび割れがB判定、A判定の変状に進展する可能性も否定できず、さらに経過観察と分析が必要であろう。一方で、同じく個数の多いうき・はく離・はく落は、A判定のものも少なくなく、B判定のものも含めると半数に迫る割合となる。なお、筆者は、うき、はく離、はく落は同じ劣化現象の進行程度の異なるものであると考えており、本稿では一括りにして示している。

 
図-1 種類別の変状の個数と危険度の判定結果

 
図-2 それぞれの変状における危険度の割合

 図-3は、あるトンネルの点検結果の全ブロックの展開図に位置情報を与え、各場所における1ブロックごとの変状の個数を数値で示したものである。このトンネルにおいては、うき・はく離・はく落は片側の施工目地に接する部位に多く、さらに、天端付近では3ブロックに1つ以上の個数で発生しており、非常に多いことが分かる。天端付近のうき・はく離・はく落は第三者被害が懸念される極めてやっかいな変状である。このように施工目地部にうき・はく離・はく落が多く見られる傾向は、このトンネルに限ったものではなかった。

   
図-3 あるトンネルにおいて施工目地部に多く変状が発生している状況

 以上に示した分析結果等に基づき、トンネルの品質確保の目指すべき方向性として、筆者は以下の項目を掲げ、現場での実践に当たっている。

・施工目地部のうき・はく離・はく落が多く、天端部に多く発生する傾向も見られ、第三者被害の危険性も高まることから、これらの不具合を根絶したい。
・施工目地部から離れた箇所にも、うき・はく離・はく落や豆板など、施工に起因すると思われる不具合が発生しており、これらを可能な限り抑制したい。
・ひび割れの発生個数が非常に多い。深刻な変状に至っているものは多くはないが、ひび割れは長期保証や技術提案の対象となる場合が少なくなく、合理的な抑制方法を確立したい。
・凍結抑制剤を散布する凍害環境下で供用されるトンネルでは、坑口付近で凍害劣化が確認されており、耐凍害抵抗性を向上したい。

 上記の方向を目指すことで、メインテナンスフリーの覆工コンクリートを建設できる仕組みを構築したいと考えている。

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