道路構造物ジャーナルNET

-分かってますか?何が問題なのか- ⑮ 「アセットマネジメント、予防保全型管理について」

これでよいのか専門技術者

(一般財団法人)首都高速道路技術センター
上席研究員 

髙木 千太郎 氏

公開日:2016.07.01

はじめに

 数十年にわたってEUの主要国であった英国が2016年6月23日に行われた国民投票の結果、EUを離脱することになった。しかし英国の変わり身の早さには、何時も驚かされる。私が直接関係したこととしては、国内で初めて地方自治体・東京都に導入した戦略的インフラマネジメントである「アセットマネジメント」に関係している。
 第一は、国内でも進めている行政改革の原点とも言えるニューパブリックマネジメント(New Public Management)である。NPMは、1980年代にサッチャー政権の基で、英国が抱えた危機的状況を回避する政策として行政のスリム化を掲げ、政府の種々な部門を嘱託化し、事業評価制度を持ち込んだ。また、従来の保守的であった公共サービスに競争原理と企業経営手法を導入し、財政支出無駄を省く目的で「合理化」を図り一定の成果をあげた。このような行政近代化路線も新たな労働党政権下においては、期待して民営化したものの機能しなくなった鉄道の国営化への転換? などNPMの考えは重視してはいるものの方向転換を行っている。
 第二は、道路施設の維持管理を行政側が行う従来スタイルからの転換施策があげられる。イギリスの道路庁である「Highways Agency」は、英国・イングランドの高速道路と主要幹線道路を管理している組織である。道路庁が設置された1994年以前は、英国国内の主要幹線道路網の維持管理を交通省が91の道路管理区分に分割し、地方の行政機関に委託していた。1996年には、20地区に管理地区を統合化、管理代行業務の「MA」と維持監理業務の「TMC」による方式を導入した。その5年後の2001年には、道路庁の管理する主要幹線道路の日常維持管理及び修繕工事を対象に「MAC(Managing Agents Contract)」に転換している。「MAC」の行う維持管理業務については、道路の維持管理における先進的な事例として国内関係者の多くが英国を訪問し、学んでいる。私は、「MAC」は先進的なメンテナンス運営組織であることから、しばらくは継続的にその路線を英国は走ると考えていた。
 しかし、先進的と考えていた「MAC」も2012年には、資産管理契約である「ASC(Asset SupportContract)」に発展、「MAC」方式よりも更に道路維持関係費用の削減を図っている。「ASC」の導入の狙いは、成果主義評価によって事業者の選択に委ねられる部分が増加、利用者サービスの品質向上、委託価格の単純化と現場で行われる維持管理工事の閾値を向上させる等とし、5年程度の事業期間を目途としている。
 国内では、英国のように一定の成果をあげるとそれを見切って次への転換を図る施策は聞いたこともない。先に示したNPMも「MAC」についても、英国の国民性か、島国としての危機管理意識が高いのか、変わり身の早さは今回のEU離脱も含め英国の長所なのかもしれない。
 先に示したようにメンテナンス先進国と言える英国であっても、「ASC」が管理運営しているわけではないが、写真-1に示したように、ロンドンのテムズ川に架かる著名橋「BLACKFAIAES BRIDGE」であっても夏に育つ雑草処理にはメンテナンスの手が回らないようである。やはりメンテナンスは、難しい。


写真-1 英国・ロンドン「BLACKFRIARS BRIDGE」テラスに育つ雑草

 さて本題に戻り、英国のEU離脱報道を受けて、以前から思っていた国内のアセットマネジメント、及び予防保全型管理導入について今感じていることを述べることとする。

1.アセットマネジメント(Asset Management)とは?

 ここで、読者の多くの方が理解しているか分からない一時流行った「アセットマネジメント」について解説することとする。
 アセットマネジメントとは、インターネットで検索すると、まずは個人が持っている投資用の資産を管理・運用する投資会社である○○アセットマネジメントとして検索結果が表示される。であるから、アセットマネジメントは、個人が投じる貴重な資産を市場のリスクを避け、効率よく管理し運用することと理解され、株式、債券や不動産の業界でよく使われる言葉である。私が東京都に持ち込んだアセットマネジメントは、道路などの社会基盤施設に関する戦略的メンテナンスを進めるツールである。具体的は、都民が行政に納めている住民税など多額の税金を社会基盤施設整備や管理に予算化して使う際、税金を運用する投資代行者として行政が組織や費目を超えて適切に配分し、対象とする施設に効率的・効果的に運用することによって、納めた税金よりも価値の高い公共サービスとして住民に還元することである。
 アセットマネジメントを道路施設に導入する効果は、以下である。
 ①  道路資産の把握と組織枠を超えた適切な投資、そして管理・運営
 ②  民間企業の持つ経営感覚の導入と職員の意識改革
 ③  積極的なマネジメントサイクル(計画、対策実施、対策の評価、評価に基づく計画の見直し)の確立
 ④  行政の納税者(都民)に対するアカウンタビリティの向上
 ⑤ 予防保全型管理への転換、更新時期の平準化、コスト縮減
 少子高齢化社会の到来による財政危機を乗り切る戦略的施策の一つがアセットマネジメントであると考える。アセットマネジメントのイメージを図-1に示す。次に、私がなぜアセットマネジメントを東京都、それも道路施設(橋梁を中心とした)に導入を考えたかである。

図-1 アセットマネジメントイメージ

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