道路構造物ジャーナルNET

待ったなしの維持管理対策

阪神高速道路 40年以上経過している構造物は4割強

阪神高速道路
保全交通部長

谷口 信彦

公開日:2019.06.20

 阪神高速道路は、阪神圏250.4kmの高速道路を管理している。日平均交通量は72.1万台で平均の大型車混入率は9.7%となっている。40年以上経過している構造物は4割強に達しており、計画的な保全が必要だ。その内容について詳細を谷口信彦保全交通部長に聞いた。(井手迫瑞樹)

交通量は72.1万台/日 大混率は9.7%
 判定区分Ⅲ、Ⅱは一定量存在

 ――管内の概要は
 谷口部長 4月1日に8号京都線(京都圏10.1km)が京都市とNEXCO西日本に移管されたことにより、管理延長は阪神圏のみの250.4kmとなりました。交通量は72.1万台/日で、大型車混入率は9.7%です。
 構造物比率では、橋梁区間80.7%、トンネル区間10.7%、土工区間8.7%となっており、大半が構造物主体の道路になっています。橋梁区間については約8割のうち、鋼桁が64.3%、コンクリート桁16.4%で、都市内で複雑な線形を有することから鋼桁主体の構造物になっています。
 供用年次別の延長では、40年以上経過している橋梁・トンネル・土工が40.2%です。
 トンネルの工法別をチューブ延長割合からみると、NATM工法64.9%、開削工法28.9%、在来工法6.2%となっています。北神戸線のトンネルは在来工法が多くなっています。
 供用年数では、大阪地区や神戸地区の中心部が先行してネットワークが拡大してきていますので、大阪池田線、守口線、森小路線、堺線、神戸西宮線などが供用から40年以上経過しています。
 ――これまでの点検結果は
 谷口 2014年度から2018年度までの点検で、橋梁、トンネル、大型カルバート、門型標識などの全対象構造物における点検率は100%となりました。それぞれの判定区分は図表(下記参照 )のとおりです(京都圏を含む)。判定区分Ⅳはなく、ⅡとⅢは一定量の割合であります。

 主な損傷傾向としては、鋼床版では疲労き裂 が近年増加しており、コンクリート床版では補強のために接着した鋼板に錆や浮きが発生しています。鋼桁では塗膜劣化やジョイント部からの漏水による腐食 、コンクリート桁ではひび割れ、遊離石灰 、剥離、鉄筋露出、間詰め部分の損傷が見られています。コンクリート橋脚ではひび割れやASRによる損傷が出ています。トンネルでは覆工部のひび割れや漏水が確認されています。

疲労亀裂拡大部

RC床版の補強鋼板の錆

鋼桁の塗膜劣化

鋼桁の端部腐食

コンクリートの遊離石灰

間詰部の損傷

橋脚のASR損傷

 ――トンネルにおける在来工法のひび割れは、軸方向、直角方向のどちらに発生していますか
 谷口 主に軸方向のひび割れですが、いずれも軽微なものであり、大きな損傷として捉えていません。


トンネルの漏水および遊離石灰

 ――地山由来のひび割れはないということでしょうか
 谷口 そうです。

鋼板接着補強したRC床版に損傷も
 玉出入口でUFC床版・PC床版に取替え

 ――コンクリート床版の鋼板接着で錆が発生しているとのことですが、近年の阪神高速道路の論文などを読むと、鋼板接着部の母床版にひび割れが発生しているケースもありますが
 谷口 通常の点検で確認されるのが鋼板接着部の状況ですが、そのようなものもふまえて、大規模修繕事業で取替えなどの取り組みを開始したところです。堺線の玉出入口で6径間の床版を取替えました。試験施工もかねて、3径間にUFC床版(平板型) を採用し、残り3径間をPC床版 としました。


UFC床版の施工

PC床版の架設状況

鋼床版の疲労亀裂割合高く、湾岸線では塗膜劣化も

 ――路線別での損傷状況は
 谷口 大型車混入率が湾岸線では約30%、神戸線の西部では約20%と高くなっており、鋼床版の疲労き裂の割合が大きく、また湾岸線では塗膜劣化の割合も大きくなっています。
 ――ASRが発生している路線は
 谷口 松原線や堺線等で発生しています。
 ――先ほどの鋼床版やコンクリート床版の損傷は判定区分Ⅱでしょうか、あるいはⅢでしょうか
 谷口 主にⅢとなります。

橋脚耐震補強は2021年度末の完了目指す
 支承部の補強は2026年度末目指す

 ――耐震補強の進捗状況は
 谷口 レベル2地震動に対して倒壊、落橋しないための対策(耐震性能3)については完了していて、熊本地震の被災をふまえてレベル2地震動に対して速やかに機能回復できる対策(耐震性能2)を進めています。現在の進捗率は91%(2017年度末時点)で、橋脚の耐震補強は2021年度末の完了を目指しています。また、支承部の補強は松原線~環状線~神戸線を結ぶ東西軸の路線から進める計画としており、2026年度末の完了を目指しています。橋脚耐震補強はすべての工事が発注済みで、上部耐震補強も順次発注および契約を進めており、1件が公募手続き中で、第3四半期に2件を公告予定です。
 ――支承補強装置工5,094基、工場製作工3,023tなどと1件あたりの工事数量が大きいですね
 谷口 支承が逸脱しないように既設支承の機能を補完する目的で、水平力分担構造の設置なども予定しており、詳細はこれから詰めていきます。
 ――現在、耐震補強施工中のものは
 谷口 現在施工中の工事は鋼製橋脚等耐震補強工事(30-大管)です。4号湾岸線、5号湾岸線、11号池田線・延伸部他が対象で、鋼製橋脚の(鋼製橋脚・矩形)リブ補強工(新設・既設)143基、(鋼製橋脚・円形)鋼板巻立工18基、RC橋脚の鋼板巻立工10基を施工しています。

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