道路構造物ジャーナルNET

中日本高速道路リレー連載⑧

中日本高速道路が抱える保全上の課題(土工編)

中日本高速道路株式会社 
構造技術・支援部

緒方 健治

公開日:2016.02.16

3. 盛土

 図3は高速道路での盛土材料ごとの土砂災害の傾向を示したものである2)。図から盛土の被災件数は粘性土が最も多く、次いでまさ土、山砂、しらすなどの砂質系の材料がかなりの割合を占めていることがわかる。また、1件あたりの被災土量は泥岩が最も多くなっている。

 泥岩などの脆弱化しやすい岩を使用した盛土(以下、「脆弱岩盛土」という。)では、供用後長期間経過した場合でも変状し災害が発生する可能性がある。平成21年に発生した東名高速道路牧之原地区の盛土のり面崩落(図4)では、泥岩がスレーキングにより強度低下したことが崩壊原因のひとつとされている3)
一般的に、盛土は時間とともに安定化していくが、脆弱岩盛土では、強度低下のほかに長期間にわたって盛土の沈下が発生することがある。盛土の沈下は走行性が悪くなるだけではなく、排水構造物に変形や破損が生じ、盛土内への水の浸入を許してしまう危険性がある(図5)。そのため、脆弱岩盛土では盛土内に水位がある場合や沈下による補修が過去に行われたことがある箇所を特に着目して点検を行い、盛土の状況を把握しておく必要がある。
 一方、盛土の高さの違いによる災害の傾向では、3段以上の盛土において被災件数や被災土量が大きくなっている(図6)。
したがって、盛土材料が粘性土、まさ土、山砂、しらす、泥岩の盛土や3段以上の高い盛土は、崩壊による周辺への影響のリスクが大きなのり面で、保全上留意すべき盛土であると言える。このため、こうした盛土に対しては、今後事前対策を

実施していくことが必要である。
 盛土の対策としては、水抜きボーリングや砕石による排水工などを設置して、盛土内の水を速やかに排出することが重要である。また、浸透水を排除するだけでは盛土の安定を確保できない場合は、地山補強土工法などの盛土補強対策を実施する必要がある。

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