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インタビュー詳細

会員に対して安全・環境汚染対策を発信

橋塗協 奈良間会長インタビュー

一般社団法人 日本橋梁・鋼構造物塗装技術協会
会長
奈良間 力 氏

発注案件の大口化は専門業者として問題

 技術者、技能士の計画的な育成も困難に


――水門を含めた橋のことですから橋塗協さんが前面に出るべきだと思います。

 奈良間 現実的には、足場から産廃までを含めた発注形態になっていません。橋塗協として、産廃までの試算はできますが、トータルでの発注形態となるように陳情していくべきなのかはわかりません。県からの問い合わせがあったとしても、(仮に1種ケレンの場合)工法がエコクリーンでもオープンシステムでも、試算はしてあります。個別対応は協会として可能ですが、産廃までを含めた一気通貫での、維持管理の費用対効果が認められる工事の発注方法の検討を協会としてやるのかは疑問です。

 ――それをいま実際にやっているのは一業者です。業者単位で動いて業者単位の力で解決していますが、難しいところもあります。団体として橋塗協さんが存在しているので、マニュアルや手引きを作成する、あるいは意見をくみ上げて中央に陳情していくことをしなければ、大都市の自治体や国交省、各高速道路会社・公社などの意識の高い機関は対応すると思いますが、情報過疎になっている自治体は変わらないと思います。

 奈良間 確かに一業者ではなかなか難しい。最終的にはコストの問題になりますが、会員から発注者との仲介を頼まれるケースはあります。発注者に会員が困っていること、負荷がかかっていることを伝えて、協会としては見直しをして欲しい、と発注者に伝えるお手伝いをしています。

 協会としてどこまできるかを考えているところですが、国交省さんに対しては橋塗協が窓口として機能しなければならないと思います。会員の最大の発注者は国交省さんですので、歩掛の見直しや安全対策費の費用負担について、当初見積もりからプラスされたものについては支払いをして欲しい、そうしないと会社が潰れてしまうという、という陳情はさせていただいています。ただ、さまざまなケースがあり、首都高速道路さんのケースでも昨年から1年間かけて、各種安全対策や塗膜処理方法などの実験を行い、ある程度の実情は把握していると思います。それが今回出たマニュアルだと考えています。

 ――この問題は規則が市場をシュリンクさせています。なんとかしなければなりません。

 奈良間 環境汚染対策を含めて安全サイド面でコストがかかり、そこに社会保険の問題も加わり実コストがかなり上がってきています。結果として発注ペースを落とさざるを得なくなることや、大型発注で塗装工事として請け負いにくい規模になってくる可能性があります。そうなると、業者にかなりの体力がないと不可能です。そこを橋塗協としては注視しています。

最近は国交省さんからの発注案件が非常に低調です。塗装工事に関して言えば、さらに低調になっています。塗装工事は単独で発注されるのではなく、塗装を含めた保全維持工事として大口化された案件のなかに組み込まれています。塗装会社が元請として塗装工事を行う割合は全体の1割程度しかありません。塗装業者はゼネコンさんの下請けに入れという考えになっているとすれば、専門工事業として非常に成り立ちにくくなります。その実情は国交省さんに強く陳情しています。また、この状況は長期的にみても業界を疲弊させ、鋼橋の保全に悪影響を与えかねない状態です。

 ――なぜですか

 奈良間 元請けとしての平準的な工事受注ができなくなっているので、技術者、技能士の計画的な育成ができなくなり、担い手の確保が難しい環境になっているからです。

 塗装は単に塗ればいいものではありません。少なくとも橋梁など道路構造物では、そんなに簡単なものではありません。千差万別の仕様、部位があり、その作業は非常にプロフェッショナルな世界なので、簡単に考えて欲しくない、と発注者には説明しています。1年や2年の実習でできるようになる世界ではありません。



塗装は塗ればいいというものではない。職人芸でやる部分は必ず残る

 政府は、担い手が少なくなった分は生産性でカバーすると言っていますが、塗装業界は労働集約的な業種で生産性が低い分野です。生産性のアップに関しては、たとえば高塗着スプレーなども選択肢となるでしょうが……。結局、一律的にはできません。生産性をあげる手法、工法があったとしても、どうしても労働集約的に、職人芸でやらざるを得ない部分は必ず残るのです。

 ブラストひとつとっても、写真判定基準はありますが、その線引きは非常にあいまいで、現場任せになっているのが実態です。しかし、PCBや鉛を含む塗膜については、最終の廃棄物処理まで責任を持たなければいけないわけですから、非常に厳密に判定しなければなりません。こうした技術や知見も一朝一夕に身につくものではないのです。


塗膜除去工法・材料を有する会社が新規入会

 九州では今年度から支部を立ち上げ

 ――今回、橋塗協さんに剥離除去工法・材料を有する会社が賛助会員として入りました。

 奈良間 山一化学さんと三彩化工さん好川産業さんとJFEエンジニアリングさん、ヤマダインフラテクノスさんの5社です。

 ――各社が入ったのは大きな力だと思います。

 奈良間 特に剥離剤メーカーには安全対策や基準を考える研究会がなかったので、研究会を発足したいというお話を聞いています。橋塗協としても協力できることは協力していきます。

 ――橋塗協さんは現在正会員が80社、賛助会員が14社で少しずつ増えてきています。やはり数は力になると思いますから、会員を増やすために橋塗協としてやっていること、また会員が享受できるメリットをどのようなものにしていく予定でしょうか。

 奈良間 会長職を4年間やってきて、以前と比べて行動力はでてきていますが、活動内容のPRが不十分ですので高めていきたいと考えています。協会としての機能と存在感をもっと行政や業界に対して発信していかなければなりません。

 ――会員がいない県もあります。

 奈良間 九州地区は一時期ゼロまでいきましたが、新しく2、3社に会員になっていただきました。今年度から九州支部を立ち上げる予定です。ほかにもまだ会員の空白地域はありますので、PRを含めて地縁を生かしてやっていきます。

 ――会員は、安全費などを標準歩掛の積算に入れていくという協会としての努力を一番見ていると思います。また、たとえば剥離剤メーカーさんとしても、中央とのパイプがある協会の看板をオールジャパン的に技術発展させるものとして使いたいという思いがあるのではないでしょうか。地方の塗装店が協会に入るメリットも伝えていかなければならないと思います。

 奈良間 橋塗協としては、情報やネットワークを会員相互で共有できる場や接点を提供しています。行政に対しても一業者では言えないことを、地区で取り上げて陳情をしています。また、技術的かつコスト的な難工事に直面して困った会員が協会に相談にきて、行政との橋渡しや説明を行うということもしています。

 そのような保険的な要素と、新しい技術情報の共有、取得が協会加盟のメリットです。

 ――会員を歩留まりさせるためには、協会として新しい技術を提供することや、技術的に優れた方をこれまで以上に巡回させることで、つないでいくことも重要ではないでしょうか。

 奈良間 まさにそのとおりです。私もできる限り各地区に行って、そのような接点を増やしていますし、地区メンバーとの交流意見交換会を行っています。根本的には人間関係のつながりが大事だと思っています。

 ――九州支部の設置を予定しているという話をされましたが、九州には元会員だった橋梁塗装を中心とした九州鋼構造物塗装技術協会があります。また、北海道は独自のNPO組織がある。そのような地元の協会とのつながりは模索していくのでしょうか。

 奈良間 同じジャンルである地元協会との壁を作るつもりはありません。塗装業界としてまとまって、もっと力を合わせていかなければならないと考えています。