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大規模修繕、リフレッシュを着実に進める

名古屋高速 設立50周年、供用40周年を迎えてどのように長寿命化を図っていくか

名古屋高速道路公社
整備部長

浅井 厚視

公開日:2019.09.25

2019-21年度の3年間で22.7kmを対策
 現在は9.6kmが完了

 ――大規模更新のメニューと進捗状況は
 浅井 全体計画としては、2015-29年までの15年間という期間で対策を進めているところです。対象は床版の下面からのひび割れ樹脂注入(IPH工法など)および二方向アラミド繊維補強シートや剥落防止工などを行う補修補強、RC橋脚の補修、伸縮装置や樋の補修、配水管の取替、塗装の塗り替え、床版上面の防水です。メインとなる床版補強の対象延長は81.2kmの内37.9kmが対象です。現在は25%に当たる9.6kmが完了しています。
 2019-21年の3年間で、さらに22.7kmまで対策し、21年度末には全体の6割について床版補強を完了させたく思っています。

 


大規模修繕①(ひび割れ注入/鉄筋防錆工)

大規模修繕②断面修復及び繊維シート貼付け工

床版は18工区、塗装は13工区強の31工区が稼働
 今年と来年が施工のピーク

 ――野心的な計画ですが、NEXCO各社や首都高速・阪神高速も大規模更新・修繕に着手する中、人手は確保できそうですか
 浅井 名古屋高速では、発注案件に対して大体5~7社が入札していただける状態です。年間7~8本ほど発注しますが、不調・不落が生じたことはありません。工期は大体3年工期で10~15億円ぐらいの規模の床版修繕工事となっています。これを毎年7~8本出しており、終わったころに新しい発注があるという好循環になるよう意識して発注しています。供用後20年が過ぎてくると、施工不良やコンクリートの損傷なども見えてくるので、補強シートを張ることで予防的修繕に持っていくことができると考えています。事業的にはちょうど今年と来年がピークといえます。現在(2019年7月末現在)は床版で18工区、塗装で13工区強、併せて31工区の現場が動いています。



施工中の大規模修繕事業(主に床版下面補強など)

 ――床版の取替が必要になった箇所はありませんか
 浅井 床版の取替が必要な箇所は、現在のところありません。小牧線より前に建設した箇所は防水工が施工されていませんでした。大規模修繕の対象になっているところは、リフレッシュ工事時に舗装を打ち換え、その際複合床版防水を行うことで上部からの水の浸入を防ぐことが重要です。

床版防水は複合床版防水工法を採用
 樋はステンレスからウレタン製の防塵フォームへ

 ――実際に床版防水の敷設状況は
 浅井 高速11号小牧線、高速1号楠線、高速5号万場線で、2013~17年にかけてリフレッシュ工事の際に複合床版防水を設置しています。高速3号大高線は2011、12年に床版防水を施工していますが、旧マニュアルに基づく塗膜防水工であるため耐久性の面では劣ります。高速3号大高線の防水は設置後、5,6年が経過しており、一部漏水箇所がありますので、高速3号大高線のリフレッシュ工事で複合床版防水工法を施工することを考えています。
 未防水箇所に先行して補強シートを張るケースもごく僅かですがあります。そうした箇所は早期に防水を設置するよう努めています。床版によっては塩化物イオン含有量が相当量確認されている箇所もあり、そうした箇所は補強を行っても注意が必要ですし、ひび割れにはIPH工法などを用いて補修しています。
 ――RC橋脚の補修などは
 浅井 RC橋脚の補修は剥落防止工が主です。伸縮装置のステンレス樋が塩害で大きな腐食損傷を被っているため、ウレタン製の防塵フォームを使って非排水構造としています。ただ、中期的には排水構造にして、上手く水を無害な箇所に導水していく手法を模索できないかと考えています。
 ――劣化度の悪化による大規模修繕に必要な費用の上擦れはあるでしょうか
 浅井 基本的には昭和48年道路橋示方書に基づいた設計で建設された区間や、平成6年の車両大型化に対応した設計がされていない区間の床版の補修・補強が最優先課題となりますので、まずはそうした箇所を中心に補修・補強を進めていきます。同時に床版防水にしても未設置個所に敷設するという考えで、大規模修繕対象路線37.9kmを1,250億円かけてリニューアルする計画です。供用が古い路線から計画的に工事を進めていることもあり、現時点では点検をする中で、費用的に上擦れを起こすような、大きな劣化度の変化が起きている箇所はありません。そのため費用の変更もありません。

