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インタビュー詳細

俵山トンネルルートは2019年9月に全線復旧

2020年新春インタビュー 熊本復興事務所 新しい阿蘇大橋の張出架設が進捗

国土交通省
九州地方整備局
熊本復興事務所長
大榎 謙 氏

推定活断層と交差するアプローチ部のP3~PR1間は単純桁に

 断層変位対策としてP3とPR1の沓座を橋軸直角方向に拡幅

 ――国道325号阿蘇大橋架替は

 大榎 事業区間は延長約1kmとなり、2020年度の全線開通を目指して鋭意施工中です。事業区間のうち、橋梁区間はアプローチ部(約180m)と渡河部(約345m)で構成しています。崩落した阿蘇大橋の橋長は206mでしたが、本橋はアプローチ部までを含めると500mを超えるものとなります。

 架設位置は崩落した元の阿蘇大橋よりも約600m下流側で、右岸(立野側)と左岸(南阿蘇側)では高低差が約40mあり、橋梁前後では約6%勾配、橋梁では約3.7%勾配となります。



位置図


 ――アプローチ部と渡河部の橋梁形式を教えてください

 大榎 アプローチ部は鋼3径間連続鈑桁橋(橋長115m)+鋼単純箱桁橋(橋長65m)です。渡河部はPC3径間連続ラーメン箱桁橋で、最大支間長は165m(PR2~PR3間)です。

 ――渡河部でPC3径間連続ラーメン箱桁橋を選定した理由は

 大榎 国道325号旧阿蘇大橋は、斜面崩壊付近に位置していましたが、4月16日の本震により落橋しました。阿蘇大橋の架け替え位置については、有識者等で構成される技術検討会において審議され、旧阿蘇大橋架橋位置付近を中心に黒川の上流側、下流側にて検討を行いましたが、次の観点を重視して評価を行いました。

 一つ目は復旧の時期が不明確な斜面崩壊箇所や周辺斜面の影響を回避できること、二つ目は主交通方向(熊本⇔南阿蘇)を考慮した迂回感の無いルートであり南阿蘇中心部と立野地区のコミュニティー確保にも寄与すること。この二つ観点を踏まえ、複数案の比較検討を行い最終的には元の阿蘇大橋の位置から黒川下流約600mの位置に架け替えることが決定しました。

 さらに、この架け替え位置に橋梁を計画するにあたっては、安全性、施工性、景観性に着眼し検討を行いました。

 安全性については、黒川右岸の推定活断層を避けた下部構造の配置ができること。また地盤変状が生じた場合でも落橋や倒壊に至りにくい構造であること。

 施工性については可能な限り工期の短い構造であること。

 景観性については阿蘇観光の玄関口としてシンボル性にも配慮した構造であること。

 以上のことに着眼し検討を行いました。その結果、主桁を主に支持する中間橋脚が推定活断層より離れており断層変位が橋脚に与える影響が小さいこと、また斜面変状により端支点を消失状況となっても、落橋を免れた阿蘇長陽大橋と同種な張出し架設工法の形式であり斜面変状の影響に対して有利であること、また施工工期が短く、景観性においてもシンプルな構造であり周辺の阿蘇の風景になじむこと等を総合的に評価し、PC3径間連続ラーメン箱桁橋を最適橋梁形式に選定しました。

 ――熊本地震を考慮した構造上の工夫がありましたら教えてください

 大榎 架け替える阿蘇大橋は、推定活断層を跨ぐことを想定しているため、将来的な断層変位によるズレに対する配慮が必要となります。今回の熊本地震における架橋地付近の断層変位量は1.4mであったことを踏まえ、想定される断層変位量を1.4mとし設計に反映させました。この変位レベルに対しては落橋しないように対応しつつ、それ以上の変位が生じても容易には落橋しにくくなるように、さらには復旧性も考えて構造的な配慮を行いました。

 具体的には、アプローチ部の推定活断層を跨ぐ区間は単純桁橋構造とし、断層変位により地盤に追随して下部構造が大きく移動する様な状況になった際は、構造部材の破壊を支承で先に生じさせ、下部構造や隣接する上部構造に不測な力を伝達させないように配慮しました。また支承部が破壊しても単純桁の支点部が下部構造の頂部から脱落しにくくなるように、橋軸方向とともに橋軸直角方向の桁かかり長の確保に配慮しています。



熊本地震を考慮した工夫(1)


熊本地震を考慮した工夫(2)


 その他にも機能回復性を高めるため、橋脚の橋座部を支承交換の際に必要となるジャッキアップ設置用のスペースを考慮した大きさとしたり、高架部及び断層交差部の桁はベント架設で施工を計画し、その施工段階で構築されるベントの基礎は計画的に存置するなど桁がずれた時の応急措置や復旧工事に要する工期を少しでも短縮するための配慮を行っています。


アプローチ部は床版打設まで施工完了

 上部工はトラッククレーン+ベント工法で架設

 ――アプローチ部の進捗状況は

 大榎 床版打設(現場打ちRC床版)まで完了しています。

 ――下部工の工期は

 大榎 契約工期は2017年6月28日から2018年10月10日です。

 ――基礎は

 大榎 すべて場所打ち杭です。P3の杭長が最も長く20.5mとなります。

 ――場所打ち杭を採用した理由は

 大榎 最も実績が豊富な杭形式であり、中間層の礫、転石や支持岩盤への適応性が高いため、場所打ち杭としました。

 ――橋台と橋脚の形式と橋脚高を教えてください

 大榎 逆T式橋台(橋台高:20.8m)と張出式橋脚3基で、橋脚高はP1が19.5m、P2が21.1m、P3が21.0mです。


アプローチ部 下部工の施工


下部工 完成


 ――上部工架設の開始時期と完了時期、および架設方法は

 大榎 A1~P3間の架設は2018年11月に開始して、2019年2月に完了しました。P3~PR1間は2019年6月の約1カ月で完了しています。

 A1~P3間は、架設地付近が平地であったため、機動力のあるトラッククレーン架設としました。P3~PR1間は斜面となっているため、仮設構台を構築し、同様にトラッククレーン架設としています。

 架設ステップは、A1~P3間は橋脚間にベントを1基構築し、A1側から順次架設しました。P3~PR1間は橋脚間にベントを3基構築し、P3側から順次架設をしています。



アプローチ部 上部工の施工


上部工 完成