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シリーズ「コンクリート構造物の品質確保物語」⑩

「コンクリート構造物の表層品質評価法-表面吸水試験や表層透気試験の活用方法と留意点-」

横浜国立大学
大学院 都市イノベーション研究院
助教

小松 怜史

公開日:2016.07.01

2.2 表層透気試験(トレント法)
 表層透気試験(トレント法:開発者の名前から採用)はダブルチャンバーの吸引によってコンクリート表層を真空状態にし、その後真空ポンプによる吸引を停止し、チャンバー内の気圧が回復するまでの時間から一次元方向の表層コンクリートの透気性を評価する手法である。表層透気係数kT(×10-16平方㍍)が小さいほど表層が緻密であることを意味する。

表-2 表層透気試験(トレント法)の計測結果に基づく品質(評価)のグレーディング

 使用上の注意点として、測定をコンクリート表面の微細なひび割れを有する箇所等で行ったり、打重ね線や打継目の上で行ったりする場合に、非常に大きな透気係数(品質が悪い)が得られる場合が少なくない。外気と連結した微細ひび割れや、コンクリート表面の不陸による隙間を通して、空気を吸引している可能性があることを知った上で、品質の評価に上手に活用する必要がある(図-6)。また、全くの同一箇所で時間間隔を開けずに繰り返し試験を行うと、コンクリート内の圧力が定常状態に戻っていないため、二度目に計測する時には表層透気係数が小さく測定されることが知られている。緻密なコンクリートでも10分程度でコンクリート内の圧力が通常状態まで回復すると言われている。


図-6打継目付近の表層コンクリートの品質の評価例

3. コンクリートの含水率の影響

 SWAT、表層透気試験に共通する留意点として、含水率が計測結果に影響を与えることが分かっている。東北地整の品質確保の手引きでは、品質の評価を行う際の、コンクリートの含水率の上限値の目安として、市販の含水計(Tramex社のCMEXⅡ)(写真-3、左写真)による含水率で5.5%を記載している。含水率が5.5%以下であることを確認して、計測することを推奨している。ただし、同じ環境に置かれた場合、品質のよい緻密なコンクリートほどコンクリート内部に水を保持しやすく、含水率が高くなる傾向にある。雨掛かりや結露等があるような特殊な場合は除いて、含水率が5.5%を超えた場合には、コンクリートの品質が良いことを示す一つの証拠でもあるので、計測不可(参考値)という扱いにせず、積極的に含水率および評価結果を記録しておくのがよいと考えている。

4. 両評価方法を組み合わせた活用の例

 SWATは毛細管張力によるコンクリートの吸水挙動を計測に利用しているのに対し、表層透気試験はコンクリート内を真空状態になるように脱気し、内圧が戻るまでの時間を計測している。このような計測メカニズムの違いから、一般的にはSWATは、表面に近い領域(コンクリートにもよるが最大で15㎜程度)の品質を評価していると考えている。一方で表層透気試験の測定範囲は表面吸水試験よりは深い場合が多く、強制的に圧力をかけていることからも、内部の欠陥の影響を受けやすいと考えられる。それぞれの手法の特徴をよく把握した上で、うまく使い分けたり、組み合わせて活用することが重要であると考えている。
 たとえば、透水型枠を使用したコンクリートはごく表層が緻密なことが多く、SWATでは良質なコンクリートと評価されることが多い。一方で表層透気試験を併用することで、ごく表層の緻密な層の奥にあるコンクリート内部の欠陥を検出できる場合もある。逆に、打重ね線や打継目などの一体性の評価は、先にあげた理由から表層透気試験は外の空気を巻き込んだり、わずかな連続した空隙の影響を受けることが少なくない。一方でSWATの原理は実際のコンクリート構造物の劣化に直結する水の浸透に近く、水密性の求められる打継目等の評価には適していると考えられる。

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