連結売上を2025年度で310億円超目指す
富士ピー・エス 堤 忠彦新社長インタビュー
株式会社富士ピー・エス
代表取締役社長
堤 忠彦 氏
人材の育成、会社の魅力を向上させるためにも海外事業は行う
外国人技術者や女性技術者も積極的に雇用
――最後に海外への展開はどのように考えていますか。社長の海外経験も豊かです。成功している企業は海外支社の「現地化」(日本人勤務であっても海外駐在の長期化、現地技術者の子会社の要職への登用)を進めていますが
堤 日本の建設会社の海外での「現地化」は非常に遅れてしまったと思います。私が海外勤務していたのは30年以上前でしたが、既にベクトルは今仰ったような方向に振れていたと思います。
しかし、日本企業は自国の景気に合わせて人員が自国と海外を行ったり来たりしていました。だから日本の建設会社の海外展開は上手くいっていません。
当社も海外展開を選択肢として考えていますが、それは急にはできません。ゼネコンでさえも50年の歴史を持ってなお、現状の様相です。
当社は、ミャンマーに現地法人を設立して、プレキャスト製品製造事業も視野に入れて調査を進めています。一方で工事もやりたいと思っていますが、元請でやれるほどの体力が当社にはないことも自覚していますので、スーパーゼネコンのJVのサブに入って勉強したいと考えています。
当面は海外事業で収益を期待していません。
――では、短期的に海外事業で何を得ようと考えておられるのですか
堤 企業としての魅力を付けるためです。若い人で海外での仕事に魅力を感じている人はたくさんいます。海外という選択肢がゼロの企業では、そういう進取に富む若い人から選ばれなくなってしまうためです。現在の社員の中でも海外事業に挑戦してみたいという人は少なからずいます。そのためにも会社としてそのフィールドを用意してあげたいのです。
――技術者の供給源としての海外はどのように考えていますか
堤 当社は外国人技術者の雇用を始めてから、今年で6年目に入っています。ミャンマーの大学を卒業した技術者を毎年4人程度ずつ雇用しており、その数は24人となっています。彼らは優秀です。現場、工場、設計の様々な分野で活躍しています。雇用した外国人技術者の中にはもちろん女性も含まれています。
ただ、彼らの中には帰国してミャンマーで働きたいという方も将来的には出てくるでしょうから、彼らのスキルを活かすためにも、ミャンマーでの事業展開を進めていきたいと考えています。
――女性の雇用や働き方改革について
堤 全社的に女性が活躍する会社にすることは重要な施策と位置付けています。中期経営計画の中では、女性技術者の比率を現在の2.9%から10%程度にしたいと考えています。とりわけ女性技術者は土木2人、建築2人と極めて少数ですが、これを改善するため、今年度の採用活動では女性を積極的に雇用するよう努力しました。その結果、女性技術者を4人採用することができそうです。
加えて、女性が働きやすくなるように、全社的にあらゆる現場を見直しています。トイレなどのハードだけではなく、ソフト面、例えば就業規則の女性目線からの見直しもかけます。
働き方改革は、週休2日制の導入についてPC建協でも2024年から完全実施することを求められており、当社もそれに向けて環境整備を進めています。しかし、働き方改革の本丸というのは働き甲斐改革だと思っています。本質的な仕事の喜びを感じさせてやることが一番大事です。それによって良い休暇も取ることができます。当然、週休2日制の完全実施、長時間労働の抑制は進めていきます。それと同時に現場の人間関係の円滑化や仕事の質の向上、個人のキャリアアップといった働き甲斐改革を進めたいと考えています。
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――ここでいう「仕事の質」、「人間関係」とは何ですか
堤 「仕事の質」とは現場において、社員を信頼して、責任ある仕事をまかせてあげるということです。「人間関係」は、言葉遣いや態度の問題です。とりわけ老若男女、経験年数関係なく、リスペクトした関係を構築することを全社的に徹底したいと考えています。建設業は今まで「親方と弟子」的な上下関係できました。緊張しなければいけない局面においてはそれが必要な時もありますが、常態でもそれでいくことは今の時代、ややもすれば、ハラスメントとなり好ましいものではありません。そのためにもリスペクトの徹底をはかることで、現場のメンタルヘルスを健常に保つことが重要になります。
――ありがとうございました
(2019年11月7日掲載)