床版上面補修の際のWJはつり工を模索

 ――床版の補修補強方法と新技術の採用について
 浅井 床版上面補修の際にWJを用いたはつりを行い補修できないか、ある工区で試験しています。従来はブレーカーによる手ばつりを行っていましたが、劣化部だけでなく、健全部にまでマイクロクラック等による損傷を与えていました。WJは劣化部だけはつり取り、健全部には影響を与えない工法ですが、施工時の音の問題など都市部での適用は課題が多いと考えています。


WJの試験施工

 ――WJを床版に使う場合の留意点として排水処理と施工後の養生(表面含水率)はどのように考えていますか
 浅井 (表面含水率を早期に3%以下にするため)ヒーターを使うという提案を受けています。水養生については、現場が半断面での夜間施工を強いられるため、バキュームしながらWJを行うことで水の飛散が最小限になるように努めます。
 後は時間当たりの施工量がどのくらいできるかどうかが肝です。また、施工時の音についてもどれくらい出るのか確認しています。
 ――WJはハンドガンを想定していますか、機械式を想定していますか
 浅井 機械式のWJを想定しています。

新川中橋工区の一部区間でアンダーデッキパネルを採用
 複合床版防水工法は規格変更を考えず

 ――他には
 浅井 高速1号楠線の新川中橋工区の一部区間で、床版厚が170~180mmと薄い床版パネルの補強にアンダーデッキパネルを採用しています。同パネルはデッキプレート、縦リブ、横リブ、ブラケット、添接板などの部材からなり、損傷した床版を下面から鋼製パネルで補強する工法です。
 既設床版とデッキプレートの隙間に充填剤を注入して補強します。既設主桁への荷重伝達は、既設主桁に取り付けたブラケットと横リブを添接板で接合することにより行います。
 ――複合床版防水工法について首都高速や阪神高速タイプのものを採用する考えはありますか
 浅井 試験室レベルで首都高速タイプの複合床版防水工法と従来タイプとの性状比較を行いましたが既存の複合床版防水工に対し明確な有意差は確認できませんでした。首都高速タイプは低温時での施工が可能なことがメリットですが、当社ではリフレッシュ工事にて床版防水工を施工するのが秋ごろであり、低温下での施工は必要なく、それほどメリットはないと判断しています。


複合床版防水工法の規格は現行を堅持
塗り替え面積は年間30万㎡前後を推移

 ――塗り替え塗装の現状は
 浅井 大規模修繕に合わせて塗り替えています。ここ3年で発注した塗り替え面積は2016年度が約30万7千㎡、17年度が約35万2千㎡、18年度が約28万㎡となっています。ケレン手法は3種ケレンで済むように15年1回の塗り替えサイクルで施工しています。一番古い高速3号大高線で2回目の塗り替えで、塗膜厚はそれほど厚くありません。






ケレン状況

高塗着スプレーによる塗替え塗装

 ――厚労省からの通達で3種、4種ケレンでもトップコートをケレンした際に、法律で定められた以上の鉛や六価クロムが検出されるため、安全対策が改めて徹底されていますが、名古屋高速では
 浅井 有害物質の内、PCBは塗装した年次が比較的新しいためありません。鉛や六価クロムについては、ケレン時に吸い込まないようにマスクや防護服を装備すると共に、飛散防止養生、セキュリティルームを設けて外に有害物質が出ないようにしています。


各種設備
 ――ありがとうございました
(2019年9月25日掲載)

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