道路構造物ジャーナルNET

橋梁・水門など土木全般が対象

ステンレス鋼土木構造物の設計・施工指針(案)を発刊

日本鋼構造協会
ステンレス土木構造物設計施工指針活用小委員会
委員長
(大阪大学大学院教授)

奈良 敬

公開日:2016.03.10

 日本鋼構造協会ステンレス土木構造物設計施工指針活用小委員会(奈良敬委員長)は、このほど「ステンレス鋼土木構造物の設計・施工指針(案)」を発刊した。防食性能に優れ、構造強度も普通鋼と遜色ないステンレス鋼の土木構造物への適用拡大を図るため作成したもの。その内容について奈良委員長に詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)

高強度で防食効果も高いリーン二相系

 ――ステンレス鋼土木構造物の設計・施工指針(案)の概要からお願いします。そもそもここでいう「ステンレス」とはいかなるものを指すのでしょうか
 奈良委員長 ステンレス鋼は一般に良く知られているオーステナイト系のほかに高強度の二相系、Niを含まない廉価なフェライト系等があります。最近の欧州では二相系が注目されています。SUS304などのオーステナイト系の耐力は200N/平方㍉程度とSS400ぐらいの強度しかありません。SUS304は強度が低く高価なので、土木の現場では余り使ってもらえていません。これに代わる材料としてリーン二相系ステンレス鋼が出てきました。リーン二相系の耐力は400N/平方㍉ありますので、490Yより高い強度を有しておりSUS304の材料断面を半分程度に小さくすることができます。そうすれば材料コストも下げることができ、経済合理性が出てくると考えられます。

適切な選択をしてもらうべく指針を策定

 ――ではここで示すステンレス鋼は主にリーン二相系と考えてよいのですか
 奈良 それはユーザーが選定することです。土木でも例えば水門については、オーステナイト系を想定した設計基準が運用されています。しかし、最近では他の施設においてもステンレス鋼を使用したいものの設計指針がないから使えないという声が強くなっています。実際には土木技術者にとってステンレス鋼はなじみがない材料であるため、まずは基礎的な知識の普及を図るべく平成21年3月に日本鋼構造協会内の委員会資料として「土木構造技術者のためのステンレス鋼ガイドブック」をまとめました。それを踏まえて、ステンレス鋼部材の断面を設計できるようにするとともに、強度、使われ方(ステンレス鋼が置かれる環境に対する防食性能)も含めて適切に材料を選択し、施工してもらうために今回の指針をまとめています。材料は先ほど述べた4種類を強度、耐食性、その他に細かく分けて示すことで、ステンレス鋼を採用したいと考える技術者が用途に応じて的確にステンレス鋼種を決められる、そういう所まで辿り着きました。

実際にあるオールステンレス橋

 ――例えば橋梁など耐荷力と防食性能、コストを要求される素材はどの種類を使えばよいのでしょうか
 奈良 ステンレス系でコストを左右しているのはNi(ニッケル)の含有量です。そのためNiの含有量が少なくかつ耐食性に優れ、強度も高いため部材断面を少なくでき、結果的に(全体)量も少なくできる二相系が想定されます。実際欧州とりわけ北部では凍結防止剤散布量が多いことから耐食性と強度に優れた二相系の使用量は増加傾向にあります。またオールステンレスの橋梁も実際にあります。(

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