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中日本高速道路リレー連載⑥

金沢支社管内の高速道路における構造物の維持管理

中日本高速道路
金沢支社 
保全・サービス事業部長 

河合 朝仁

公開日:2015.11.16

3 金沢支社管内の構造物の変状・損傷状況と対応

 

3-1 変状・損傷の状況
 金沢支社管内の2014年度末時点における橋梁、トンネル、土工の変状区分がA判定(機能低下に影響していると判断され、対策の検討が必要)以上の箇所数を取りまとめたところ、約6割を橋梁が占めている。また、各構造物において変状を対象部位別に整理すると、多い部位は橋梁では上部工、トンネルでは内装版、土工ではのり面排水であった。(図5)
 橋梁の変状部位とその状態について、全域が積雪寒冷地となる金沢支社管内では冬期の凍結防止剤の影響による塩害が著しく、橋台や橋脚掛け違い部に位置するコンクリート主版の端部や張出し床版の水切り部付近での「浮き・はく離」、鋼桁端部の腐食が顕著である。そのほか北陸地域に特徴的な劣化として、鋼橋RC床版の疲労と塩害の複合劣化、コンクリート部材のASRによる劣化などが発生している。
 トンネルのA判定以上が多い部位、変状は内装版取付金具の腐食で、そのほか供用から30年以上経過した覆工コンクリートや直張りタイルの「浮き・はく離」など老朽化や凍結防止剤散布の影響が見受けられる。
 土工ではA判定以上が多い部位はのり面排水で、本体の損傷、接続不良のほか、土砂・枯草等の堆積による通水阻害が目立っている。

3-2 橋梁桁端部の変状と対応
1)コンクリート橋
 金沢支社は冬期において路面の安全性を確保のため塩化ナトリウムを凍結防止剤として使用している。路面散布した凍結防止剤は、図6に示すように橋梁桁端部から雨水と伴に流れ落ち、桁端部から2m程度の範囲で変状が顕著となる傾向にある。1)2)


2)鋼橋
 鋼橋においても凍結防止剤や局部的な漏水の影響により、鋼桁の端部で局部的な腐食が生じており、断面欠損に至る事例もある。鋼材の腐食に対して従来は部材取替えやボルト接合による当板補強が用いられてきた。しかしながら鋼材を用いた対策は、大掛かりな仮設機材が必要となり、補修費が割高となるのに加え、溶接に適さない鋼材やボルト接合のために孔明けを行う必要がある等の問題が伴う。このような背景から、小規模な対策で補修費の低減に繋げられる簡易な工法として、鋼鈑桁橋桁端部の炭素繊維シート(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Polymer)補強工法の採用が検討されている(図8)。

3-3 鋼橋RC床版の変状と対応
 鋼橋RC床版では、過積載車両を含む交通車両の繰り返し走行による疲労と凍結防止剤による塩害の複合劣化が生じている3)。写真2は著しい傷みにより平成20年度に撤去された日野川橋上り線の床版の切断面や下面であり、上側鉄筋の腐食やその腐食に伴うコンクリートの脆弱化および水平方向ひび割れが多く、一部に床版下面の溶出消石灰(以下、遊離石灰)が確認される。

 金沢支社で実施した約10橋の床版調査では、床版上面の劣化が生じた場合でも遊離石灰が下面に到達していない事例が多く、下面のみを目視点検するだけでは劣化を見落とす可能性がある4)。このため、疲労と凍結防止剤による塩害の影響を受ける鋼橋RC床版では、従来から実施されている下面からの健全度判定に加え、床版上面の状況を加味し床版の健全度を判定する必要があると考えられた。
 床版の事後保全対策には、床版上面打替、床版部分打換、床版取替、床版上面増厚、樹脂注入などがあるが、これまで金沢支社管内では、平成21年度に渋江川(下り線A1-A2)(写真3)、 平成20年度に日野川橋(下り線P5-A2)で床版取替えを行っているほか、渋江川橋(上り線)で樹脂注入(水中接着型速硬エポキシ樹脂:アルファテック342)による対策が講じられている。

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