道路構造物ジャーナルNET

東日本高速道路 維持管理リレー連載①

高速道路における橋梁の劣化と維持管理の課題を考える

東日本高速道路㈱
建設・技術本部技術・環境部
構造物専門役

木水 隆夫 氏

公開日:2014.11.16

3. 高速道路橋の代表的な損傷と対応
 ここでは、NEXCO東日本の高速道路の橋梁で損傷事例が多い鋼橋RC床版とコンクリート桁端部に絞って整理する。

 従来の疲労メカニズムだけでは説明できない
 複合要因による床版劣化

 ① 鋼橋 RC 床版
 写真-1 は鋼橋RC床版の損傷事例である。床版下面には、ひび割れ、遊離石灰、浮き、剥離が広い範囲で確認され、劣化が進行した橋梁ではかぶりコンクリートが剥離した部分の鉄筋に腐食や断面欠損が確認されている。
 また路面にはポットホールが頻発し、部分補修時にはかぶりコンクリートの土砂化や滞水、上側鉄筋の腐食や断面欠損が確認されている。

 


舗装の打替え工が多数点在(左)、増厚コンクリートと既設コンクリートの間が泥状化(中)、降雨時の床版下面状況(右)

          下面剥離、鉄筋腐食(右)           内部水平ひび割れ
                     写真-1 鋼橋RC床版の変状

 

 昨今の高速道路におけるRC床版の劣化損傷は、従来の疲労メカニズムだけでは説明できない、塩害や中性化、ASR、凍害、更にはこれらが複合したものとしての対応も必要となっている。
 疲労損傷の経験から、設計活荷重、床版厚、橋軸方向の設計、許容応力等設計基準が段階的に見直され今日に至っているが、高速道路の既設床版に対しては、初期の段階では縦桁増設や鋼板接着などの床版下面補強、メカニズムが解明されてからは床版上面増厚等で補修・補強を実施してきた。
 しかしながら、こうした対策をした橋梁でも近年再劣化が進行し、部分補修を繰り返す事例が増えてきている。コアを抜いてコンクリートの状態を確認すると、鉄筋位置での水平ひび割れや既設コンクリートと増厚コンクリートとの境界剥離が確認されることもある。
 また、冬期に凍結防止剤を散布する地域では、劣化した床版の浸透塩分量を調べると、鋼材位置で発錆限界を超える塩分量が確認され、塩害が発生している事例も多い。
 こうしたことからRC床版の健全度評価にあたっては、従来の床版下面の状態で評価するだけでは不十分で、床版の上面や内部の劣化状態も評価する必要がある。しかしながら、舗装面から床版上面や内部の状態を精度よく評価することは難しく、様々な非破壊検査手法が活発に研究・開発されているが、精度が高く、現場で実用的な手法の確立も急ぐべき課題である。
 詳細調査の結果、部分補修や補強では性能の回復が十分見込めない床版につ下面剥離、鉄筋腐食内部水平ひび割れいては、耐久性能の高いPC 床版に取替えるなど、長期耐久性の確保を図る事例も増えつつある。
 床版の損傷には、水の影響が極めて高く7)、平成14年道示でも防水層等を設けることが条文で明確化されたが、高速道路では平成10年より防水工を施工してきている。
 標準的に施工されるようになった防水工であるが、数年後に機能低下する事例も報告されるようになった。このため、NEXCO では高性能な床版防水を目指して要求性能とその性能確認試験の方法、施工管理方法等について検討を重ね、平成22年に床版防水システムグレードⅡとして新設の橋梁を対象に要領化した。8)9)高性能床版防水工は今後、既設橋梁へも展開していく予定である。

 

 二重止水が基本
 小遊間止水工法も実用化

 

 ②桁端部
 写真-2はコンクリート桁の桁端部である。伸縮装置が経年劣化により止水性能が低下し、凍結防止剤の混入した漏水により塩害を起こしている。PC橋の場合、損傷が桁端のPC 鋼材定着部まで及ぶと、設計上グラウトにより付着が担保されているものの、グラウト不良があれば事態は深刻である。
 こうした損傷はとにかく漏水を止めることである。しかしながら、伸縮装置そのものに損傷が見られなかったり、狭隘な桁遊間部の状態が目視では確認困難なこともあり、損傷が進行してしまうことが、たびたび確認されている。
 こうしたことから「漏水を止める」ため、伸縮装置に対する要求性能と性能確認方法について規定化した。その結果止水性能の高い伸縮装置の開発が進み、実用化されてきている。図-5に止水性能を高めた伸縮装置のイメージ図を示すが、二重止水を基本としている。

 


       写真-2 コンクリート桁端部の塩害          図-5 二重止水のイメージ

 

 また、単純桁の架違い部の床版連結や延長床版を設置することも漏水対策には有効であり実施事例も増えてきている。さらに、伸縮装置を取替えずに止水する技術開発も進められ、遊間部に止水材を充填し止水層を設ける、「小遊間止水工」なども実用化され、塩害等の変状が出ていない遊間部に適用されている。
 止水性能を高める一方で、漏水があったとしてもコンクリートや鋼材の腐食を予防するために、端部のコンクリートは表面被覆することで予防保全を併せて実施することも不可欠であろう。
 また、狭隘な個所は維持管理が困難となっていることから、そもそもこうした桁端部は設計の段階から構造的配慮が必要であり、十分な維持管理スペースを取ることを標準としている。(図‐6)

 


図-6 維持管理し易い桁端例

 

 既設橋の桁端部の遊間部の調査・補修方法については、狭小空間を小型カメラの画像による状態確認が可能であり、劣化したコンクリートをウォタージェットによるはつり、断面修復する工法も開発され、現場に適用されている。
 高速道路で顕在化している桁端部や床版の塩害は、凍結防止剤の影響が大きい。諸対策と並行して塩化ナトリウムに代わる材料の開発が待たれているところである。この場合、路面を安全に保つための凝固点降下作用と融氷力の基本性能を持ったうえで、鋼材腐食を促進させず、植物等環境への影響も小さく、安価であることが求められる。

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