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-分かってますか?何が問題なのか- ⑬「有事に機能する真の技術者集団とは―現場で得る知識は100の技術書を読むより有益―」

これでよいのか専門技術者

(一般財団法人)首都高速道路技術センター 
上席研究員

髙木 千太郎

公開日:2016.05.01

4.有事に機能する真の技術者を目指して

 以前、ドイツ・フォルクスワーゲン社の排ガス不正に関して、優れた技術者を多く抱え、最先端の技術を売りにしている私の好きなドイツの汚点を泣く泣く書いた。その時私は、世界の誇れる技術者集団の国である日本には、まさかと思うがフォルクスワーゲン社と同様な恥ずべき行為は絶対に無いと信じていた。しかし、またもや国内有数の大企業、それも多方面でテレビコマーシャルを流す三菱グループの懲りない連中が日本のメンツを潰すような大失態を再び起した。フォルクスワーゲン社と同様で、排ガスデータ改ざんではないが、他社に指摘されて発覚した燃費改ざん事件である。三菱自動車の記者会見では、スズキとダイハツが良好な燃費車両開発に先行されたため止む無く行ったような、自社は悪くない会見、納得のいかない不正、技術者倫理に欠ける回答である。
 三菱グループは、日本を代表するトップ企業であり、ロケット、飛行機など最先端技術を売りにする優れた技術者集団の集まる会社であるはずである。今から遡ること25年も前から種々な面で不正を行っていたとの三菱自動車経営陣の記者会見には、あきれて物が言えない。三菱自動車の記者会見を見て感じることは、アメリカ・NASAのチャレンジャー号爆発事故のように、技術者の帽子を脱いだ現場を知らない経営者集団が全てを取り仕切っている利益優先の会社体質が三菱自動車であり、この日本の今である。多くの社会基盤施設に関係する行政技術者が「現場主義」を主張しているが、果たして、民間の技術者を含めて現場で汗みどろになって作業を行っている作業員に日々感謝し、現場で汗をかく作業員や技術者の待遇改善を考え、皆が一体となって仕事をしているのであろうか? 社会基盤施設に関係する事故が起こるたびに大いに疑問が湧き、私が恐れている理論先行型で、有事に際に全く役に立たない技術者集団への道を突き進む日本となるのでは。真の現場を忘れた技術集団には、有事の際に有効に機能するプランは描けても実行プランでないことを忘れてはならない。雨の降る中、現場を見ると分かることが山ほどあり、そこから得る知識は100冊の技術書を読むより有益であることを実感してほしいものである。 次回は6月1日に掲載予定です

髙木千太郎氏報文シリーズ
⑫「モニタリングの現状と課題―持続力と議論が必要―」
⑪「想像力と博打根性」
⑩「橋梁形式選定についての私見と担当技術者への願い」
⑨「私見 勝鬨橋再跳開の可能性とその効果」
⑧点検はこれからが勝負
⑦PC桁の欠け落ち損傷
⑥溶接構造の品質保証について
⑤橋と景観
④独創のコツ、なぜ研修制度は機能しないのか
③「道路メンテナンス会議」は本当に機能し始めたのか
②「道路橋の変状と架け替え」について大きな疑問
-分かってますか?何が問題なのか-①

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