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インタビュー詳細

他社に自社の技術を使ってもらう

「ピーエス三菱ファン」のパートナーづくりを進める 

株式会社ピーエス三菱
代表取締役社長
藤井 敏道 氏

 ピーエス三菱は、2年連続で純利益が過去最高を更新するなど、業績は好調に推移している。一方で昨年度の受注高も、好調なPC新設橋梁分野が牽引し、堅調さを保つ。一方、大規模更新・大規模修繕分野においては、次代の重要な事業分野と捉えつつも、規模とは裏腹の事業的な厳しさを認識し、自社の工事だけで儲けるのではなく、グループ全体、あるいは各地域のパートナーに技術や材料、資材・機材を供給することで稼ぎ、勝ち残っていく方針だ。その詳細について同社の藤井敏道社長に聞いた。(井手迫瑞樹)


元々は有機化学を専攻

 ――まずご経歴から

 藤井社長 私は元々「化(け)学屋」です。当社の社長に就任したのは2年前で、それまでは三菱マテリアルに(1977年入社)37年間勤務していました。三菱マテリアルではセメント製造から始まって、海外エンジニアリング、製造工場などに従事してきました。実は大学では有機化学を専攻していて、セメントとはそもそも関係が無かったんですよ。

 ――有機化学を専攻していたのに無機ですか

 藤井 当時は、不況(第二次オイルショック)で就職口が無くて、別に専攻に縛られることもないだろうと思って。拘っていたら、今頃は狭い範囲の研究者として終わっていたかもしれず、結果的に良い選択をしたと思っています。

 ――三菱マテリアル時代はどのような部署で勤務されてきたのですか

 藤井 入社して6年半はセメント工場に勤務し、それから6年半が海外エンジニアリング、それから12年間が九州工場勤務、本社生産部、工場長、本社技術統括などを経て、常務、副社長を務め、先ほど申し上げたように2年前に当社の社長に就任しました。社長就任前に4年間当社の社外取締役を務めています。


16年3月期 純利益は過去最高

 来期受注高は厳しめに見積もる

 ――さて、ではピーエス三菱のここ3年の業績と今年度の見通しを教えてください

 藤井 売上高は2014年3月期が前年比14.2%増の104,311百万円、15年3月期が同0.6%増の104,906百万円、16年3月期は同8.4%減の96,066百万円となっています。16年3月期に売上高が急減した理由は主に前期繰越工事高が減少したためです。ただし売上高利益、営業利益、経常利益は順調に推移しており、純利益も1,817百万円と前年比8.3%増となり、会社発足以来の最高益を更新しました。利益率の向上は、選別受注により建築建設事業の採算性が大きく改善し、売上総利益が増加したこと、人件費の増加、貸倒引当金の繰入れにより営業利益は10.9%の増加に留まりますが、支払手数料の減少により、経常利益は26.0%増加したことが大きな要因となっています。

 来期の予想ですが、売上高は前年比3.1%増の99,000百万円を見込んでいます。PC土木の前期繰越工事の増加による順調な工事進捗が増収見込みの主な理由です。ただし利益率は土木建設事業が順調に推移する一方で、建築建設事業は、厳しい競争環境により、売上高を少なめに見積もっていることから前年比2.6%減と厳しめに見ています。

 受注高は、昨年は大幅にアップしました。特に土木建設事業は669億円超と上出来でした。NEXCO各社の大型PC橋梁案件を受注できたことが大きく奏功しました。しかし、今後はNEXCO案件が減っていく中、国交省や自治体の需要が少なく、右肩上がりというわけにはいかないと思います。そのため来期の受注高は、土木分野で約20%減の53,640百万円、総額でも約12%減の同102,000百万円を見込んでいます。

 ――なかなか厳しい見立てですね

 藤井 私が建設業出身者の方と違うのは、建設業に対して素材を供給する立場の視点を有していることです。その視点から見ると、建設業界は成熟型の産業であり、東日本大震災などの特需はありますが……ある所に落ち着くと考えています。


最終的なセメント需要は3,800万㌧前後で推移

 10年後には新設・保全比率は半々までに変化

 ――ある所とは?

 藤井 セメントの需要は昨年度4,300万㌧を切る数値となりましたが、最終的にはもう少し需要は落ちて、3,800万㌧ぐらいになり、そこからはレベルに推移すると考えています。その根拠は国民1人当たりのセメント使用量を300~400㌧とみなした数値です。ただ、震災が起き、国土強靭化政策などが打ち出されてきて、セメント各社はあわてて震災前に締めていた供給を開き始めました。しかし思ったほど需要はない、というのが建設業界を見る周りの目です。

 ――ただ、他のPCファブの経営陣に話を聞くと経営環境を下ぶれに見過ぎた。もう少し楽観視しても良いのではないか、という話も聞きます

 藤井 昨年度当初のセメント需要予測は4,800~5,000万㌧だったのが蓋を開けてみれば4,300万㌧を切っているわけで、それが建設業の供給(マンパワー不足)にあるのであれば、もう少し落ち方が緩やかになるという見方をしていく必要があります。しかし最終的には下がっていくでしょう。

 PCに限って言えば状況は少々異なることも確かです。新設はやはり減っていきますが、大規模更新需要の拡大によって、新設と保全の比率は10年後に半々になり、今よりも需要は増える可能性があると考えます。但し需要があるからといって利益も上がるとは限りません。大規模更新の需要をどのように利益を出す形で取り込んでいくかが、当社も含めてPCファブの大きな課題であると考えています。


中計最終年度は営業利益29億円目指す

 生産性が良くない大規模更新(PCaPC床版取替)事業

 ――そうした経営環境判断を行った上でピーエス三菱の中・長期的な方向性は

 藤井 このほど発表した中期経営計画では、2018年度に受注高1130億円、売上高1100億円、営業利益29億円、営業利益率2.6%以上を目指します。

 中期計画というのは足元の話ですから、昨年NEXCO案件が多く受注でき、2、3年先にはその売り上げが立ちますので十分に達成可能です。但し、今期は発注案件も少なく、売上高が上がる繰越案件が少なく厳しい状況であり、短期的に売り上げ計上可能な案件を受注するよう発破をかけています。土木建設事業とりわけPC橋梁事業は、これからは大規模更新・大規模修繕を有力な市場ととらえていかなくてはなりません。しかし、大規模更新事業は、生産性が良くありません。そこを上手くやれるようにして、他社との差別化を図らないといけない。そうした技術の一つにNEXCO総研と共同開発した一車線のみの規制で床版取替施工可能な「半断面床版取替工法」があります。


半断面床版取替工法の特徴と施工手順例


 ――新設橋梁が頭打ちになっている現在、伸ばすべき分野は

 藤井 やはり保全です。

 ――御社は塩害やASRなどの損傷対策工法も数多く有しています

 藤井 そうですね。リパッシブ工法NSRV工法など特殊な工法は保持していますが、それがものすごく売り上げを増加させるとことにはやはりなりません。あくまで大規模更新・大規模修繕における床版・桁取替や補修補強できちんと利益を出していく体制をつくることが大事です。


リパッシブ工法の施工例


電気防食の施工例(静岡県管理の雲見大橋)


 ――10年後には新設と保全が均衡すると仰いましたが、中期経営計画終了時、10年後にはどのような売上割合を予測していますか

 藤井 10年後にはやはり新設と保全が均衡した状態になると考えます。ただ、中期計画最終年度ぐらいでは、現在の状況からそう変化はないと思います。